「芦田の毎日」について twitter 私の推薦商品 今日のニュース 写真ブログ 芦田へメールする

 「こんな専門学校は必ず大学に負ける」 ― 全国専門学校情報教育協会管理者研修 2009年06月15日

やっと明日の講演会の原稿が出来上がりました。●がパワポスライド一枚を意味します。全部でスライド45枚のプレゼンです。2時間で終わるかなぁ(苦笑)。


----------------------------------------------------------

「こんな専門学校は必ず大学に負ける」

1991年「大綱化」施策(多様化と個性化と特長化)と
2001年「遠山プラン」(競争主義)からの
施策転換が始まった。さて専門学校は?

全国専門学校情報教育協会 調査委員会 芦田宏直
hironao@ashida.info


平成21年6月16日(火)15:10~17:10(研修会)
場所:東京・御茶ノ水/東京ガーデンパレス 2階「高千穂」の間
(JR中央線、地下鉄丸ノ内線「御茶ノ水駅」下車 徒歩約5分)

※この発表全体の基本骨格については→http://www.ashida.info/blog/2009/01/post_320.html


●大学・専門学校マーケットの推移(1)

マーケットの動向は女子層の短大進学の変化が鍵
1)大学生数は、平成5年(大綱化の2年後)→平成20年の15年間で、
  総数 2,389,648→2,836,127  117%UP
    男子伸び率は、1,665,124→1,695,372 102%UP
    女子伸び率は、724,524→1,140,755 157%UP

2)短大生数は、平成5年(大綱化の2年後)→平成20年の15年間で、
  総数 530,294→172,726 33%にDOWN
    男子伸び率は、43,484→19,208  44%にDOWN
    女子伸び率は、486,810→153,518  32%にDOWN

3)専修学校生数は、平成5年(大綱化の2年後)→平成20年の15年間で、
  総数 859,173→657,502  77%にDOWN
    高等課程伸び率は、101,157→38,731 38%にDOWN
    専門課程伸び率は、701,649→582,864 83%にDOWN
    一般課程伸び率は、56,367→35,907 64%にDOWN

※専門課程(15年→20年)は、総数 685,350→582,864
男子伸び率は、305,937→258,500  84%にDOWN
女子伸び率は、379,413→324,364  85%にDOWN
(5年間では専門学校女子比率は男子比20%増前後で推移)

この15年間で18才人口は、1,981,503 →1,237,294 となり、62%にDOWNしている。
大学数はこの15年間で、国立98→86(88%) 公立46→75(163%) 私立390→589(151%)。


●大学・専門学校マーケットの推移(2)

第一期:専修学校制度以降(1976年~1991年)
1)大学進学率  27.3%→25.5%  93%にDOWN
2)短大進学率  11.3%→12.2%  108%UP
3)専門学校進学率 3.5%→17.3% 494%UP
  

第二期:大綱化以降(1992年~2008年)
1)大学進学率   26.4→49.1%  186%UP
2)短大進学率  12.4%→6.3%  51%にDOWN
3)男子大学・短大進学率  25.1%→51.4%  205%UP(新卒)
4)女子大学・短大進学率  40.1%→54.3%  135%UP(新卒)
5)専門学校進学率 17.8%→20.6% 116%UP(2005年23.9%ピークに14%DOWN)

※暫定的な高等教育マーケット概況(スライド2+3をあわせて)
①女子進学率が終始高いのは、「短大」という受け皿があったため。「短大」の女子進学率が93年から08年で70%近く進学率が落ちた分は、大半が4大進学に流れている。女子4大進学率は、93年~08年で157%UP(72,4524→1,140,755)。女子大学生100万人台の時代に入っている。

②男子進学率が大綱化(91年)以降、急激に増えたのは、「少子化(大学全入)」「多様化と個性化」「失業率の悪化と就業不安」(矢野眞和+濱中淳子)によると思われる。大綱化以後、専門学校進学率が短大ほど落ちなかったのは、「失業率の悪化と就業不安」の短大女子層を「資格と就職率」によって多少は救ったためと思われる。

③ 「少子化(大学全入)」「多様化と個性化」「失業率の悪化と就業不安」の三つの条件に加えて、「派遣労働者」問題がさらに教育の高度化圧力を高めると思われる。「資格と実習の専門学校」の衰退を止める社会情況は(このままでは)ない。
 

●大学・専門学校マーケットの推移(3)
ここ数年(平成17年度~平成20年度)の進学者数推移
高校卒業者数 1,202,738→1,088,243 (90.5%) 
大学・短大進学者数 568,336→575,018 (101.2%) 進学率47.3%→52.8%
専門学校進学者数 228,858→167,004 (73.0%)  進学率19.0%→15.3%
大学・短大進学率は、17年度対比で116%
専門学校進学率は、17年度対比で進学率80.5%

※過年度生を含む入学生の推移
大学・短大進学者数 703,191→684,498 (97.3%)  進学率51.5%→55.3%
専門学校進学者数 326,593→254,688 (78.0%)   進学率23.9%→20.6%
大学・短大進学率は、17年度対比で107.5%
専門学校進学率は、17年度対比で進学率86.1%

大学・短大から専門学校へ 24,351→19,111(78.5%)
専門学校から大学へ(編入) 2,319→2,636(113.7%) 
※大学の就職困難層が専門学校へ流れているとは考えづらい。

就職者 206,751→205,336(99.3%)
フリータ 22,854→12,874(56,3%)
家事手伝い・留学生 78,870→53,837(68.3%)
※フリータ・家事手伝い層は、ここ数年で大きく減少しており、その減少分は専門学校へ流れているとは考えづらい。


●大学・専門学校マーケットの推移(4)
大学の進学コストの問題(NHK放送文化研究所の報告)
「高校生の子どもがいるとしたら、どの程度の教育を受けさせたいか」
→「大学・大学院まで」が70%(1973年)
→「大学・大学院まで」が76%(2003年)
「1975年以降、私立大学の授業料は、家計所得の伸びを上回って上昇してきた。最近では、実質所得がマイナスになっているにもかかわらず、実質授業料はプラスに推移している」(「なぜ、大学に進学しないのか」矢野眞和+濱中淳子 2006)

学費に対するダンピング
1)立命館大学 奨学金等の緊急拡充措置
2009年度在学生(2009年4月入学の新入生を含む)ならびに2009年度入学試験受験生(2009年4月入学の新入生)に対する経済支援型の奨学金 予算を増額します。既存の経済支援型の奨学金制度の予算について、合計700名分、予算総額で約3億円分を増額します。

2)早稲田大学 「めざせ!都の西北奨学金(入試前予約採用給付奨学金)制度」
11月10 日受け付け開始。対象は学業成績が優秀な、首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)以外の国内の高等学校出身者。これによって早い時期から勉学に集中できると いう。 支給額は年額40万円で、大学卒業時まで4年間継続する。初年度は全国で500人程度を採用候補者として、2年目以降はできるだけ早く1000人規模に拡大する予定。 出願資格として、高校在学中の評定平均値が3.5以上、家計支持者の給与収入が600万円未満、事業所得の場合は250万円未満などの条件がある。

3)足利工業大学「自力進学」支援
(支援内容)平成21年度のみ、初年度学費 \1,595,000のうち授業料の半額に相当する¥630,000を免除します。募集人員 工学部 合計 20名

4)駒沢女子大学・短期大学 「頑張れ受験生」学納金緊急支援
世界的経済不況の中家計状況急変により、大学進学を断念せざるを得ない状況に直面している受験生の皆さまに対して、緊急の学資支援を実施いたします。採用人数 入学定員の2割以内 支援内容・入学年度の学資全額(入学金、授業料、維持費 計約125万円) *実習費・諸会費を除く・2年次以降の授業料の半額(年間約40万円)上記の範囲内の支援額を無利子・無担保にて本人に貸与し卒業後分割にて返済していただきます。

5)その他多数


●大学・専門学校マーケットの推移(5)
大学全入時代とは大学の専門学校化のこと
1991年の大学設置基準の改正(=大綱化)以後、大学の「多様化と個性化」の時代が始まった。
「一般教育」と「専門教育」の区分、一般教育内の科目区分(一般(人文・社会・自然)、外国語、保健体育)が廃止された。
 1) 各大学・短期大学に開設を義務づけていた授業科目の科目区分(一般教育科目,専門教育科目,外国語科目及び保健体育目)を廃止する。

