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 ベータフェロン薬害調査結果が公式に新聞発表された ― 今頃発表されても… 2008年04月20日

ついにベータフェロン薬害についての厚労省の「全国緊急調査」結果が4月18日読売新聞で報告されました(http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080418-OYT8T00510.htm)。

全国977医療機関に緊急調査を実施。ベータフェロン「治療を受けた患者計308人のデータを分析したところ、37%に当たる114人が治療を中止していた」とのこと。

「日本神経治療学会と日本神経免疫学会は2004年、一時的に症状が悪化しても進行を抑える可能性があるので薬の使用を中止すべきではない、とする治療指針を作成したが、両学会はこの指針の見直しを始めた」と続けて読売新聞は書いている。この薬に群がっていた研究者達もやっと“事実”を認めざるを得なくなった、ということか。

私の家内は「一時的に症状が悪化しても進行を抑える可能性があるので薬の使用を中止すべきではない、とする治療指針」の犠牲になった1人。ここまでくるのに、4年もかかったということだ。複雑な思いです。

この薬(ベータフェロン)についての私の現在の理解は以下の通りです(ほとんどが今年2月来のPさんとのやりとりを整理したものです)。

1) ベータフェロン効能論の起源は、おそらく1981年のScience誌の論文に遡る。

2) 当時CMSはウイルス感染が「引き金」になるという議論があり、抗ウイルス効果を持つインターフェロンが注目された。

3) 線維芽細胞から抽出されたベータインターフェロンを(当時は当該物質は血液脳関門をほぼ通過せず体循環投与は効果が乏しいと考えられ)脳脊髄液中へ髄注することが考えられた。

4) 実際にMS患者に対するいわば人体実験をニューヨークの研究者がやってみたところ、再発抑制効果が出た。この論文を契機として、アルファインターフェロンやガンマインターフェロンも同じように人体実験され、ガンマに至っては相当の増悪を来す結果となり、この3者の中で最もベータが良いということで残っていった。

5) しかし実際には抗ウイルス効果は直接の関係性がないと後日指摘され、何らかの免疫調節作用かといわれるに至っている。

6) ベータフェロンはT細胞に対して何らかの修飾をする「免疫修飾能」があると推察されており(後だしジャンケンのように、当初からこの期待があったような説明が付け加えられているが、前述のように、きっかけは1981年のScience誌にあるように「抗ウイルス効果」を期待したものだった)、FDAに認可されたNatalizumabはこういったリンパ球が脳血管関門を越えられないようにする目的で、脳血管関門を通過するために必要なアルファ4インテグリンを阻害する抗体医薬として登場した。

7) こうした情況の中で(ベータフェロン=T細胞免疫修飾機能論の中で)、1996年7月にMayoの医師らが、Brain Pathology誌にMS病巣におけるオリゴの生き死にパターンにはバラエティがあることを指摘。その後2000年6月のAnnals of Neurology誌に同じMayoの医師らが、MSにおいて脱髄進行中の病巣を多数解析し、その分類を下記のように示した。

Type1=T細胞とマクロファージのみからなる炎症(=細胞性免疫)
Type2=免疫グロブリンと補体からなる炎症(=液性免疫)
Type3=オリゴの自発的死(アポトーシス)による脱髄が主体で免疫グロブリン・補体・髄鞘再生を認めないもの
Type4=オリゴの変性が主体で髄鞘再生を認めないもの

8) 上記の分類の結果、MSといえば細胞性免疫による自己免疫疾患(Type1)、と考えられていたところに、液性免疫(Type2)の関与が指摘され、さらに、そもそも免疫が主体ではく、オリゴが「被害者」とは言い切れない病態(Type3,4)が指摘された。

9) このような病態の差が、ベタフェロンの効果の差(効く人と効かない人の差)に繋がっているのではないかと考えられるようになった。

10) 実際、 2005年8月には同じMayoの医師らがLancet誌において、Type2(液性免疫)のMS患者では血漿交換が奏効することを報告している。アメリカでは(脳腫瘍との鑑別等を目的として)日本よりも気軽に脳生検を行うので、脳生検でType分けをすれば、MS治療の個別化ができるのではないかとすら言われていた。

