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 増補(ver.3):シラバスとは何か ― 大学のシラバス主義には何が欠けていたのか 2009年02月02日

〈シラバス〉には、私の考えるところ3つのタイプがある。

一つは日本型シラバス。これは、学生サービス型シラバス。学生は学年当初、期首当初の科目選択のための便宜としてこれを使う。

二つ目には、アメリカ型シラバス。これは、教材型シラバス。毎回毎の受講に必要な情報が盛り込まれている。苅谷剛彦は、アメリカの大学のシラバスには、①授業の基本情報 ②担当講師情報 ③講義の目的、スケジュール、読むべき文献 ④成績評価の方法  ⑤文献の入手方法 ⑥履修条件(授業を選択できる条件)などが含まれており、「事務的連絡文書」「法的契約書」「学術情報」「指導文書」の四つの側面(『アメリカの大学、ニッポンの大学』苅谷剛彦)があると言っている。

日本の大学も91年の大綱化以降、「自己点検・評価」の努力義務化とともにアメリカ型シラバスへの移行を始め、大学改革と言えば、シラバス改革とまで言われるほどにシラバスの教材化が進んだ。シラバスの正常進化だったと言える。

シラバスが大学(教員)と学生との「契約文書」だという議論は、こういった苅谷の紹介などと関連しているが、これはくだらない紹介だ。

「契約」だとすれば、学生と教員は対等の立場でなければならない。もっと言えば、授業は学生の「消費」対象、学生は消費者=顧客の立場に立つことになる。

そんなことがあるわけがない。そもそも学生がその授業の中味を勉強する前に、その授業情報を評価できるくらいなら、学生ではない。せいぜい、試験のやり方が、自分が単位を取りやすいものかどうかくらいだけが、「重要な」情報になる程度。しかし、もちろんそれは、授業内容からして、この試験情報が適正なものなのかどうなのかの評価ではない。

シラバスが学校の組織的なカリキュラムやそれに基づいた科目設置、授業運営であるならば、そういった評価は学生開示前にすでに済んでなければならない。それが教授達の専門性・教育性が問われるFD最大の仕事。

教育の内容開示は、商品のスペック表示とは意味が異なる。授業は消費の対象ではなくて、人材を育成(生産)する実体なのだから。学生は、受講する授業を通じてその目標と授業評価の柱を学んでいくのであって、その意味で授業は(授業受講前の学生にとって)手段でも利用する対象でもない。授業の外部には授業の目的や評価は存在していない。

三つ目は、業務文書としてのシラバス。これは、教材型シラバスの欠陥を補正するものだ。大学のシラバスは、いくら詳細化され、分厚くなってもほとんど改革に繋がらなかった。先生達も未だにいやいや書いているのが文面から痛いほどに伝わる。

なぜそうなるのか。それは大学には〈カリキュラム〉が存在しないから(それと共に専門外接続、学外接続の方法が曖昧で未経験なため本来の授業評価も存在しない)。自分の担当する科目が他の科目とどんな関係にあるのかを配慮する必要がない。東大型の講座主義が未だにはびこっている(せっかく准教授制になって〈教授〉から解放されたのに)。その分自己内で完結している大学の科目群では、シラバスの意味は自己内で完結している。何を書こうが自由(専門性が高いために、文字数くらいしか他者の批判が介在しない)、せいぜいのところ、学生サ-ビスのための便宜にすぎないという日本型シラバスへの(不毛な)回帰(=講座型シラバス回帰)が未だに生じている。

したがって、90年初頭以降のシラバス詳細化運動は、分厚くなりすぎて持ち運びに不便、詳細化しすぎて返ってわかりづらい、などなどのアンケートによってふたたび簡略化する反動も出てきた。日本のシラバス運動はどこまでも学生サービスでしかなかったのである。

大学のシラバスの優劣を判断することは簡単なこと。文字数が科目担当者によってバラバラな大学シラバスは、ほとんど儀礼的なシラバスにすぎない。各教員が勝手に書きまくっているだけ。文字数が揃っていてもその書きまくりの特質は、学生への負荷メッセージにすぎないということ。教員が自らに課した教育課題、授業目標というニュアンスは一切ない。ちょうど「学び会い」教育の「課題学習」的な色彩に色濃く被われているのがこの種のシラバスの文体。書式が統一されているのに、文体や文字数に差異があるのは、組織的な教育チェックが弱い(書式ルールチェックに留まらず)。まともなFDが機能していないということ。

