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 【第四版】2009年度版文部科学省「学校基本調査速報」を読む ― 専門学校入学者の推移と専門学校数の推移(専門学校は地域の高校生からなぜかくも信用されていないのか) 2009年08月16日

文部科学省の2009年度版「学校基本調査速報」の第二回レポートです。今回は入学者数の推移と学校数の推移を中心に大雑把な評価を試みました。※なお第一回レポートはこちら→http://www.ashida.info/blog/2009/08/2009_1.html

この記事で言及する地域分類は以下の通り(若干実際と違うが、文部科学省の分類も考慮して近似分類としておく)。

「北海道」は、北海道
「東北」は、青森、岩手、宮城、秋田
「北関東」は、山形、福島、茨城、栃木、群馬
「南関東」は、埼玉、千葉、東京、神奈川
「北陸・上信越」は、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野
「東海・中部」は、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀
「関西」は、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山
「中国」は、鳥取、島根、岡山、広島、山口
「四国」は、徳島、香川、愛媛、高知
「九州」は、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島
「沖縄」は、沖縄

今回は、入学者の推移と学校数の推移に絞って報告したい。

背景の経緯として以下のことを念頭に入れておかなければならない。

●18才人口(前者)と専門学校進学者数(後者)
2005年度1,365,804(前年度減少差44,875) 326,593 進学率23.9%
2006年度1,325,722(前年度減少差40,082) 300,834 進学率22.7%
2007年度1,299,571(前年度減少差26,151) 282,019 進学率21.7%
2008年度1,237,294(前年度減少差62,277) 254,749 進学率20.6%
2009年度1,212,499(前年度減少差24,795) 247,842 進学率20.4%

※2005年度が対18才人口進学率 23.9%で、専門学校進学率のピーク。これ以後、専門学校進学率は徐々に減少している。
なお、専門学校進学者数のピークは、92年の364,687。92年ピークの364,687から09年度247,842まで32%(116,845)減少している。
18才人口も92年がピークで2,049,471。そこから連続的に減少して09年度は1,212,499。約41%減少している。
同じ時期の専門学校の減少は32%だから、9%分は経営努力があると見るべきか。
ただし大学の進学者は、92年度ピーク時は541,604。今年の09年度は608,730だから91年対比で112%。18才人口が41%も減少しているのに、実数で12%増加している。

さて、専門学校入学者については、2008年度254,749から2009年度247,842。60,907人の減少。前年比3%減。

入学者数も進学率も下げ率が減少しているが、18歳人口の減少率が低いだけと考えた方がいい。

進学率ピーク時の05年からは(05年から09年の4年間で)、326,593→247,842となり、約26%下げている(上記背景数値を参照のこと)。

これらの背景数値を前提に、今年の数値を、前年度比(08年度比)、三年前比(06年度比)、専門学校進学率が18才人口比でピークとなった05年度比の三つの指標から見ていこう。

前年比でもっとも下げ率が大きいのは、徳島。20%以上下げている(1,073→857)。四国で初めて三桁台の入学者数に落ちてきている。

ちなみに入学者数が3桁に減少している県は、鳥取の477、秋田の677、福井の710、山形の779、滋賀の767、島根の828、徳島の857、山梨の890、和歌山の989。

三桁台の入学者数という点では9県は同じ括りになるが、しかし和歌山は前年対比、3年前対比、05年ピーク時対比のどの時点からも入学者率は増えている(前年対比153.6%、3年前対比134.9%、05年ピーク時対比133.5%)。和歌山はむしろ1000名台を狙う勢いだ。

徳島が深刻なのは、今年初めて三桁台に(大幅に)落ちたということと、連続的に減少しているということだ。全国的に一番ひどい。

徳島は、05年の進学率ピーク時から言えば、1,279(05年)→857(09年)だから、33%減。3年前の06年からでも1,200→857だから28%減。

前年08年度比、三年前06年度比、ピーク時05年度比からの入学者率で三つとも連続的に10%以上、下げ続けてきているのは、徳島、岐阜、京都。

徳島は、09年入学者数857←1,073←1,200←1,279。
※右から順に05年、06年、08年以下同じ。
(前年比79.9%、06年度比71.4% 、05年度比67.0%)

岐阜は、09年入学者数1,432←1,675←1,815←2,064。
(入学者数1432 前年比85.5%、06年度比78.9%、05年度比69.4%)

