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 緒方貞子のスピーチは最高だった。 2005年02月17日

今日は、小渕優子さんの結婚披露宴(結婚を祝う会)。赤坂プリンスホテル(http://www2.princehotels.co.jp/app_room/piq0010.asp?hotel=002)に呼ばれて行ってきた。三つ報告しなければならないことがある。

一つは、会費制の一人一万円で躓いた。私は財布やカバンを持ち歩くのが大嫌い。だから今日も旧館の前庭にクルマを置いてきたときに、同じように財布(カバン)も置いてきた。それを忘れていた。披露宴受付のところで、リボンを受け取るときに、「ここでは私は何をすればいいのかな」と聞いたと同時に「そうだ。一万円!」と心で叫んだ。案の定「会費を頂けますか。それとご名刺お願いします」と返ってきた。あれあれ。ワイシャツの胸ポケットにあるかもしれない、とまさぐったが、しかし残念! 5000円しかない。それを確認したところで、受付のその人と目が合ってしまった。恥ずかしい。「スミマセン、ちょっと待っててください」とその場を外した。さてどうしよう。

こんなときは、小渕議員の秘書を呼ぶしかない。秘書の大塚さんにすぐに電話。「お金が5000円しかないのよ。貸してくれない。受付まですぐ来てくれない」「わかりました。ちょっと待っててください」。開場前10分の忙しいときに、すぐに来てくれて、素敵な笑顔で「トイチの金利ですよ、芦田先生」と1万円貸してくれた。これほど現金がありがたいと思ったことはないが、その受け渡し現場の横を青木参院幹事長と橋本前総理が通った。情けない。

私は、今日はカメラマンに徹しようと、舞台中央マイクの2、3メートルまえに陣取ったが、それだけではつまらない。小泉首相や海部元総理以来の歴代総理が列席していたが、その挨拶が終わった後、結婚したご両人が舞台を降りて、舞台右手で列席者と握手と記念撮影。長い、長い列が続く。このシーンは、結婚式の撮影では最も重要。普通は、披露宴の最後の出口で迎えるシーンだが、立食パーティー方式なので、主賓挨拶、当人たちの挨拶後すぐに、この記念撮影シーンに移った。

l※これがその時の写真→obuchi1017.jpg
不覚にも写真週刊誌FLASHに映ってしまった。http://www.ashida.info/blog/2005/02/flash.html


さて、これをどう撮るか? 私は、私自身が舞台側に回り、ご両人の真後ろに立った。こうすると列席者の顔が丸写しで撮れる。会場の専属カメラマンもこの立ち位置に驚いていた。ご両人も私が背後にいるので「なんで、先生、こんなところに」と驚いていた。でもさすがに、この位置はいい。現在の政界のめぼしいところは、すべてカメラに収めた。ところがだ、ところが、さきほどの秘書の大塚さんが、「先生、そんなところで立っていたら、すべての記念撮影に先生が映ってしまいますよ」と注意された。「そうか、そうだな。まるで三人で結婚したみたいだな」とまた恥ずかしい思い。その後は少し屈んで、カメラだけをご両人の肩越しにかざしてとり続けた。

実は私は、8ミリフィルム時代以来の動画撮影の自称プロ。高校時代は映画を撮ったとこともある。そのお陰で、親族の結婚式はすべて私が撮影係。私が18歳の時に若くして死んだ父が私に残した言葉の一つが、このカメラ撮影をめぐる“遺言”。「ヒロナオ(と私の父はいつも私をこう呼んでいたが、私は息子を呼び捨てにしたことはない。いつも「太郎君」だ)、カメラマンは撮影位置に関して恥ずかしがってはいけない。恥ずかしいのは撮るときだけ。その映像が見られるときに効果的な立ち位置(撮影位置)を考えろ。立ち位置を気にして恥ずかしがってはいい映像は撮れない。カメラマンほど無礼で品性のない奴はいないが、それがカメラマン」と結婚式撮影で立ち位置に恥ずかしがる私に父は近寄ってきて耳打ちしてくれた。私が中学生の時だ。それ以来、私はカメラを持ったらどこへでも行けるようになった。今日もその教訓が生きている。お陰で8割くらい(7、800名を超える人たち)の記念撮影に私が映っている。なんと“無礼”なことか。でも映像は最高ですよ。DVDで焼いてプレゼントしましょう、ご両人。

三つ目の最後。挨拶は、緒方貞子氏(http://www.humansecurity-chs.org/about/profile/j-ogata.html)がサイコーだった。小泉総理が、「結婚生活は一に我慢(笑い)、二に辛抱(私)、三、四がなくて五に忍耐(大笑い)。今、私は政治の世界でそれを体験しておりますが(笑い)、我慢をして明るいいい家庭を築いていただきたいと思います」と話を切り出したが、そのあとに続く者たちも、その基調は変わらず、乾杯の音頭で緒方貞子氏がその雰囲気をさりげなく変えた。

「それではご指名でございますので、大変僭越ですが、乾杯の音頭を取らせていただきます。さきほどからもお言葉がありましたが(聞き取れないような小さな声)、辛抱だけではなくて、楽しい楽しい家庭、そして未来をいっぱい繰り広げることのできる家庭を築いてください。乾杯」。ニコリともせず、こう音頭をとった。

文字にするとふつうの飾らない言葉だが、しかしこの瞬間が会場の雰囲気を変えて、「そうだ」との掛け声も飛ぶくらいの衝撃があった。小泉首相や政治家たち(それも超大物政治家たち)がただの俗人に見えた瞬間だった。この人はただものではない。今日は海部、橋本、小渕(小渕優子)、小泉とまるで現代史の教科書を見るような政治家たちを前にして、しかし緒方貞子の圧縮率の高い数秒のスピーチを聞けたことが最大の収穫だった。

投稿者 : ashida1670  /  この記事の訪問者数 :
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