カリキュラムは、一つの教育目標に向かって、科目間の横連携+縦連携、つまり科目ヒエラルキーが厳密に組み立てられている場合にのみ存在する。またそういった組織性がない場合でも、一つ一つの科目の意義(教育的な意義における目標と評価)がシラバスに詳細化されていなければならない。

その場合には、シラバスは学生サービスでも、自己確認書でもなく、他の科目との接点を求めて科目のinput(受講前提)とoutput(学生仕上がり)とを明確に記したものになる。単独科目の場合には、他科目の評価がない分(孤立する分)、余計に詳細な達成評価指標が記されていなければならない。

91年の大綱化は、科目設置の「規制緩和」がなされたが、それは「規制」そのものがなくなったのではなく、カリキュラム全体の教育目標(人材育成目標)から科目を再度規制することを求めたのである。したがって、91年以降の「シラバス」の詳細化は本来は学生「サービス」型からのシラバスの脱皮を意味していたはずであったが、カリキュラム開発が教授の専門性と自立性に阻まれ進展しなかった。

シラバスの詳細化は、カリキュラム開発と並行して進まないと意味がない。カリキュラム開発と離れる度合いに応じて、シラバスの学生サービス化が進行し、教員達の「やらされ感」が増幅する。大学のシラバスの中ではもっとも充実していると思われる金沢工大のものでさえ、教員がいやいや書いているのが目に浮かぶ。「教育改革」の金沢工大でさえ「カリキュラム」が存在していないのだ。

したがって、シラバスは、本来はカリキュラム全体を意識した「部分」を担う使命(=〈部品〉としての使命)を記した業務文書である。各科目のシラバスを読めば、カリキュラム開発のための教員同士の専門性や教育ノウハウがどのように交流したのかがわかるものでなければならない。

大学の「教育改革」における「シラバス」膨張主義(=サービス膨張主義)は、91年以降カリキュラム開発が全く進んでいないことの現れにすぎない。

専門学校は、大学のように専門性と自立性の高い「教員による」教育を行う学校ではなくて、「カリキュラムによる」組織的な教育を行う学校である(と思われている)。カリキュラムの完成度はシラバスの完成度と大きく重なっている(と思われている)。

つまり、専門学校にとっては、シラバスは学生サービスではない(と思われている)。シラバスは、それなしには授業を担当する意味がない教員業務そのものなのである。カリキュラム重視の教育を行う場合には、シラバスはまずは教員自身に向けられた文体を持たなければならない。

専門学校もまた90年初頭以降、「シラバス」を作る学校が増えてきたが、大学以上に貧弱なものしか存在していなかった。理由は簡単。専門学校には選択科目が大学のようには豊富な選択科目が存在していなかったからである。さらにもっと本質的な理由としては、官許資格主義によって、シラバスは形骸化していた。それは当たり前のことであって、官許的な指定科目制に縛られていることと選択科目がほとんどないこととは同じ事を意味していた。それは講座主義(科目単独主義)の大学教育に見劣りすることではなくて、専門学校の「特長」でもあった。専門学校にとって、カリキュラムとは、指定科目(自分たちが決めたのではない指定科目)の集合であって、教える者自身が自らのキャリアと専門性に応じて開発するカリキュラムとは無縁のものだった。

しかし、本来のカリキュラム教育にこそ、シラバスは必要だったのである。「選択科目が少ないから、学生サービスを行う必要がない」というシラバス不要論は、専門学校にとっては二重三重に倒錯した事態だった。専門学校もまた資格主義、認定校主義によってカリキュラム開発が遅れている。シラバスが大学とは別の意味で貧弱になっていたのである。

※このコンテキストの詳細は以下のレポートを参照のこと→http://www.ashida.info/blog/2008/12/post_311.html

そのことを踏まえて、今回の4年制カリキュラムの作成に当たっては(http://www.ashida.info/blog/2009/02/4.html#more)、業務文書としてのシラバスがどういうものになるのかを意識して、開発を進めてきた。誰がどの箇所を読んでも、誰がその科目を授業担当しても、何をどこまで教えなくてはならないのかがわかるような文体を意識している。