京都は、09年入学者数5,235←5,870←7,541←7,650。
(入学者数5235 前年比89.2%、06年度比69.4%、05年度比68.4%)

岐阜も京都もきついが、徳島の下げがひどいのがよくわかる。

徳島は05年度比30%以上下げているにもかかわらず、学校数は05年度23校、09年度23校と変化がない。

岐阜は05年度43校→09年度37校。14%減。京都は、05年度66校→09年度64校。約3%減。岐阜は入学者が減少した分、学校数も減っている。京都もわずかだが減少している。

しかし徳島は学校数に変化がない。したがって、一校あたりの徳島の入学者数平均は、05年度56人だったのが、37人にまで落ち込んでいる(約34%減)。

同じく岐阜で、05年度48人→09年度39人、約19%減。京都で、05年度116人→82人、約30%減。この下げ幅も徳島が全国で一番だ。

そもそも高知とともに、同じ四国内でも7000人前後しかいない高校卒業生数で、学校の統廃合がなければ最悪数値になるのは当然だろう。

※最初にお断りしておくが、今回の「速報」では、専門学校単独の都道府県別学校数はデータとして上がっていない(全体数は出ているが)。
都道府県単位では「一般課程」、「高等課程」、「専門課程(専門学校)」をまとめた「専修学校数」しか学校基本調査「速報」では出ていない。
都道府県別の専門学校校数は「類型別学校数」というデータで毎年出てくることになっているが、「速報」ではまだカットされている。
ただし、09年の実績で言うと、全国で3350校ある専修学校の内、09年度専門課程を置く学校は、2931校ある(今回の評価年次で言えば05年2973校、06年2996校、08年2968校と推移している)。ほとんどの学校が専門課程を有している。
また09年度の入学者総数内訳でも一般課程33,434、高等課程16,466、専門課程247,842と総入学者数297,742の内、83.2%を専門学校入学者数が占めている。
今回の比較年度でも05年84.4%、06年84.0%、08年度83.2%と専修学校入学者全体に占める専門学校入学者の割合はほとんど変わっていない。
私が校単位の専門学校入学者数を出す場合には、専門学校入学者(「専門課程」入学者)のみを分子にして専修学校数(一般課程+高等課程+専門課程)を分母にしているためおおよそ5%~15%の範囲で数値が小さめにでることをご寛恕頂きたい。
たとえば、09年度の専修学校総入学生数(一般課程+高等課程+専門課程入学者総数)は297,742人。これを09年度専修学校数全体3,350で割ると88人となる。09年度の全国の専修学校の一校あたりの入学者数は88人。これを専門課程の入学者247,842のみに対して全集学校数3,350で割ると73人。誤差の広がりは、73人~88人の間で起こっていることになる。
「一校あたり100人しか入学者がいない」と私が今回のレポートで言う場合には、105~115名くらいが妥当な数値だと思われるが、これ以上学校基本調査「速報」の段階ではまともな数値が出せない。
念のため、08年度のデータで言うなら、たとえば北海道の場合、169/183(専門学校数/専修学校数全体)、06年度は171/184、05年度は170/185である。いずれも10%内外の誤差に留まっている。
私としては今年度決定版「学校基本調査」を待ちきれないので(苦笑)、このまま専修学校数=専門学校数という暫定的な数値で分析を進めたいと思う(今年の決定版が出た場合には再度レポートを書き換えたい)。このレポートで私が「学校数」に言及する場合は、すべて「専修学校数」のこと。お許し願いたい。

断らないまでも、これらの数値は一学年あたりの(諸科、諸コースを横断した)入学者数全体だから、大学に比べて専門学校経営がいかに脆弱かがわかる。最も学生が集まる東京でさえ、09年度入学生は一校あたり135人しかいない(東京の05年度は179人だから、約25%減)。

ちなみに一校あたり100人を超える入学者数を保っている地域は、北から、宮城121人(05年度比25%減)、東京135人(05年度比25%減)、大阪121人(05年度比25%減)の三つしかない。

奇妙なことに、この100名を超える三地域は進学率ピーク時(05年度)の校あたり学生数から共通して25%落としている。

この数値は、全国レベルでも決してよくはない。25%を超えて減っているのは、青森(約30%減)、千葉(約25%減)、新潟(約27%減)、京都(約30%減)、鳥取(約26%減)、香川(約26%減)の6地域しかない。