 2) 学生の卒業要件として定められていた各科目区分ごとの最低修得単位数(大学の場合,一般教育科目36単位以上,専門教育科目76単位以上,外国語科目8単位以上,保健体育科目4単位以上)を廃止し,総単位数(大学の場合,124単位以上)のみ規定するにとどめる。→新しいカリキュラム、新しい名称の学部の誕生。

自由なカリキュラム編成が可能→新しい名称の学部の誕生→それまでの伝統的な学部名称 (「工」「理」「法」「文」「医」等の1文字のもの、これらに比べれば新しい「教育」「経済」「経営」等の2文字のもの)が、大綱化以降、「情報」「国際」「環境」「文化」「政策」「総合」等の新しい2文字のもの、これらを組み合わせた4文字・6文字のものが続々と作られた。今で は、カタカナ学部名称もそれほど珍しくなくなってきている。

専門学校の「多科戦略」は、91年以降の大綱化→自由なカリキュラム編成→学部名称の多様化の前ですでに負けている。

「多科戦略」は言い代えれば、学びの具体化とつながり、結果的に大学が専門学校的な色彩を得ることと繋がった。91年以降この影響を真っ先に受けたのは短大。次が専門学校。


●専門学校の一条校化と専門学校不信(1)― 文科省専修学校振興会議議事録より

◎高等教育のグランドデザイン(高等教育のもう一つの柱な何か)
「アカデミックな普通教育的な体系」と「職業専門教育的な体系」(224)

大学は「理論的アプローチ」、専門学校は「実践的アプローチ」(422)

「学術教育を中心とする若者に対する育て方」と「職業教育を中心とする若者に対する育て方」(466)

「複線型の教育体系には賛成だが、既存の大学等においても職業教育を行っているので現行制度との整理は必要」(471)

「職業というものは労働市場のニーズにオリジン(源泉)があるのではないか。職業教育の定義を考えた時に、労働市場と教育というものをどのようにリンクして整理していくかという視点も必要」(486)。

「伝統的な高等教育の他に、実践的な職業教育に特化した高等教育機関が存在することは、国民に開かれた高等教育を保障することになるとともに、学術研究の中心としての伝統的な大学の質の維持にも資するものであること。従来の学校制度の中では必ずしも成熟してこなかった職業教育について、職業教育の体系化の観点から複線型の制度にして再構築する議論が必要であること」(544)

「ある程度小さな組織体である専門学校の質を確保する手法として、1条校になることを考えるよりも、プログラムに着目して質を上げるような仕組みを作ることが大切」(601)

「大学も実質として大学ではなくなっている所も沢山ある。教育の内容を実質化させることが必要。教育内容のうち、どういった部分を、誰が評価するのか、プログラム評価を行うのか、といった議論が必要ではないか」(611)

「組織の質保証(設置基準)も必要だが、むしろプログラムのアクレディテーションの枠組みの構築が全ての分野において可能かということになる。各分野における認証評価団体を作る等の枠組みを議論することが必要」(100)

「日本では、どこの大学を卒業したかが価値とされ、プログラム型の教育はほとんどなされてこなかったが、プログラム型の教育を議論するにあたって専門学校の存在は大きい。結局は質の保証をどのように行うかという議論になるが、メタ評価を含めてその仕組みを考えるべきではないか」(619)


●専門学校の一条校化と専門学校不信(2)― 文科省専修学校振興会議議事録より

◎公共性=信頼性(専門学校は「学校」としての資格に欠ける)
「専門学校の就職率は、大学、短期大学より高いが、職業教育機関でありながら、20パーセント程度が就職未決定になっているという問題をきちんと考えなければいけない」(74)。

「新学校種になれるのはある程度学校としての要件を備えた学校群である。学校の利益はすべからく学校に還元すべきであり、教育にはしかるべき規制があるべきである。新学校種になるのであれば、専門学校の方もそれなりの規制は考慮していかなければならない。例えば第三者評価や自己点検に堪えられない学校も若干はあるだろう」(103)

「専修学校に期待することは大きく3点。1つは高等教育機関として信頼性を確保してほしい。どのような授業内容、資格習得等ができるのか、それが職業でどのような関係を持って認められるのか明確に高校に示してほしい。2つ目は入学者の授業料の返還ができなかったという新聞報道もあったが、経営の透明性を高めてほしい。3つ目は、非常勤の教員が授業、生徒指導を行っていると聞いたこともあり、専任教員をしっかり確保して質を高めてほしい」(207)

「学校」かどうかという言葉の議論ではなく、実質の議論をしなければならない」(239)
「短大が大きな義務を背負っているのに対し、専修学校が設置基準等の大きな変更なく1条校化が認められるのであれば、専修学校は義務を果たすことなく、恩恵だけ享受できるのではないか」(257)

「統計調査等では専門学校のデータが入っていないことが多々あるが、これは専門学校の位置づけが不明確であることが一因ではないか」(427)

「現行制度のもとに築かれた実績を評価していくこと」(430)

「現行制度の下においては、職業教育は各学校種において実施されているところであり、新たな学校種が職業教育をその目的とするのであれば、現行の学校種の行っている職業教育との相違の明確化が必要であること」(554)

「大学も実質として大学ではなくなっている所も沢山ある。教育の内容を実質化させることが必要。教育内容のうち、どういった部分を、誰が評価するのか、プログラム評価を行うのか、といった議論が必要ではないか」(611)

「組織の質保証(設置基準)も必要だが、むしろプログラムのアクレディテーションの枠組みの構築が全ての分野において可能かということになる。各分野における認証評価団体を作る等の枠組みを議論することが必要」(613)


●専門学校の一条校化と専門学校不信(3)― 文科省専修学校振興会議議事録より

◎教員問題(専門学校の教員は、「教員」なのか)
「アメリカのコミュニティ・カレッジでは教員の質が認可(アクレディテーション)に際しての大きな課題になっている。全米6地区のコミュニティ・カレッジの認可の状況を見ると、少なくとも8割以上がテニュアシップをとっていなければならないという評価基準が存在する」(148)。

「日本の場合、専修学校の教員の最終学歴では、大学院修了者は6パーセント程度である。大学では、博士号を持っているのは4年制大学で4割程度である。また短大では博士号を有しているのは18パーセントである。その意味では、教員の質確保の問題は大学・短大・専修学校共通の課題かもしれない」(151)

「専修学校の教員は、専修学校卒業という資格を認めているので、高等教育機関という位置づけをするのであれば、准教授や助教等の職階の問題も考える必要がある」(157)
「アメリカのある州立大学にいたとき、大学は相当多数の教員が学位を持っていることを学生にアピールしていた。参考までに、国立高専の5カ年計画では、理工系では、70パーセントの教員が、文系の教員は80パーセントが修士号以上を持つことを目標値として掲げている。国立高専の5カ年計画では、理工系では、70パーセントの教員が、文系の教員は80パーセントが修士号以上を持つことを目標値として掲げている」(163)

「これからの高等教育に求められる分野は創造性(クリエイティビティー)とともに、高等教育機関としての真正さ(インテグリティー)が担保されていないと、世界の高等教育機関から日本の高等教育とは何なのかということを投げかけられる状況である。その点について議論する必要があるのではないか」(179)

「確かに専修学校では第三者評価や専任教員の確保という点で1条校に比して劣る部分も認めざるを得ないが、各専修学校が教育の中身をしっかりと点検し見直しながら専任教員を増やして、生徒の将来を一生懸命支える体系になっている」(216)。

「新しい学校種を設計すると言う場合に、職業教育とは何かについて明確なコンセンサスが必要であるし、独自の設置基準を考える必要がある。また職業教育を職業による教育と考えた場合に、職業教育を行える実務家教員のような人材を一定割合もっていることがコア」(490)

 
●専門学校の一条校化と専門学校不信(4)
「高等教育としての専門学校教育」(吉本圭一・九州大学)文科省「専修学校の振興に関する検討会議 」第3回 2007年12月21日