シラバスには、その科目が存在しなければならない「時代背景」、その時代背景とかかわる「科目内容」、科目内容にかかわる「人材目標」が記してある。

科目のコマ毎(90分単位)の展開には、1)シラバス(大目標)との関係 2)コマの主題(毎日の、毎週の授業コマの主題) 3)コマ主題をどういった細目から教えるのかを示した「コマ主題細目」 4)個々の細目をどの程度のレベルまで教えるのかを記した「コマ主題細目深度」 5)次コマとの関係という5つの観点を設定している。

また授業の最終コマには「まとめ」授業として、科目全体の(他の科目へとつなぐための)教育目標を再度敷衍するコマを用意している。これはいわば授業コマ化された「シラバス」=シラバスの化肉化(incarnation)である。

最終コマは、履修判定試験コマとなるが、この場合もシラバス(コマシラバス)は必要であって、仕上がり試験を授業全体のどの項目によって行うのか、どの項目についての能力判定がその科目を「履修した」と言えるのかを記している。担当教員は、この項目に沿って履修判定試験を作ることになる。

さらに留意したことは、従来の指導要領的なシラバスの欠陥の補正である。シラバスは短いものであれ、長いものであれ、指導項目を列挙したものが多い。これでは、実際に授業の中で一言でもそのタームに触れたらそれで「教えた」ことになる。シラバスの項目主義では、その授業で教えることの「質」を表現できない。重要項目では、その項目に関する言及度合いを表現する必要がある。今回のカリキュラム開発では「いくつかの事例(サンプル)に沿って解説する」「〜を紹介しながら言及する」「〜の資料を用意して説明する」などの表現を随所に盛り込んでいる。

たとえば、今回のカリキュラム開発に当たって、「XML概論」のシラバスは以下のようになっている。

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●XML概論(講義95%、実習5%) 全8コマ(履修判定試験を含む)

【シラバス】
(時代背景)インターネットにおけるRSS配信やWEBサービスの提供において、標準的なデータフォーマットとして広く利用されているのがXML(Extensible Markup Language)である。実際には、XMLのカバーする領域はインターネット関連技術にとどまらず、Office系ソフトウェアの保存フォーマット、リレーショナルデータベースに変わる新しいデータベースシステム、業務システム開発用のフレームワークやツールの設定ファイルなど多岐に渡っている。XMLという技術の用途がこのように多面的になるのは、XMLがソフトウェア技術ではなくデータに関する技術だからである。XMLはソフトウェアではなく、データの論理的・物理的なフォーマットに関する一規格であり、可搬性をもった半構造データの集合(データベース)である。このような技術が、データの可搬性が要求されたり(インターネットでのデータ交換やアプリケーションの保存フォーマットなど)、データの非定型性が要求される(文書データベース)場面で、リレーショナルデータベースやCSVファイル以上の価値を発揮しつつある。

(科目内容)そこで、本科目では、XMLという言語の特徴を踏まえた上で、XMLを活用するための基本技術(文書構造、スキーマ定義、構造変換、DOM)の概観やXMLを巡る技術動向(WEBサービス、XMLデータベース)の紹介を行っていく。技術動向の紹介においては、実際にサンプルのシステムをコンピュータ上で動作させながら、それぞれの技術がどのような課題の解決に有効であるのか確認しながら解説を行う。

(人材目標)既存技術との比較の上でXMLという技術のメリットとデメリットを評価し、その技術的射程の全体像を認識できる技術者の育成を目標とする。"

【一コマ目】XMLの特徴と用途

1_ 1 シラバスとの関係
XMLという技術の目的や特徴を解説した上で、普及しつつある利用事例を紹介する。

1_ 2 コマ主題
XMLが汎用的なデータ記述言語であることを踏まえた上で、XMLのもつ技術的な射程について解説する。

1_ 3 コマ主題細目
①XMLの目的 ②XMLの特徴 ②XMLの形式 ③XMLの利用事例

1_ 4 コマ主題細目深度
①XMLが汎用的なデータ記述言語であること、また、そのような汎用的なデータ記述言語が必要であった背景などについて解説する。CSVの問題点、バイナリ形式のその他のファイルフォーマットなどと比較しながら、汎用的なデータ記述言語としてのXMLの優位点について解説する。