入学者100名を超える大規模校(入学者が100名を超えると「大規模」と言うのも問題があるが)のメリットもあまりなくなっていると言うべきか。

一校あたりの入学生平均が少ないのは、鳥取の20名(05年度比26%減)、奈良の24名(05年度比20%減)、青森の26名(05年度比30%減)、三重の26名(05年度比約7%減)、滋賀の28名(05年度比約28減)。鳥取の20人を最小数として、6県が20名台に留まっている(20名台の入学者でどうやって「学校」の体をなすというのか?)。

一方、前年比で大きく増やしているのは、先にも言及したように和歌山644→989の53%増。次には佐賀936→1,087の16%増。

和歌山を除けば、ピーク時05年度から落ち込みが少ないのは、長崎1,511→1,502で0.6%減に留まっている。長野3,123→2,928で6.2%減、愛媛2,204→2,061で6.5%減、島根890→828で7%減、岩手2,925→2,638で9.8%減。

進学率ピーク時減少率が10%以内に留まっているのは(和歌山を除いて)愛媛。ピーク時2,204→09年度2,061。05年度比93.5%→06年度比98.1%→前年比98.0%と減少度がなだらか(増えてはいないが)。

愛媛は四国内でも高校生卒業者数(新卒者)がダントツの地域。同じ四国でも高知(6,908人)、徳島(7,037)の80%増の卒業生(12,355人)が存在している。

前年を割っていない学校が多い地域は、「北陸・上信越地域」。新潟(98.4%)、山梨(95.2%)以外は、富山(107.0%)、石川(102.5%)、福井(102.0%)、長野(107.5%)とすべて100%を超えている。

「南関東」地域の入学者数は全滅。埼玉(95.9%)、東京(97.0%)、神奈川(97.3%)、千葉(97.8%)、と埼玉を筆頭にすべて前年割れ。

全滅地域は全国で「南関東」だけ。首都圏地域は苦しい。

東京は今回はじめて専門学校進学率が10%を切って9.8%となった。

昨年度は11.1%だったから一年で12%下げている。きつい下げだがそれにしては入学者前年比3%減にとどまっている。

ただし、東京は進学率ピーク時05年からは26.2%下げており、埼玉(24.5%減)、千葉(24.6%減)、神奈川(20.5%減)のどの県よりも確実に大学進学率の大波を受けている。

ちなみに埼玉の昨年来の進学率は、16.3%→15.4%(約5.5%減)、神奈川は14.0%→13.5%(約4%減)、千葉は16.4%→15.0%(約8.5%減)。※進学率についてはまた別のレポートに譲りたい。

さて、05年進学率ピーク時からの減少率が一番きついのは、福井の約35%減(1,085→710名)、徳島の33%減(1,279→857名)、宮城の32%減(11,432→7,773名)、京都の31.6%減(7,650→5,235名)、岐阜の30.6%減(2,064→1,432名)。4年間(2005年→2009年)で30%を超えて下げている県が5県ある。

これらの県の同期間の学校数減は、福井の約20%減(26→21校)、徳島は減少なし(23→23校)、宮城の約10%減(71→64校)、京都の約3%減(66→64校)、岐阜の約14%減(43→37校)。

同じく一校あたりの入学者数は、福井の約20%減(42→34名)、徳島は約34%減(56→37名)、宮城の約25%減(161→121名)、京都の約30%減(116→82名)、岐阜の約19%減(48→39名)。

今度は鳥瞰してみよう。

過年度を含む総入学者が1000名を割る地域は、北から
※括弧内はすべて05年進学率ピーク時からの減少度
※続く数値は09年度3月高校卒業生数
※続く数値は09年度3月高校卒業生の内専門学校へ進学した生徒数
※続く括弧内の数値は09年度3月高校卒業生の専門学校進学率
※単位はすべて人。

秋田677(74.5%)  10,035  1,663(16.6%)
山形779(85%)   11,622  2,100(18.1%)
福井710(65.4%)  7,769  1,050(13.5%)
山梨890(84.3%)  8,662   1,340(15.5%)
滋賀767(87.4%)   12,369  1,680(13.6%)
和歌山989(133.5%)   9,754   1,569(16.1%)
鳥取477(77.1%)   5,752   1,009(17.5%)
島根828(93.0%)   6,852   1,375(20.1%)
徳島857(67.0%)   7,037   1,044(14.8%)
の9地域。