◎専門学校の就職状況(学校基本調査 1999)
全学科での専門学校卒業生の進路
70%が関連分野
8%が関連分野外
21.6%が無業者

◎中退率、卒業率、就職率(専門学校、短大、大学)
専門学校の中退率は15%、卒業率85%、就職率は83% (1985~2000)
短大の中退率は5%、卒業率95%、就職率72%(1985~2000)
大学の中退率は7%、卒業率93%、就職率72%(1985~2000)
「就職率100%とはよく聞くが…8割の卒業率、2割の中退率、無業が少ないと言えるのか」

◎専門学校の中退率が高い原因
1)必修履修で再履修が困難
2)肯定的評価可能性(出口での質のコントロールがなされていること)
3)葛藤可能性(「しつけ」教育による若者文化との対立)

◎専門学校は大学に比べて「教員が熱心!?」
常勤教員1人あたりの学生数   専門学校 18.3人  短大 19.3人  大学 18.7人
教員の週単位の授業時間数  専門学校 12.7時間  短大 8.4時間  大学 8.6時間

※この項の参照レポートは→http://www.ashida.info/blog/2008/12/post_310.html


●専門学校の一条校化と専門学校不信(5)

◎就職の品質が悪い=教育の質が低い(小方直幸=東専各就職調査から)
「専門学校入学者が急激に減っている」(6)

専門学校が「職業専門教育」で認知されているというのは本当か(6)

「資格」「就職率の高さ」では学生を引きつけられない(6)

「就職」は、「就職課の人が「がんばって支援すれば就職できる」程度、教育とは関係ない(7)

「資格」は、「勉強する癖」が付いた証。「しつけ」機能に過ぎない。本来の職業教育とは関係ない(7)

「即戦力」は、業務の現場が高度化していない時に使える言葉。「20歳~22歳あたりで即戦力だなんて、あり得ないだろう」(8)。「即戦力」は、職業教育」や教育の「高度性」の証ではない。

「大学とかが培う一般的なスキルではない、専門学校特有の職業的なスキルは何なのか」(9)

「大学の方が余裕がある中で自然と人間性が身につく環境の中にある。(…)専門学校は就業年限が2年間と短いのだから人間性の方はやむを得ない。ならばプラスとしてば職業教育の部分でどう評価してもらうのか、そこに関心が行くのは当然」(9)

高校の先生は、みんな「大卒」。学校を大学基準で見ている。専門学校は、「能力のある人」だけしかまともに就職させられていないと思っている。就職「率」でしか特長がわからない(評価しようとしない)。専門学校も卒業後のデータを示していない(10)

今後は、教員調査も必要。各教員に「こういう教育コンテンツにしてください、こういう方向で教えて下さい」と、どこまで言えるのか、難しい、言えていない(11)

「課題は資格からいかに脱却するかだと思う。資格から脱却するとリスクも高まりますが、リスクを高くしないと出来ないような教育内容というのがあるのではないかとおもいます(11)

卒業生はカリキュラムの体系性について評価が低い。「抽象的な目標と個々の授業実践の間にはすごく距離がある」(11)

「専門学校の教員は学内にずっといると業界の動きに付いていけない。逆に非常勤の先生は業界の最先端の知識を業界から持ってきてくれるけれど教え方が未熟だという問題がある。そうした課題を解決する仕掛けを作る必要がある」(14)

「自分の好きな仕事をしたいという人がいますが、食べていけないのも困ります」(15)     


●専門学校の一条校化と専門学校不信(6)

◎専門学校の就職問題―東専各調査(2008年度)より 
専門学校教育は「職業教育」機関、「実務教育」機関というのはウソ
1)正規就職率が低い→卒業直後の正規就職率→ 72.5% (20行目)
2)300人以上の大手企業就職率→ 32.4%(27行目)
3)初年度年収も低い→ 300万円以上24.6%(32行目)
4)正規就職の継続率も低い→ 2年~8年後の就職率64.1%(39行目)
5)収入の増加率も低い→ 仕事の経験年数の収入比例率 38.9%(44行目)
6)仕事への満足率→ 38.3%(54行目)
7)卒業後の無職率は高い→ 29.8%(68行目)
8)学んだことが役立っている率→ 52.3%(75行目)
9)仕事の内容の高度性→ 52.3%(86行目)
10)高校までの勉強で充分という就職率は→ 19.5%(96行目)


●大学の教育改革(1) ― 「大綱化」から「教育GP」へ
91:「大学教育の改善について」(大綱化)― 自己点検・評価」努力義務化
98:「21世紀の大学像と今後の改革方策について ― 競争的環境の中で個性が輝く大学―」
99:「自己点検・評価」実施義務化
01:「遠山プラン」2001年6月 (←経済財政諮問会議)
02:「自己点検・評価」の公表+「第3者評価」
02:21世紀COEプログラム
03:「特色ある大学教育支援プログラム」(特色GP)
04:「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」(現代GP)
08:大学設置基準の改正(2008年4月)
08: 「質の高い大学教育推進プログラム」(教育GP)
08:「学士課程の改善について」(2008年12月24日)
09: 「大学教育・学生支援推進事業」
プランA:大学教育推進プログラム
プランB:学生支援推進プログラム


●大学の教育改革(2) ― 改革の基点(大綱化)
91: 「大学教育の改善について」(大綱化) ―「自己点検・評価」努力義務化
各高等教育機関が,それぞれの理念・目標に基づき,個性を発揮し,自由で多様な発展を遂げることにより,高等教育全体として社会や国民の多様な要請に適切に対応し得るものと考えられる。

 このように高等教育の個性化・多様化を促進するためには,我が国の高等教育の枠組みを規定している大学設置基準等の諸基準の見直しが必要である。大学設置基準等の諸基準は,我が国の高等教育の発展の初期の段階において,その水準の維持向上に一定の役割を果たしてきたが,今や先進諸国に伍して新たな世界を切り開いていく立場にある我が国において,各高等教育機関が,教育研究の多様な発展を図っていくためには,枠組みとなる基準は可能な限り緩やかな方が望ましいと考えられる。

1)一般教育と専門教育の区分の廃止
2)一般教育内の科目区分(人文、社会、自然)の廃止
3)外国語、保健体育の廃止

4) 学生の卒業要件として定められていた各科目区分ごとの最低修得単位数(大学の場合,一般教育科目36単位以上,専門教育科目76単位以上,外国語科目8単位以上,保健体育科目4単位以上)を廃止。総単位数(大学の場合,124単位以上)のみの規定による自由化。

5)学部内学科の自由な設置

6)「自己点検・評価」:大学審議会は,このような観点から,各大学等が自らの責任において教育研究の不断の改善を図ることを促すための自己点検・評価のシステムを導入する必要があると指摘するとともに,その実施方法,実施体制等について提言を行った。今後,各大学等が自己点検・評価を行う際は,まず,各大学等の理念・目的をいかに実現するかという観点から,各大学等の判断により適切な項目を設定し,教育研究活動全般について多面的に点検・評価を行い,現状を正確に把握することが基本となるものと考えられる。その上で,その結果を踏まえ,改善を要する問題点,積極的に評価すべき特色,今後の目指す方向などに関して改善への努力を行うことが望まれる。


●大学の教育改革(3) ― 2001年 遠山プラン

活力に富み国際競争力のある国公私立大学づくりの一環として
1 .国立大学の再編・統合を大胆に進める。
○各大学や分野ごとの状況を踏まえ再編・統合 ・教員養成系など→規模の縮小・再編(地方移管等も検討) ・単科大(医科大など)→他大学との統合等(同上) ・県域を越えた大学・学部間の再編・統合 など
○国立大学の数の大幅な削減を目指す
※スクラップ・アンド・ビルドで活性化

2 .国立大学に民間的発想の経営手法を導入する。
○大学役員や経営組織に外部の専門家を登用
○経営責任の明確化により機動的・戦略的に大学を運営
○能力主義・業績主義に立った新しい人事システムを導入
○国立大学の機能の一部を分離・独立(独立採算制を導入)
※新しい「国立大学法人」に早期移行