②XMLの実際の記述形式について解説を行う。テキストファイルの物理構造をもつこと、階層構造化された論理構造をもつこと、メタ言語機能をもつこと、特定の通信プロトコルに依存しないこと、といった特徴について解説する。ExcelやWordファイルの物理構造、HTML、CSVなどと比較し優位点を指摘しながら解説する。

③XMLの実際の記述形式について解説を行う。タグを用いて記述すること、要素と属性から構成されることについて簡単に解説する。

④XMLが何に利用できるのかについて解説する。RSS配信、J2EEによる開発における利用(エンタープライズアプリケーションアーキテクチャパターンの「トランスフォームビューパターン」の適用)や、WEBサービスとの関係などについても解説を行う。全体的に、汎用的なデータ記述言語の側面を指摘しながら解説する。"

1_ 5 次コマとの関係
次のコマでは、実際にXML文書の論理構造や記述の仕方について解説するため、XMLの特徴や用途について解説しておく。


【二コマ目】XMLの論理構造と記述形式

2_ 1 シラバスとの関係
XMLによって作成された文書がどのような構造を持っているかについて解説する。

2_ 2 コマ主題
XML文書の論理構造について、要素ノードや属性ノードからなるツリー構造をもっていること、また、記述上の注意点について解説する。

2_ 3 コマ主題細目
① ツリー構造 ②XML文書の構成 ③記述上の注意

2_ 4 コマ主題細目深度
①XML文書の論理構造であるツリー構造について解説する。唯一のルート要素を最上位の要素として、要素が親子関係をなすツリー構造となっていること、各要素には属性が備わっている場合があることなどを解説する。ツリー構造の図などを提示しながら解説をすること。

②XML文書は、XML宣言、文書型宣言、XMLインスタンスの3つの部分から構成されること、XML宣言の記述の仕方、文書型宣言の意味、XMLインスタンスには要素や属性からなるツリー構造が記述されることについて、サンプルを提示しながら解説する。XML宣言においては、文字コードを指定するが、実際にファイルを保存する際に指定した文字コードと一致させることに注意させる。

③要素や属性を記述する際の注意点(ルート要素はひとつ、大文字小文字の区別、開始タグと終了タグの一致、使用可能な文字に関する制限)について解説する。なお、コメント、CDATAセクション、処理命令の意味と記述の仕方についても触れておく。

2_ 5 次コマとの関係
次のコマでは、XML文書におけるスキーマ定義の仕方について解説するため、XML文書の論理構造や記述の仕方について解説しておく。

このコマの参照教材:(株)日本ユニテックWeb技術研究グループ, 2005, 『はじめて読むXML-標準データ記述言語入門』, ASCII


【三コマ目】XMLのスキーマ定義

3_ 1 シラバスとの関係
XMLのメタ言語機能と関連して、2つのスキーマ定義の方法について解説する。

3_ 2 コマ主題
XML文書のスキーマ定義を行うためのDTD、XML Schemaという2つの手段について、それぞれの比較を行いながら解説する。

3_ 3 コマ主題細目
①スキーマ定義の必要性 ②DTD ③XML Schema

3_ 4 コマ主題細目深度
①クライアントアプリケーションとサーバーアプリケーションで、XMLの要素の定義が一致していない場合、正常な処理ができない可能性に触れ、XML文書においてもスキーマ定義のよるデータのチェックが必要であることを解説する。また、そのようなチェックを行いXML文書にアクセスするミドルウェアがXMLパーサーであること、マイクロソフトのMSXMLやJavaのデフォルトのXMLパーサーを紹介しておく。

②DTDによるスキーマ定義の特徴と実際の定義の方法について簡単に解説する。DTDによるスキーマ定義では、独自の言語により、要素型宣言、属性リスト宣言、実体宣言、記法宣言といったことが可能であり、その中で、特に要素型宣言における要素の入れ子構造、要素の出現回数、出現順序に絞って簡単に記述法についての解説を行う。

③XML Schemaについて、詳細な記述方法には触れず、スキーマ定義自体がXML文書として作成される、要素や属性値に関するデータ型を詳細に定義することが可能、「名前空間」が利用可能であるといった特徴とそれによるメリットに関して簡単に紹介しサンプルを提示する。最後に、スキーマ文書とXMLインスタンスを用いたチェックのデモンストレーションを紹介する。