入学者が1000名~2000名の地域は、北から、

青森1003(74.5%)   13,426   1,967(14.7%)
富山1,311(81.5%)   8.986  1,408(15.7%)
石川1,834(77.3%)   10,249   1,263(12.3%)
岐阜1,432(69.4%)   18.623   2,209(11.9%)
三重1,191(86.1%)   16,497   2,085(12.6%)
奈良1,010(80.5%)   12,123  1,428(11.8%)
山口1,380(80.6%)   11,763  1,897(16.1%)
香川1,466(82.2%)   8,596   1,409(16.4%)
高知1,427(77.8%)   6,908   1,663(24.1%)
佐賀1,087(82.2%)   9,017   1,240(13.8%)
長崎1,502(99.4%)  14,465  2,297(15.9%)
大分1,603(77.1%)  10,969   1,784(16.3%)
宮崎1,616(76.3%)  11,018   1,858(16.9%)
の13地域。

入学者が2000名~3000名の地域は、北から

岩手2,638(90.2%)   13,280  2,472(18.6%)
福島2,131(81.1%)   20,214   3,492(17.3%)
茨城2,763(79.9%)   26,234   3,949(15.1%)
長野2,928(93.8%)   19,310   3,961(20.5%)
愛媛2,061(93.5%)   12,355   2,047(16.6%)
熊本2,932(89.7%)  16,801  2,899(17.3%)
の6地域。

入学者が3000名~5000名の地域は、北から

栃木3,176(73.2%)  18,684  2,768(14.8%)
群馬3,574(77.2%)  17,018   2,968(17.4%)
静岡4,510(77.5%)   32,809  4,912(15.0%)
岡山3,644(83.4%)  17,637   2,534(14.4%)
広島4,702(70.5%)  23,908  2,994(12.5%)
鹿児島3,008(83.2%)  17,586   3,212(18.3%)
沖縄3,952(84.4%)  14,792   3,590(24.3%)
の7地域。

入学者が5000名~10000名の地域は、北から

宮城7,773(68.0%)   21,037   2,929(13.9%)
埼玉6,548(75.5%)   53,140   8,178(15.4%)
千葉6,069(75.4%)   45,983   6,917(15.0%)
神奈川8,632(79.5%)  59,023   7,941(13.5%)
新潟6,303(76.0%)   21,701  4,908(22.6%)
京都5,235(68.4%)   22,446  2,681(11.9%)
兵庫6,523(79.2%)   45,481   5,710(12.6%)
の7地域。

入学者が10000名を超える地域は、北から

北海道13,353(81.6%)   47,303  9,530(20.1%)
東京60,702(73.8%)  96,165   9,459(9.8%)
愛知15,786(75.3%)   58,822  6,391(10.9%)
大阪28,815(71.0%)   66,940   8,384(12.5%)
福岡15,248(73.4%)  42,166   6,011(14.3%)
の5地域。

気の早い読者は、これらの数値で整合の取れない数値があることに気付くはず。

たとえば、秋田は県内の専門学校の入学者総数(新卒者以外の過年度生含めた総入学者数)が677名しか存在していないにもかかわらず、県内の新卒高校生は1,663名も専門学校に進学している。実に総入学者の245.6%もの高校生が専門学校に進学している。

この数値の差は何か、と。

別の言い方もできる。県内高校生の専門学校進学率と専門学校入学者の多少は、この分類で明確な相関がない。だからこそ、245.6%というようなわけのわからない数値が出てくる。さて秋田では何が起こっているのか?

もちろん答えは簡単なこと。県内の高校生は県外の専門学校へ進学したと理解すべきだろう。「245.6%」という数値(県内専門学校進学者数÷入学者総数)をとりあえず「県外脱出率」と呼ぶとすれば(※)、その脱出率ワースト10は以下の地域(※)。47都道府県中27の地域が県外脱出者の存在する地域。
※もちろん厳密には秋田県の「県外脱出率」は245.6%以上である。入学者総数はすべて新卒者ではなく過年度生も含まれているから。
※県名の後の校数は09年度の県内専修学校数(専門学校数は、このうちの85%~90%前後)。続く数値が「県外脱出率」。括弧内は(県内高校生の県内外専門学校進学数÷県内専門学校の過年度生を含む総入学生数)を意味する。ただし、分母の「県内専門学校の過年度含む総入学生数」の内には、県外の新卒入学生が含まれているし、分子の新卒者数にも県外の専門学校に進学した生徒数が含まれている。したがって、県内同士の進学率、純粋な県内高校生の県内専門学校進学率ではない。あくまでも相対的な指標としていただきたい。「学校基本調査」ではこれが限界(苦笑)。