3 .大学に第三者評価による競争原理を導入する。
○専門家・民間人が参画する第三者評価システムを導入 ・「大学評価・学位授与機構」等を活用
○評価結果を学生・企業・助成団体など国民、社会に全面公開
○評価結果に応じて資金を重点配分
○国公私を通じた競争的資金を拡充
※国公私「トップ30 」を世界最高水準に育成

4.20世紀COE(02年)、特色GP(03年)、現代GP(04年)


●「特色GP」から「教育GP」へ(1)
03年「特色GP」+04年「現代GP」=
08年「質の高い大学教育推進プログラム」(「教育GP」)
  「実績」中心の「特色GP」
  政策対応性、ニーズ整合性中心の「現代GP」
2008年度 「質の高い大学教育推進プログラム」
2009年度 「大学教育推進事業(日本学術振興会」
「学生支援推進事業(日本学生支援機構)」
「学士課程教育の構築に向けて」(平成20年12月24日) ― 「三つの方針」と「学士力」の明確化

※大学設置基準の改正(平成20年4月1日)
教育目的の明確化(「体系的な教育課程」と組織的な目標の共有化+内外公表)
成績評価基準の明確化(シラバスへの記載)
教育内容等の改善のための組織的研修(FDの努力義務→実施義務:教員個人に対する取り組みではなく、組織的な授業内容、授業方法の改善が求められる)


●「特色GP」から「教育GP」へ(2-1)
【テーマA】大学教育推進プログラム(大学における教育の質保証の取組の高度化)
事業規模額 50,000千円/年  補助金基準額 23,000千円/年  財政支援期間 2年~3年

◎教育課程の体系化
・順次性のある体系的な教育課程編成
・幅広い学びを保証する教育課程の体系化
・課題探求能力等を育成する体系的な教育課程編成

◎単位制度の実質化
・単位制度の実質化を図るための学習時間の確保
・単位制度の実質化を図るための授業計画の明確化
・単位制度の実質化を図るための必要な授業時間の確保
・単位制度の実質化を図るための上限単位の設定(キャップ制)

◎教育方法の改善
・双方向型学習による教育方法の改善
・TAを活用した教育方法の改善
・SAを活用した教育方法の改善
・少人数指導による教育方法の改善
・情報通信技術を活用した教育方法の改善→次スライドに続く


●「特色GP」から「教育GP」へ(2-2)
(承前)
◎成績評価
・成績評価基準の設定
・GPA等の客観的基準の導入
・多面的な評価方法による成績評価

◎初年次教育
・初年次教育の充実
・高大連携の推進

◎教職員の職能開発
・ファカルティ・ディベロップメント(FD)の充実
・スタッフ・ディベロップメント(SD)の充実

【テーマB】学生支援推進プログラム(就職支援の強化など総合的な学生支援)
   事業規模額  20,000千円/年 補助金基準額 12,000千円/年  財政支援期間 2~3年
・休講期間中の対応、心のケアや法的措置など専門的な対応等、就職相談体制の強化
・ビジネスマナー講座、プレゼンテーション能力養成講座、種々の資格取得講座の開設
・卒業生や保護者を含めた就職相談会の実施、企業との交流促進による求人確保、大学独
自の就職情報誌等の作成による情報提供
・在学生、卒業生の情報のデータベース化や学生に直接、迅速に求人情報を提供するため
のメーリングシステムの導入など就職支援の充実


●「特色GP」から「教育GP」へ(2-3)
◎申請書構成(質の高い大学教育推進プログラム)
教育の質の向上への大学等の対応について(3頁以内)
人材養成目的の明確化(A:4点、B:3点、C:2点、D:1点)
成績評価基準等の明示など(A:4点、B:3点、C:2点、D:1点)
ファカルティ・ディベロップメントの実施(A:4点、B:3点、C:2点、D:1点)
自己点検・評価の実施体制と評価結果の反映(A:4点、B:3点、C:2点、D:1点)

取組について(5頁以内)
取組の趣旨・目的(A:4点、B:3点、C:2点、D:1点)
取組の具体的内容・実施体制等(A:4点、B:3点、C:2点、D:1点)
取組の評価体制(A:4点、B:3点、C:2点、D:1点)

取組の実施計画等について(2頁以内)(A:4点、B:3点、C:2点、D:1点)

取組の概要(1頁以内)、データ・資料(4頁以内)、取組に関わる経費(2頁以内)、過去の選定状況(頁制限なし)、大学・短大・高専の基礎情報(頁制限なし)


●「特色GP」から「教育GP」へ(2-4)
昨年度の実績(一つの大学等に付き4件まで申請できる) ※(件数/学校実数)
1)総申請件数 939(488)  選定件数 148(120)

大学  総申請件数 745(374)   総選定件数 117(92)
  国立大学 216(75)   選定件数 54(39)   選定率 52%(39/75)
   公立大学 86(45)    選定件数 11(11)   選定率 24%(11/45)
   私立大学 443(254)   選定件数 52(42)   選定率 17%(42/245)
 
短大 申請件数 91(73)  選定件数 17(17)
高専 申請件数 80(41)  選定件数 13(11)
その他共同申請件数 23(1) 

2)件数内訳(大学) 課程36/210  方法68/455  その他13/83
 教育課程の工夫改善 国立(18/68)、公立(2/23)、私立(16/119)
 教育方法の工夫改善 国立(29/123)、公立(7/55)、私立(32/274)
 その他の工夫改善   国立(7/25)、公立(2/8)、私立(4/50)
※(選定件数/申請件数)


●「特色GP」から「教育GP」へ(2-5)
今年度の実績(承前)― 申請・選定内容の代表的な傾向

【タイプA】(順不同) ― 教育目標の抽象主義型
「PISA(Programme for International Student Assessment ,OECD)対応の討議力養成プログラムの開発」(東京大学)
「実践臨床医養成への問題基盤型学習の実質化」(佐賀大学)
「相互啓発による創造的学力育成カリキュラム」(同志社大学)
「知的能動性をはぐくむ理学教育プログラム」(大阪大学)
「販売現場に密着した問題発掘型スタディーズ」(大阪府立大学)
「ユビキタス社会の問題発見解決型人材育成」(慶應大学)
「学生の学力・人間力・社会力の養成」(帝塚山大学)
「食農コープ教育による実践型人材の育成」(神戸大学)
「学士力向上を図るフィールド科学の創設」(県立広島大学)

【タイプB】(順不同) ― 教室外教育型
「地域密着型環境教育プログラム」(北九州大学)
「現場主義に基づく地域参画型教育」(香川大学)
「都心の文化資源等を活かした知の創造と発信」(青山学院大学)
「体験型実習を基盤とする海洋環境教育の実践」(東海大学)
「地域交流で生活の質を学ぶ実践的保健学教育」(群馬大学)
「地域貢献活動を活用した理系女性人材育成」(奈良女子大学)
「流域主義による地域貢献と環境教育」(和光大学)
「医療現場との情報双方向性を持つ保険学教育」(九州大学)

【タイプC】(順不同) ― タイプA型+タイプC型
「博物館を舞台とした体験型全人教育の推進」(北海道大学)
「地域に教育の場を拡大した包括的教育の取組」(奈良県立医科大学)
「一年間の留学を基軸にした高度総合英語教育」(同志社女子大学)
「地域・産学連携による自主・自立型実践教育」(明治大学)
「地域社会問題を学生想像力で解く学びの仕組み」(立命館大学)
「模擬学校による教育実践力向上モデルの開発」(琉球大学)
「海と湖を舞台とするやる気触発プログラム」(福井県立大学)
「販売現場に直結した問題発掘型スタディーズ」(大阪府立大学)


●「特色GP」から「教育GP」へ(2-6)
申請・選定内容の代表的な傾向と大学教育改革の現状

【タイプA】(順不同) ― 教育目標の抽象主義型
【タイプB】(順不同) ― 教室外教育型
【タイプC】(順不同) ― タイプA型+タイプC型

1)教室授業(=講義)が成り立たなくなっている
2)教育評価、授業評価が曖昧(disciplineがない)
3)授業評価が学生アンケートだけ(心理主義評価に終始する)
4)履修評価が努力賞評価か、裁量主義に終わる
5)常勤教員指導ができない(教務マネジメント不能)
6)メインカリキュラムとの関係が曖昧(基礎知識との連関が弱い)
7)メインの具体的な人材目標が存在していない
8)取組規模が曖昧(参加学生数が少ない、実施時間数が少ない)
9)個人の修得差が著しい(学生のパーソナリティに依存しやすい)
10)教材が少ない(授業再現性=参照性が弱い)