3_ 5 次コマとの関係
次のコマでは、異なるスキーマ定義間の変換にも利用できるXMLの構造変換技術について解説するため、スキーマ定義の方法について解説しておく。

このコマの参照教材:屋内 恭輔 & 安陪 隆明, 2003, 『XMLスキーマ書法』, 毎日コミュニケーションズ


【四コマ目】XMLの構造変換

4_ 1 シラバスとの関係
WEBアプリケーション開発と関連して、XMLの構造変換技術について解説する。

4_ 2 コマ主題 XMLの主要な構造変換技術であるXSLTの文法やXPathの関数の使い方の概略について解説する。

4_ 3 コマ主題細目 ①構造変換の必要性 ②XSLT ③テンプレートルールと関数の利用

4_ 4 コマ主題細目深度
①WEBアプリケーションのアーキテクチャにおいて、ドメインモデルからXML文書を生成させ、XSLTによる構造変換によって、ビューであるHTMLを生成させるパターン(エンタープライズアプリケーションパターンの1つである「トランスフォームビューパターン」)の構造とメリットや、異なるスキーマ定義間でのXML文書の構造変換などを取り上げ、XSLTによる構造変換の必要性について解説する。この際には、実際に動作するサンプルシステムを配布して内容を確認させながら解説する。

②XSL、XSLT、XSL-FOの関係について紹介した上で、XSLTの目的がXML文書の構造変換にあり、実際の変換に関しては、XSLTによるスタイルシートの他に、XSLTプロセッサが必要であることを解説する。

③実際のXSLTの記述においては、XML文書内のノードに適用されるテンプレートルールによって構成されること、内部ではXPathで規定された関数により文字列処理や数値処理が可能であることを解説する。実際のXML文書をXSLTスタイルシートによって変換するサンプルを配布し変換処理について確認させる。

4_ 5 次コマとの関係 次のコマでは、プログラム言語によるXML文書へのアクセスや加工の方法について解説するため、このコマではテンプレートを用いたアクセスや加工の方法である構造変換技術について解説しておく。

このコマの参照教材:
Kay, Michael, 2001, XSLT Programmer's Reference 2nd Edition, Wrox Press(佐藤 直生 監修, IDEA・C訳, 2002, 『XSLTバイブル』, インプレス)

Fowler, Martin, 2003, Patterns of Enterprise Application Architecture, Pearson Education(長瀬 嘉秀監訳, 株式会社テクノロジックアート訳, 2005, 『エンタープライズアプリケーションアーキテクチャパターン 頑強なシステムを実現するためのレイヤ化アプローチ』, 翔泳社)


【五コマ目】DOMインターフェイスによるXMLへのアクセス

5_ 1 シラバスとの関係
DOMインターフェイスによるXML文書へのアクセスや更新を行う技術について解説する。

5_ 2 コマ主題
JavaにおけるDOMインターフェイスの実装であるJAXPを用いたプログラミング技術について解説する。

5_ 3 コマ主題細目 ①DOMの概要 ②DOMとSAX ③JAXP

5_ 4 コマ主題細目深度
①プログラム言語によってXML文書を処理すれば、XSLT以上の汎用的な処理が可能であること、そのための共通なインターフェイスとしてDOMが規定されていることを解説する。特に、DOM自体はプログラム言語やJavaのインターフェイスではなく、W3Cによって勧告されたインターフェイス群であることに注意させる。

②DOMの他に同様の目的を持った技術として、SAXにも触れておく。DOMがXML文書のツリー構造の全体をメモリー内に構築しランダムアクセスを行う技術であるのに対し、SAXはすべての要素に対してシーケンシャルにアクセスしイベント駆動によって処理を行う技術であることを解説する。さらに、それぞれのメリットデメリットを比較表などを用いて解説する。

② JavaにおけるDOMの実装であるJAXPについて紹介する。JAXPの特徴として、XMLパーサーの実装をプラグイン形式で交換することが可能であること、実際に、Java1.4に含まれるXMLパーサーはCrimsonであり、Java SE 5にはXercesが含まれており、後者はXML Schemaにも対応できること、さらに、JAXPにはXSLTプロセッサであるXalan-Javaも含まれていることを紹介する。実際にXML文書にJAXPによってアクセスするサンプルコードを用いて処理の仕方について簡単に解説する。