山形(22校) 269.6%(2,100/779)
秋田(27校) 245.6%(1,663/677)
滋賀(27校) 219%(1,680/767)
鳥取(24校) 211.5%(1,009/477)
青森(38校) 196.1%(1,967/1,003)
三重(45校) 175.1%(2,085/1,191)
島根(19校) 166.1%(1,375/828)
福島(54校) 163.9%(3,492/2,131)
和歌山(23校) 158.6%(1,569/989)
岐阜(37校) 154.3%(2,209/1,432)

※100%を超える「脱出」地域は他にも17地方ある。
長崎152.9%、山梨150.6%、福井147.9%、茨城142,9%、奈良141.4%、山口137.5%、長野135.3%、埼玉124.9%、徳島121.8%、高知116.5%、宮崎115.0%、佐賀114.1%、千葉114.0%、大分111.3%、静岡108.9%、富山107.4%、鹿児島106.8%。

これらの学校は、
1)地域に魅力的なコンテンツ(教育と就職実績)を提供できていない
2)地域に魅力的な企業がない
3)地域の高校に対する募集戦略、募集戦術に失敗している

さしあたり、この三つが原因だろうか。

逆に「県内外吸収率」(先の「県外脱出率」が100%を切った場合は「県内外吸収率」とさしあたり呼んでおこう)の高い地域はどこか? 

「県内外吸収率」ベスト10を上げてみる。

東京(449校) 15.6%(9,459/60,702)
大阪(239校) 29.1%(8,384/28,815)
宮城(64校) 37.7%(2,929/7,773)
福岡(178校) 39.4%(6,011/15,248)
愛知(183校) 40.5%(6,391/15,786)
京都(64校) 51.2%(2,681/5,235)
広島(85校) 63.7%(2,994/4,702)
石川(35校) 68.9%(1,263/1,834)
岡山(58校) 69.5%(2,534/3,644)
北海道(183校) 71.4%(9.530/13,353)
※表の見方。たとえば東京の高校の新卒卒業者は08年度3月で60,702人いるが、その内9,459人が東京都内外の専門学校に進学している。つまり東京都内の高校の新卒専門学校進学率は15.6%となる。9,459人の大半か一部を449校の都内専修学校が受け入れている。

これらの新卒吸収率の高い地域の専門学校は県外新卒者をも吸収していると言えるが、別の言い方で言えば、新卒依存率の低い学校、つまり過年度入学者の多い学校の地域とも言える。

先のデータを元に、地域の専門学校数(専修学校数)で、地域の専門学校新卒進学者数を割ってみよう。そうするとその地域の校あたりの最大地域内進学者数が出てくる(これはあくまでも最大値。実際は学校数の多い首都圏であっても県外の学校にも進学するだろうから、これよりも進学者数は下がる)。

東京/専門学校の校あたりの都内新卒最大入学者数 21人(9,459÷449校) 
大阪/専門学校の校あたりの府内新卒最大入学者数 35人
宮城/専門学校の校あたりの県内新卒最大入学者数 46人
福岡/専門学校の校あたりの県内新卒最大入学者数 34人
愛知/専門学校の校あたりの県内新卒最大入学者数 35人
京都/専門学校の校あたりの府内新卒最大入学者数 42人
広島/専門学校の校あたりの県内新卒最大入学者数 35人
石川/専門学校の校あたりの県内新卒最大入学者数 36人
岡山/専門学校の校あたりの県内新卒最大入学者数 44人
北海道/専門学校の校あたりの道内新卒最大入学者数 52人