●「特色GP」から「教育GP」へ(3-1)
大学の教育改革評価は何で決まるのか(FDの根本思想)

1)目標(と取組動機)がはっきりしていること

2)目標(と取組動機)のひろがりが大きいこと(一科目、一教員の取組を超えていること)

3)学園理念、学部人材目標、カリキュラム全体の方向性に沿っていること(コアコンピタンス形成に関わっていること)→各科目シラバスの書き換えにまで及ぶ取組 ― 中長期構想のない取組はありえない。

4)参加学生数、参加教員数が多いこと

5)目標の達成評価の指標がはっきりしていること(出来れば数値化していること) ― before/after認識(事前状況の数値認識、事後の改善状況の数値認識)。心理主義的な学生アンケートでは根拠に乏しい。

6)目標(大目標・中目標・小目標)や達成評価のスケジュール的な段階化(計画の取組規模と学園の組織的な取組評価のポイント)

7)実行者・管理者の存在(実行性と取組規模の評価)  


●「特色GP」から「教育GP」へ(3-2) ―  大学の教育改革評価は何で決まるのか(学園理念と達成評価)

1)理念の重要性(組織性と中長期改革の原点)
私学の最大の特長は、創設者と創設の理念(創始者の思想)が存在すること。
大学の学部間の勝手な運営が横行する現状で「特長化」を測るには、創設者レベルの理念、目標形成以外に「教授」たちがまとまる契機はない。
改革が本格化することの意味は、改革が継続的かつ組織的であり、中長期化するということ。そういった規模のボリュームと時間ボリュームに耐えられるキーワードは学園理念(創始者の思想)しかない。
理念(創始者の思想)は、各学部の具体的な人材目標(アドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシー)と具体的に一体化する必要がある。

2)評価の重要性(実績と評価)
目標形成は、達成評価の方法と一体になって形成しないと目標にならない。数値はその意味で重要。数値を出すとその仕事のイメージがぼんやりと浮かぶため、「総論賛成」さえもなくなり、本格的な議論が始まる。目標からは行動が生まれるのではなく、達成評価の具体的な提示から行動が生まれる。
中長期改革は具体的な実績と改善ノウハウの積み重ね。改善課題が年次的、具体的に指標化出来る体制でないと、組織性や求心性は生まれない。


●「特色GP」から「教育GP」へ(4-1)
「学士課程の改善について」(2008年12月)― 三つの方針の明確化
アドミッションポリシー、カリキュラムポリシ-、ディプロマポリシー

1)学位授与の水準の明確化
「何を教えるか」よりも「何ができるか」を重視した取り組みが必要
わが国の大学が掲げる教育研究の目的等は総じて抽象的。
学位授与の方針が教育課程の編成や学修評価のあり方を律するものになっていない。
大学の多様化は進んだが、学士課程を通じた最低限の共通性が重視されていない。

2)教育課程編成・実施の方針について
学修の系統性・順次性が配慮されていない
2単位科目(週一回開講)の多数履修制を見直す必要がある。4単位科目(2コマ連続授業)を標準形態とする取組も必要。
成績評価が教員の裁量に依存している。学生確保という経営上の要請も相まって、なし崩し的に安易な成績評価が広がる恐れがある。GPAの適切な導入など組織的な取組が必要になる。


●「特色GP」から「教育GP」へ(4-2) ―  大綱化(1991年)以降の「多様化・個性化」「競争化」施策の反省

1)「多様性と標準性の調和」
「市場化の改革手法のみでは、教育の質の向上について充分な成果を期待することはできない」
「大学の多様化が単なる無秩序に陥り、日本の大学全体の国際的な信用や信頼性を失墜させるような結果を招来してはならない」
「我が国の大学の大きな問題の一つは、教育内容・方法、学修の評価を通じた質の管理が緩いということである」
教学経営において「最も重要なのは」、大学の「個性・特色」を「ディプロマポリシー」「カリキュラムポリシー」「アドミッションポリシー」の三つにおいて「具体的に反映」させることである。

2)「ディシプリン」のない改革に走ってはいけない
「学際的な教育活動について、関連する学問の知識体系(ディシプリン)に関する基礎教育が必ずしも充分になされていない」

「学士課程教育の構築に向けて(答申)」(中央教育審議会平成20年12月24日)より


●「特色GP」から「教育GP」へ(5) ―  教育力を高める大学の取組(平成18年度)

1)補習授業の実施状況 234大学(32%)
2)初年次教育を導入している大学 501大学(69%)
3)TAの活用状況 465大学(64%)
4)学生による授業評価の取り組み 377大学(52%)
5)厳格な成績評価(GPA制度の導入) 294大学(40%)
6)FDの実施状況 628大学(86%)
7)SDの実施状況 321大学(44%)
8)教員の教育面の業績評価 285大学(39%)

※18年度段階での大学基本データ(総大学数730)
国立大学  87
公立     76
私立    567

From 「大学における教育内容等の改革状況について」高等教育局大学振興課大学改革推進室 (平成20年6月3日)

※この項の参照レポートはこちら→http://www.ashida.info/blog/2008/11/post_305.html


●大学教育と専門学校教育とカリキュラムと(1) ―  大学-専門学校教育競争性の基軸はカリキュラム開発にある

「カリキュラム」とは何か?
1)測定可能な一つの具体的な教育目標や仕上がりイメージ(大目標)に基づいて有機的に編成された諸科目(小目標)の集合体。専門学校の教育は人材教育。統一的な人材イメージ(仕上がりイメージ)のないカリキュラムは、単なる「時間割」に過ぎない。

2)人材イメージは、技術上のキャリアパスの頂点を基点にして完成されなければならない。キャリア人生を高密度に圧縮したもの、それがカリキュラム。就職して10年,20年後にはどんな技術レベルを自分が担うことになるのかを予感させるものでなくてはならない。これがないから専門学校生は退職率が高いと言われてしまう。

3)諸科目は、そのキャリアイメージを再現する大目標に対する〈部品〉にすぎない。

4)部品としての諸科目は、その前提とする知識・技術(科目のbefore)と仕上がり目標(科目のafter)が明確になっていなければならない。前の科目と後の科目との連結性がはっきりなっていなければならない。

5)シラバスとは、前の科目と後の科目との連結性を述べたもの。その連結性の程度を示したものがコマシラバス。

6)他の科目の評価がその当該シラバスに紛れ込んでいるという意味で、シラバスは最初の「第3者評価」シート(ミッションシェアリングシート)と言える。シラバスのないところにカリキュラムは存在しない。

7)シラバスの3タイプ
①アメリカ型シラバス→ 教材型(学生負荷型)シラバス
②日本型シラバス→ 学生サービス型シラバス
③カリキュラム型シラバス→ 業務文書型(教員負荷型)シラバス

※この項の参照レポートは→http://www.ashida.info/blog/2008/12/post_311.html
※「シラバス」については→http://www.ashida.info/blog/2009/02/post_323.html

●大学教育と専門学校教育とカリキュラムと(2) ―  資格教育がカリキュラム開発を阻んでいる

①資格教育によって、教育が平板化している。単調で非効率な暗記教育が人材育成力を殺いでいる。レベルの低い受験勉強を周回遅れでやっているだけ。

②資格教育によって、専門教育内の各分野が形式的に分断化され、トータルな人材形成(=専門人材)ができなくなっている。

③専門内の各分野が形式化された分、時間割も単調になり、高校教育のようなスクールライフを学生に強いることになる。優等生でないと耐えられない単調な時間割になっており、自分が何の人材になりつつあるかを日々自覚できるカリキュラムになっていない。