5_ 5 次コマとの関係
次のコマでは、XMLの応用技術であるWEBサービスとXMLデータベースの概要について扱うため、XML文書を処理するプログラミング技術に関するイメージをつかませておく。

このコマの参照教材:(株)日本ユニテックWeb技術研究グループ, 2005, 『はじめて読むXML-標準データ記述言語入門』, ASCII


【六コマ目】WEBサービスとXMLデータベース

6_ 1 シラバスとの関係
XMLの有力な応用技術であるWEBサービスとXMLデータベースの概要について解説する。

6_ 2 コマ主題
WEBサービス技術とSOAPプロトコル、WSDL、XMLデータベースとXQueryといった近年のXML応用技術に関する概要について解説する。

6_ 3 コマ主題細目
①WEBサービスの概要 ②SOAP、UDDI、WSDL ③XMLデータベース

6_ 4 コマ主題細目深度
①DCOM、CORBA、RMIといったオブジェクト分散技術の歴史を簡単に紹介し、それぞれの普及を妨げた理由について解説する。その上で、分散処理に関する標準技術としてWEBサービスが策定された経緯、従来の技術に対するWEBサービスの利点について解説する。DCOM、CORBA、RMI、WEBサービスやインターネット、主流のシステム形態などを並べた年表などを用意しながら解説すると、分散技術に対する要求の変化などにも触れることができる。

②WEBサービスがHTTPプロトコルの上位プロトコルであるSOAPを利用すること、WEBサービスを登録し検索しやすくするためのUDDIレジストリおよび特定のWEBサービスを利用する際に必要な定義情報を記述するための仕様であるWSDLの役割に付いて簡単に紹介する。WEBサービスとクライアントのサンプルを通して、簡単なWEBサービス利用のデモンストレーションを行いながら、WSDLの役割について確認させる。

③ レーショナルデータモデルに基づいたデータを処理するリレーショナルデータベースに対して、半構造データを処理するのに適したXMLデータベースの利点について解説する。物理構造、論理構造それぞれのレベルに関する違いを分けて解説する。SQLに対してXQueryによるデータ操作についても簡単に触れておく。実際に、XMLデータベースをコンピュータ上で動作させながら、XMLデータベースの利点について解説する。

6_ 5 次コマとの関係(次回はまとめ講義)

このコマの参照教材:
(株)日本ユニテックWeb技術研究グループ, 2005, 『はじめて読むXML-標準データ記述言語入門』, ASCII。

Brogden, Bill, 2002, SOAP Programming with Java, SYBEX, Inc.(沖林 正紀監訳・(株)スリー・エー・システムズ訳, 2004, 『JavaによるSOAPプログラミング パーフェクトガイド』, 技術評論社)。


【七コマ目】この科目のまとめ講義

①XMLの用途とXML文書の形式
②DTDとXML Schema
③XSLTによる構造変換
④JAXPの概要
⑤XML WEBサービスとXMLデータベース"


【八コマ目】履修判定試験(ミニマムの出題項目

①XMLがメタ言語といわれる意味
②XML文書全体の構造とひとつひとつの要素の意味
③DTDの特徴と基本文法
④XML SchemaのDTDに対する利点と基本文法
⑤XPathの関数の種類と簡単な用法
⑥XSLTの基本文法
⑦DOMとSAXに関する比較
⑧JAXPの概要、JAXPに含まれる機能
⑨XML WEBサービスにおけるSOAP、WDSL、UDDIの意味
⑩XMLデータベースとリレーショナルデータベースの違い、それぞれのメリット・デメリット

以上、この精度で4年間すべての専門授業シラバス(一般教養を除く3285時間)を作っている。ぜひ、2月20日の私学会館(市ヶ谷)での発表に期待していただきたい。カリキュラム全体の流れと思想を解説したい。なお、この4年間でさしあたり、在籍比100%の精度でJAVA、オラクル、XML、UMLの四つの資格が(自然に)取得できるように仕上がっている。

(Version 7.0)

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投稿者 : ashida1670  /  この記事の訪問者数 :
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