※「専門学校の校あたり」とあるが、前半の注記で記したように正確には「専修学校全体の校あたり」。したがって専門学校単独の校あたりの入学者数は末尾の数値の5%~15%増くらいと考えてもらいたい。
※「最大(入学者数)」としたが、それはたとえば、東京」 の新卒進学者9,459人が必ずしも都内の専門学校に進学したわけではないからである。都内の新卒専門学校進学者9,459人が全員都内の専門学校に進学したと想定して、「最大」(進学者数)としている。
※進学率ピーク時の05年度の比較で言えば、東京34→21で37.2%減、大阪48→35で26.1%減、宮城72→46で36.3%、福岡49→34で30.8%減、愛知51→35で31.7%減、京都61→42で31.8%減、広島49→35で27.4%減、石川37→36で3.2%減、岡山59→44で26.2%減、北海道68→52で23.4%減となる。
全体平均では67(05年度)→47(09年度)となり約30%減。05年度の進学率ピーク時の専門学校総入学者数は、326,593人。09年度は、247,842人。また同じく05年度高校新卒卒業生数1,202,738→09年度新卒者1,063,327。
総入学生は約24%減、新卒高校生は約22%減だが、新卒入学比率は平均でも30%減とそれ以上に落ち込みが激しい。
ちなみに新卒比率の落ち込みワースト3の一番は、香川で81→50で37.8%の落ち込み。二番目が東京34→21で37.2%減。三番目は、青森82→52で36.6%減。

平均値で見ると過疎地の学校のような数値しか出てこない。しかも05年度比較で入学生総数の落ち込み以上に新卒入学者を30%近く減らしている(赤文字注記を参照のこと)。

これもまた専門学校が「専修学校(一般課程、高等課程、専門課程)」という入学資格の異なる学校群が混在した制度の中に留まり、「学校教育制度」(初等教育、中等教育、高等教育)の中に存在しない学校群であることから来ている(このことの問題については私はすでに言及している→http://www.ashida.info/blog/2009/08/post_371.html)。

ここから言えることは、専門学校は、結局、首都圏の学校群でさえ「県外脱出率」と私が名付けた「脱出」者によって逃げられているのではないかということだ。次回は進学率の推移から、この問題を見てみよう。

※なお、今回の数値は取り急ぎ手作業でそこかしこから数値を拾っているために(ただしすべて文部科学省「学校基本調査」からです)、間違いがあるかもしれません。読者諸氏で気付かれた方は是非教えてください。よろしくお願いします。これくらいのことを書くのにも5時間は息つく暇なくかかっているのですから、少しは協力してください(苦笑)。→「にほんブログ村」

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以下、ざっと読んで、(データの参照について)気づいた点です。些少の「協力」で申し訳ありません。

(1)「※県名の後の校数は09年度の県内専修学校数(専門学校数は、このうちの85%~90%前後)。続く数値が「県外脱出率」。括弧内は(県内高校生の県内外専門学校進学率÷県内専門学校の過年度生を含む総入学生数)を意味する。

山形(22校) 269.6%(2,100/779)
秋田(27校) 245.6%(1,663/677)・・・」

上記の箇所で、かっこ内の数値の説明(「県内高校生の県内外専門学校進学率」)は、「県内高校生の県内外専門学校進学者数」の誤りではないでしょうか。

(2)「「県内外吸収率」ベスト10を上げてみる。

東京(449校) 15.6%(9,459/60,702)
大阪(239校) 29.1%(8,384/28,815)
宮城(64校) 37.7%(2,929/7,773)・・・」

上記の箇所では、肝心な「県内外吸収率」もそれぞれ示していただけるとありがたいと思いました。

投稿者 通りすがりの閲覧者 : 2009年08月20日 11:32

ありがとうございます。単純な誤記です。早速直しておきました。

「吸収率」についてもいままだ分析を続けているところです。

今日も、この「学校基本調査」を使って、松山で研修会をやっていたところでした。明日もまた続けます。

詳細な分析は今しばらくお待ちください。これからもデータ等の誤りについてどんどんご指摘ください。

すべて手作業でやっているので、意識朦朧状態です。必ず誤りがあると思います。それだけは自信があります(苦笑)。

投稿者 ashida : 2009年08月21日 01:30

おくればせながら。

「『南関東』地域の入学者数は全滅。埼玉(95.9%減)、東京(97.0%)、神奈川(97.3%)、千葉(97.8%)、と埼玉を筆頭にすべて前年割れ。」

「95.9%減」の「減」は不要なのでは。

以上です。

最新の記事も拝見させていただきます。

投稿者 通りすがりの閲覧者 : 2009年08月31日 15:01

いつもお騒がせして申し訳ありません。

謹んで訂正させていただきました。

投稿者 ashida : 2009年08月31日 23:53
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