④複数資格主義にとらわれており(取得資格の多さが教育の優劣を決めるという錯覚にとらわれている)、人材教育からはほど遠い教育をやっている。

⑤資格主義、あるいは実習免除の認定校主義によって、専門学校教育の特長である実習授業も単調化し、形骸化している。


●大学教育と専門学校教育とカリキュラムと(3) ―  資格カリキュラムの公共性しか存在していない

1)専門学校の社会認知は、非文科系(厚労省、国交省)の資格教育(=認定校制度)程度。それ以外は「受け皿」教育でしかない。

2)「情報化社会」「インターネット時代」と言われているのに情報系専門学校が衰退しているのがその証拠の一つ。

3)その意味で〈資格〉は専門学校の唯一の〈公共性〉を形成している。

4)〈資格〉以外には、教員も教育も就職も内実がない。

5)〈資格〉教育は、人材教育とは何の関係もない平板な(平板で非効率な)暗記教育に留まっているが、それでも非資格系専門学校の無目標、無評価の教育よりはまし。

6)〈資格〉は、〈学歴〉をもてなかった学生達の公共的な唯一の代替物。

7)しかし、〈資格〉というなら〈学歴〉こそ資格主義の王様。大学受験選抜のヒエラルキー(偏差値)の方がはるかに社会性がある。

8)専門学校の最大の問題は、学歴主義的受験勉強以外の勉強の軸を打ち出せてこなかったということにある。「教育」も「教員」も「カリキュラム」も何をもってそう言えるのかの第三者評価に耐える指標を一切有していない。


●大学教育と専門学校教育とカリキュラムと(4) ―  「生涯教育」と「学校教育」との違い

1)生涯教育の「目標」は受講者(=顧客)の方にある(消費型教育)。 
生涯教育(生涯学習)の目的は、受講者が有している。従って、授業や科目は一つの機能に過ぎない。どこから入っても良い、どこから出ていっても良い、というのが生涯学習のスタイル。一つ一つの科目や科目内のコマは、受講者にとっては「引き出し」のようなもの。

したがって、コマ、科目、カリキュラムはそれ自体が一つのパー-ケージのようなもので、その意味や意義は受講者が決める、という教育モデルが「生涯教育」。これらの教育モデルでは〈カリキュラム〉でさえも、相対化される(受講者の目的に従属する)。

この教育の前提は、受講者が自分の目的を自分で得ていること。そのためには、何を勉強しなくてはならないのかをわかっていることである。生涯学習の教育モデルは、資格教育か、認定校教育。

2)学校教育の「目標」は人材教育、教育目標は学校が用意しなければならない(生産型教育)。
人(人材)を〈作る〉のが学校教育。したがって、勉強の仕上がりイメージは学校側にある。学生は、学校に身を預けている。

学校は、学生に代わって、自分たちの目標や目標の社会性・公共性を自己検証する能力がなければならない(それが公共的な助成の意味)。それは学校の社会的な責務・使命でもある。だから〈学校〉の〈学生〉は〈顧客〉ではない。学校は、〈学生〉にとっては、社会的な親(保護者)のようなもの。これに思いを致さないような人間は「学校」関係者ではあり得ない。

3)専門学校の社会的矛盾は、消費型の資格教育を学校教育の体裁をとって行ってきたこと。若い学生達は、未だに受講主体とはなっていない。目的定位も不確か。自分で目標が作れない。

民間の資格スクール以上の中身がないにもかかわらずカリキュラムが自前で作れない、教員資格も曖昧)、国交省や厚労省の公共性に隠れて「学校」の体裁を保ってきたことに、専門学校の問題がある。

※この項の参照レポートは→http://www.ashida.info/blog/2008/10/1.html


●大学教育と専門学校教育とカリキュラムと(5) ―  実習授業のあり方がカリキュラム開発を阻んでいる

①実習オペレーションを見せて、マネさせているばかりで、再現性と原理性の高い教材が存在していない。程度の低い〈できる〉主義に終始し、〈理解〉を促進する教材(説明教材)が存在していない。あるのは、設備と素材だけ。

②教材(説明教材)が存在していないため、1(教員)対20(学生)、1対30、1対40で行う実習授業では、教員と学生とのコミュニケーションが希薄になる。教材のない実習授業では教員の教育指導が、授業時間の5分の1、10分の1以下になる。場合によっては一言も教員と口を交わさず帰る学生もいる。自分勝手な作品や課題制作や課題オペレーションに終始している。

③履修判定の精度が低い。講義試験でもそうだが、実習判定でも追再試を繰り返しており、作品や課題提出・オペレーションが「できれば」それだけでとりあえず60点の合格点を出してしまっている。

④INPUTのない実習主義(OUTPUT主義)、Principleのない実習主義が実習仕上がりのレベルの低さを産んでいる。「できる」評価だけでは、息の長い人材形成に繋がらない。上位10%の学生の作品や課題物の仕上がりがいいのは、本人の才能によるもので、学校、カリキュラム、教員、教材の力によっているのではない。

※この項の参照レポート→http://www.ashida.info/blog/2009/05/_50.html#more


●大学教育と専門学校教育とカリキュラムと(6) ―  大学は教授の講座制がカリキュラム開発を阻んでいる

①それぞれの分野で専門教員(=教授)が存在しているため、科目を横断する連携が取れない。

②工学部を例に取れば、力学、機械工学、電子工学、ネットワーク、ソフトウエア開発などの分野毎に専門教員を抱えているために、専門教養主義にならざるを得ない。しかし〈人材〉の実際は、この分野内で形成される人材であって、横断する以上は教養主義にならざるを得ない(ソフトウエアだけで124単位のカリキュラムにはならない)。したがって、人材教育にはほど遠い体制になる。

③専門学校的に言えば、一人の教授の分野を掘り下げれば、職業教育になるにもかかわらず、専門教員が多いため、逆に具体的な人材教育にならない。

④91年の大綱化で、教養課程が解体したために、科目横断系カリキュラム開発の機運が一気にダウンしたが(専門課程の4年制拡大が進行した)、一方学生の基礎能力はどんどん低下を続け、結果として専門課程教育についていけない学生を作りだしてしまった。未だにその傾向は続いている。

⑤教授の専門性が必要以上に高いため、シラバス指導(=カリキュラム開発)に介入できる教務体制が作れない。


●大学教育と専門学校教育とカリキュラムと(7) ―  シャドーカリキュラムの必要性
①個人差の大きいトレーニング(反復訓練)実習をメインカリキュラムから切り離さないと格差は開くばかり

②専門学校のカリキュラム開発が進まなかった理由の一つは、トレーニング実習を時間割教育の中に混在させていたから。

③大学生なら、自分一人で消化していた勉強の領域(たとえばプログラミングなどの記憶勉強領域)をわざわざ教室でやっていたため、個人差が拡大し、組織的な進行を阻害していた。

④Discipline(INPUT)授業=「理解(原理理解)」を中心に構成するカリキュラム(メインカリキュラム)とワーク(OUTPUT)授業=「理解」したことを使って会得するためのカリキュラム(シャドーカリキュラム)と の分離が必要。従来の作品作成、課題作成などはこの時間帯を中心に構成する。シャドーカリキュラムでは形式的な時間区切りをなくする。TA制の編成が必要。

⑤午前中はINPUT授業を中心に構成し、午後はシャドーカリキュラム化するなどのメリハリのある体制が必要。

⑥シャドーカリキュラムは、専門学校的にはキャンパスライフの中核をなす。カリキュラムと連動したキャンパスライフが専門学校の特長。学園祭、学内発表会、企業人による講評会、特別講演会など、メインカリキュラムと並行して、トータルなカリキュラム体制を構築する必要がある。


●大学教育と専門学校教育とカリキュラムと(8) ―  カリキュラム開発の諸前提現象
①就職先の「質」が変わらないようなカリキュラム開発はあり得ない

②卒業年次の8月末までに少なくとも50%(在籍比)の学生が就職できていないようでは就職の「質」が変わったとは言えない

③就職部(就職センター)の求人案内に頼るような就職活動では、就職の「質」が変わったとは言えない

④追再試が日常化している学校ではカリキュラム開発はあり得ない

⑤コマシラバスがないような学校ではカリキュラム開発はあり得ない

⑥資格合格率が毎年継続的に上昇するか、その合格のための時間ボリュームが毎年減少しない学校ではカリキュラム開発はあり得ない

⑦トレーニング部分やPBL型グループ実習がコマ単位カリキュラムの中にある学校ではカリキュラム開発はあり得ない

⑧上級学年の出席率が、1年次の出席率よりも落ちるような学校ではカリキュラム開発はあり得ない
⑨一つの授業に復習教員が連名で参加するような授業のある学校ではカリキュラム開発はあり得ない

⑩時間割授業が終了後、たくさんの学生(「優秀」学生だけではなく)が学校に残って自学習を推し進めないような学校ではカリキュラム開発はあり得ない


●専門学校教育の課題(1-1) ―  〈力〉能力開発は、専門学校教育の落とし穴

コミュニケーション能力、問題発見・解決力、人間力、実践力、社会人基礎力など
2004年「コミュニケーション能力」(厚労省)
2003年の「人間力」(内閣府)
2006年の「社会人基礎力」(経産省)
2007年の「学士力」(文部科学省)
この「力」ばやりの傾向は止みそうにない。「生きる力」「問題発見・解決能力」「創造力」「実践力」なども同種のもの。

「知識や技術だけではなく、コミュニケーション能力も必要」とは言うが、かつて一度も、専門人材主義的な専門知識・技術を学生に学ばせた学校もカリキュラムも存在していない。大学は専門教養主義、専門学校は資格主義によって、専門人材教育からはほど遠いところにいる。

就職評価は、「よく勉強ができましたね」+「好奇心旺盛でしっかりしている」という努力賞+パーソナリティ評価になっており、専門知識・技術評価は後景に退いている。その上、大学はキャンパス教育の強みを有しているが、専門学校にはそれさえ存在していない。

小杉礼子(労働政策研究・研修機構)は「「就職担当教員が多く、キャリア支援の講義・学内推薦での応募を行っている大学ほど未内定の学生や無活動の学生が多い」という分析結果を報告している(文部科学省 「キャリア教育・職業教育特別部会」 平成21.3.11)。

※この項の参照レポート→http://www.ashida.info/blog/2009/06/post_350.html#more
※大学における「コミュニケーション」教育については→http://www.ashida.info/blog/2009/04/post_341.html

●専門学校教育の課題(1-2) ―  日本の大学生の人材像(対専門学校人材との関係に於ける)

1)受験勉強によって、論理力、読解力、計画力の基礎が育成されており、また欠点を補ったり、強みを伸ばしたりする訓練、遊び心(怠け心)を抑制する訓練が出来ている。勉強は自分でするものだ、という自立性(の初期状態)が養成できている。

2)自分の苦手な分野も勉強すること、関心のないことに対する関心の持ち方の(視野を少し遠くに持つという)訓練が出来ている。知的な我慢の訓練が出来ている。

3)大学教員に接することによって、寝ても覚めても勉強が好きな人間(強要や必要と関係なく勉強する人間)が世の中にいるということを一度は味わっている。高校までの勉強は本来の勉強ではなかった、という反省をもてている。

4)広大なキャンパス、広大な図書館(圧倒的な蔵書数)を体験することによって、教室教育、教科書教育とは別の勉強があることを感覚的に理解できている。

5)家庭教師、塾講師などのアルバイトによって、指導能力のプレ勉強が出来ている。

6)接客アルバイトによって、顧客対応などのコミュニケーション能力のプレ育成ができている。

7)活発で広範なクラブ活動によって、後輩・先輩の上下規律、組織コミュニケーションのプレ感覚を体験している。企業が〈体育会系〉を好むのは、彼らの〈体力〉を好むのではなく、彼らの組織論を好んでいる。

8)多種多様なコンパ活動=恋愛体験によって、観察力、プレゼン力、誘惑力、そしてチャンスの存在を体得している。

9)受験勉強やクラブ活動の競技会の体験によって、日本大(あるいは、世界大)の〈外部〉意識がもてている。〈敵〉はクラスメートや地域の不良や出先の相手、あるいは家族だけではないということを心得ている。

10)地方出身者が多いことによって(良い学校ほど全国から学生が集まっている)、自活の意味を少しは理解している。


●専門学校教育の課題(1-3)― 〈力〉能力開発は、専門学校教育の落とし穴
コミュニケーション能力、問題発見・解決力、人間力、実践力、社会人基礎力など

①大学教育でこういった能力開発が流行るのは、理由がある。具体的な学びがそのまま職業教育に繋がっていないということだ。したがって、職業能力も抽象的な〈力〉能力開発になる。専門教育が専門教養教育にならざるを得ないのが、抽象的な〈力〉キャリア教育になる理由。

②また卒業生の70%を占める非工学系(非技術教育)の営業人材教育の必要性が、「接遇」的な「コミュニケーション能力」「人間力」教育が受けやすい理由にもなっている。大企業の人事部・総務部が文系人材で占められているのも、それに対応している。

③専門学校が、この非専門学校的な流れに乗る理由は、資格教育の周回遅れ的な(レベルの低い)専門教養主義に落ち込んでいるため。それを外面的に補うために、〈力〉教育に逃げている。

④また平板な資格主義と実習主義とによって、高度専門人材を作れないために、思いつきの〈力〉教育に逃げている。専門学校の〈力〉教育は、前員カリキュラムに手を付けることのできない無能力を露呈しているだけ。

⑤あるいは理美容、動物介護、看護師・身障者介護の一部の領域など、専門性の水準(の低さ)が「接遇」教育と交差する人材教育の現状を露呈している。他の分野も50歩100歩。


●専門学校教育の課題(2)― 専門学校の「教員」問題

1)「専門性」問題

①実務現場の技術的なキャリアパスを描けない教員が多い。キャリア専門性が低い。卒業生がそのまま教員になったり、卒業生が30歳までにリタイヤして教員に戻ってくる場合が多い。現状脱皮ができない最大の理由になっている。

②高度なキャリア経験のない「教員」に、息の長いキャリア人材を作ることができるのか。

③高度なキャリア人材であっても、長い学内「生活」の中で、専門性が摩滅していく。

④かといって、インテリジェントな企業交流のノウハウや教員研修のノウハウがあるわけでもない。

2)「教育力」問題
①「見てろ」「こうしろ」としか言わない、つまり実務でやっていたことをそのまま教室に餅かんでいるだけの教員、言い代えれば、「教材」開発ができない教員を「教員」と呼んでいる。厳密には、「トレーナー」、「インストラクター」、「TA」でしかない者を「教員」と呼んでいる。「トレーナー」程度の者に300万円以上の給与を与えている。

②教員の専門性、教育力の指標は、カリキュラムが作れる、教材が作れる、コマシラバスが書ける、履修判定試験が作れる、シラバスが書ける、専門講義ができる、専門高度実習ができる、オペレーション実習ができる、という8段階だろうが、現状ではこの段階評価が皆無。平板な年齢主義的な職階制によって、人件費が膨らみ、本来の専門教員の常勤採用が安定しない構造になっている。


●専門学校教育の課題(3)― 専門学校の「担任主義」問題

なぜ、専門学校は、担任制を強化せざるをえないのか?

①納付金納付状況(在籍率)か、資格合格率くらいしか信頼できる教育指標が存在しないため、マネージメントが人間主義になる

②教務管理の客観的な指標が在籍率しかないため、授業評価、教員評価などにかかわる教員指導がライン展開できない。

③上記の②の教務指導が事実上、担任業務の中に紛れ込んでしまい、教育(カリキュラム+授業)への学生の不満は、担任の苦情処理の中に雲散霧消してしまう。担任は学生の苦情を懐柔する役目(教務問題の隠蔽役)を担わざるを得ない。担任はラインとして存在していない。

④教員の専門性が決定的に不足しているため、担任主義的な生活指導が前面化しやすい
⑤統一的で組織的な教育目標(=人材目標)が存在していないため、諸科目の仕上がり管理(知識水準+技術水準)に関する関心が薄い。互助組合のような教員組織になり、学内で仲良く過ごすことだけが目的になってしまう(苦笑)。


●専門学校教育の課題(4)― 専門学校の「就職」問題

学んだことと就職先が一致していない(大学とあまり変わらない)。

①本来の専門人材教育が出来ていない(資格主義カリキュラム、基礎教育主義のため)

②就職率主義と担任主義と就職部主義によって、優秀な学生の就職指導を放置している

③〈力〉教育主義によって、学生のパーソナリティー重視の就職指導になっている

④パーソナリティ重視の就職実績によって、優良企業への就職実績が継続的に拡大しない。

⑤企業も、就職実績を学校の教育、カリキュラム、教員の成果と見なさず、学生個人の能力としてしか評価をしない。したがって、「優秀な」学生を送っても提携関係(企業連携によるカリキュラム開発、教員交流)ができない。人事部+就職部ですべてが止まってしまう。

⑥結局、企業の具体的な専門人材イメージに基づいてカリキュラム開発ができていないため、「優秀な学生」=「カリキュラムの体現者」=「優良企業就職者」という等式が形成できない。結果として、パーソナリティ重視の担任、就職部主導による就職活動になっている。

⑦専門学校教育の最大の成果は、就職の「質」をめぐる実績であるにもかかわらず、資格主義と担任主義がその認識を阻害している。教育と就職とが分離している。

⑧専門学校の3年制課程、4年制課程がふるわないのも、就職先が変化しないから。時間数と科目数の増大が教育の質や就職の質の変化に繋がっていない。

※この項の参照レポートについては→http://www.ashida.info/blog/2009/02/post_329.html


●専門学校教育の課題(まとめ)

就職の質の向上と一体になったカリキュラム開発が生命線

1)偏差値55以下の大学、専門学校教育の教育課題は、キャリア教育。

2)キャリア教育の最大の課題は、具体的な人材教育。

3)具体的な人材教育の鍵は、カリキュラム開発の成否。

4)カリキュラム形成を阻害する要因を計画的に除去していく対策が必要

5)シラバス・コマシラバスの不在、コミュニケーション・マナー教育の過剰な扱い、資格科目のボリュームの多さ、トレーニング実習の多さ、コース制・選択科目制、単位制、履修管理の不在(追再試の日常化)、心理主義的授業評価(学生アンケート)、複数教員制、担任制、就職部重視の就職指導などがカリキュラム開発に関わるノイズ。

6)教育改革を、就職改革に繋げる見通しを持つ必要がある。出席率、在籍率、進級率、卒業率は単なる内部指標。学生は出席率を目指して入学するわけではない。就職の変化が教育変化の最大の証。専門学校の「第3者評価」の最大のものは、就職評価。

7)教育変化→就職変化→保護者・高校教員の評価→高校生の評価がこれからの募集戦略の鍵を握る。「就職が違う」がすべて。

8)就職「率」評価は就職評価にならない。就職「率」評価は、「できない学生」中心の就職指導。「できる学生」こそがカリキュラムの体現者。学んだことを十全に活かせる就職までを世話してこその就職指導。科内偏差値が就職偏差値と整合するような就職指導を目指す必要がある。

9)「できる学生」の就職目標は早期就職。8月末50%(在籍比)を目指す体制作りが必要。

10)「良い」企業とは何かの企業群評価分類が必要。就職指導を企業評価とともに進めていく必要がある。「就職が違う」の「違い」を的確に説明出来るノウハウを身に付ける必要がある。

※「キャリア教育」については→http://www.ashida.info/blog/2009/02/post_325.html#more

-------------------------------------------------------

今回の研修会は、以下の夏期研修会全3回の(言わば)プレゼンテーション講演です。ご関心のある方はぜひ参加して下さい。より本格的な資料とともに詳細な展開を行います。近々申し込み要領が出来上がります。

--------------------------------------------------------
『大学全入時代の専門学校教育・募集を考える』研修会 (全3回) 主催全国専門学校情報教育協会(http://www.invite.gr.jp/

●第一部「専門学校教育は、なぜ社会的な評価が低いのか?」
 平成21年7月27日(月)14:00 ~ 22:00  28日(火)10:00~16:00
1)資格主義教育の何が専門学校をダメにしているのか

2)実習主義教育の何が専門学校をダメにしているのか

3)専門学校の公共性問題
教員の専門性評価が低い
履修判定(試験評価)に信頼性がない
就職実績があやしい(就職「率」主義の弊害)

4)教育改革の諸課題
「基礎」主義教育の問題
担任主義の問題
人間力、実践力教育の問題
コミュニケーション能力教育の問題
PBLグループ学習の問題

5)教育スタイルの諸課題
コース制・選択制教育の諸問題
インターンシップ制の諸問題
単位制教育の諸問題

6)教員組織の改革
職業教育の「教員」とは誰か
実習教員の位置づけをどうするか
教員評価をどうするか
教員組織をどう組織するのか

まとめ:専門学校の公共性へ向けての改革(何が大学との差別化の基軸になるのか)


●第二部「専門学校の教育評価は、なぜいつも失敗しているのか?」
 平成21年8月6日(木)14:00 ~ 22:00 7日(金)10:00~16:00
1)「自己点検・評価」と「第3者評価」
「自己点検・評価」の歴史と本質
学校の個性化、特色化と「自己点検・評価」
「第3者評価」の歴史と本質
大学の「自己点検・評価」「第3者評価」の歴史(何が失敗したのか)
大学の点検評価と専門学校の点検評価との違い
NPO私立専門学校等評価研究機構の点検・評価をどう考えればよいのか

2)授業評価にどう取り組むか
授業評価は授業法評価ではない
授業目標のない授業評価はない
コマ毎の授業目標のない授業評価はない
履修判定が第三者性のない授業評価はない
授業評価実践例

3)学生アンケートにどう取り組むか
心理主義アンケート(満足渡アンケート)の問題点
教育改善に繋がるアンケート、繋がらないアンケート
学生アンケートと授業評価、教員評価、教育評価
学生アンケート実践例(駄目な実例、良い実例)

4)期末試験はどうあるべきか
「専門士」の第3条件
履修判定=期末試験とは何を意味するのか
履修判定とシラバス、カリキュラム改革
履修判定と教員評価
履修判定と教育改善

5)就職評価はどうあるべきか
就職部の充実している就職にはまともな就職がない
担任が指導する就職にはまともな就職がない
優秀学生を放置する就職にはまともな就職がない
卒業年度に始める就職活動にはまともな就職がない
マナー教育や就職カリキュラムが充実している学校にはまともな就職がない


●第三部「大学全入時代の専門学校募集はどうあるべきか」
 平成21年8月24日(月)14:00 ~22:00  25日(火)10:00~16:00

前編:教育改革と募集
1)なぜ「教育改革」は募集に繋がらないのか
2)なぜ広報は「教育改革」に無関心なのか
3)なぜ企業は「教育改革」に無関心なのか
4)なぜ見学者は「教育改革」に無関心なのか
5)なぜ教員は「学校見学会」に失敗するのか
6)「学校見学会」改善の課題
7)教育改革と募集のマーケット
8)募集に繋がる教育改革、繋がらない教育改革
9)募集に繋がる就職率、繋がらない就職率
10)募集に繋がる広報・募集組織の体制
11)募集に繋がる学校組織の体制(教務と広報・募集の連携をどう取るのか)
12)AO入試をどう考えればいいのか

後編:大学全入時代と専門学校の募集(全体のまとめ)
1)大学全入時代とは何を意味するのか
2)専門学校の「一条校化」とは何か
3)高等教育における専門学校の位置づけ
4)1991年以降~現在の専門学校マーケット、大学マーケットの変化
5)大学教育改革の動向と専門学校
6)大学進学率はどこまで伸びるのか
7)専門学校マーケットはどうなるのか
8)大学全入時代における大学の問題
9)大学全入時代における専門学校の課題
10)大学全入時代における職業教育の課題
11)大学全入時代における就職指導の課題
12)大学全入時代における教員組織の課題
付論:生涯教育と学校教育(学校教育と生涯学習とはどこが異なるのか)
付論:学校サイト講評(あなたの学園サイトを講評します)

(Version 2.0)

にほんブログ村 教育ブログへ
※このブログの現在のブログランキングを知りたい方は上記「教育ブログ」アイコンをクリック、開いて「専門学校教育」を選択していただければ現在のランキングがわかります)

投稿者 : ashida1670  /  この記事の訪問者数 :
トラックバック

この記事へのトラックバックURL:
http://www.ashida.info/blog/mt-tb.cgi/1081

感想欄
感想を書く




保存しますか?