11)ところが、2008年1月のAnnals of Neurology誌に、この1996年から連綿と続いた「MSにはバリエーションがある」という議論を全てひっくり返し、かつ「MSと言えば細胞性免疫である」という仮説をも覆す論文がオランダから投じられ、全ての脱髄進行中のMS病巣は、Type2(液性免疫が主体)である、と指摘された。

12) 2008年2月14日号の(世界一有名な医学誌である)New England Journal of Medicineに、MS患者を対象としたPhase2のリツキサン(日本ではリンパ腫で既に使われている抗体医薬)治験結果(1年間の観察期間)が報告された。2週間を空けてたった2回のリツキサン点滴をしただけだが、1年間の追跡で、投与群での再発は半減していたとのこと。

13)簡単に言うとリツキサンというのは、B細胞(免疫グロブリンを作る細胞)を殺す薬。つまり液性免疫を抑制し得る薬がMSにおいて再発減少に効果を出したということになる。Phase3が終わっていないので、未だ試験途中であり、長期効果を見たものではないが、脱髄MS病巣は全て Type2であるとする2008年1月の論文と併せて考えると、MSを細胞性免疫の疾患と考える論拠は乏しくなったと言えないこともない(ちなみに、NMOについては極小数例におけるリツキサンの試験投与の結果が2005年のNeurology誌に報告されているが、再発を抑制できるのではないかと報告されている)。

14)そもそもMSをType1~4を区分けしたのがMayoですが、気になるType2(液性免疫主体のMS)とNMOとの違いについて、NMOにおける免疫グロブリンと補体は主に血管周囲に沈着していたが、Type2のMS病巣では脱髄中の髄鞘のゴミやマクロファージ・オリゴの周囲でこれらを認めたと彼らは報告している。また、NMOにおいては脱髄が生じている炎症病巣と、脱髄はないが炎症だけの病巣があったことを指摘している。つまり NMOにおいては脱髄は副次的な反応かも知れない。

15)脱髄進行中のMS病巣が全てType2ならば、NMOとMSの「病理学的な区分け」では、どちらも液性免疫が主体的に関与するものの、NMOではその対象がアストロであり、MSではオリゴである、ということになる。NMOではアストロを介した副次的な脱髄が生じ、MSでは直接オリゴ・髄鞘をターゲットとした脱髄が生じるという仮説が考えられる。

16)その意味でベータフェロンはNMO(液性免疫)には効かないかも知れないが、MS(細胞性免疫)には効くという議論ももはや成り立たないのではないか。

17)MSはMS、NMOはNMO、あるいはMS→細胞性免疫→T細胞性免疫疾患→ベータフェロン有効というのは、EBM(Evidence-based medicine)の立場からも怪しいのではないか。。

18)ベータフェロンEBM主義の元になった2005年2月の日本人治験論文(Neurology誌)もたった205名の治験。とても統計的な有意性はありえない(論文の前置き自体にそう書いてある)。そもそも1年間でも何回も再発する人や、10年単位でも再発しない人がいるMSに対する有効性を、しかも30%前後の有効性という結論でもってどれほどのEBMになるのか、私にはまったくわからない。

以上がPさんとの議論(http://www.ashida.info/blog/2008/03/post_277.html#more)で整理された私の認識です。ベータフェロンは害にならない限り(=体調が悪くならない限り)はやってもいい。無理をしてやる必要はない。つまり普通の免疫抑制剤の適否と同じように扱えばいい。特に特権的な薬ではないということです。その程度のものではないでしょうか。NMOかMSかの問題ではないような気がします。

※一方で、バイエル社はベータフェロンで売り上げを伸ばしているとのこと(http://www.japancorp.net/japan/Article.asp?Art_ID=43353&sec=18http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCDA8609.html)。日本の医療はどうなっているのか。

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感想欄

「再発を30%(20%)抑える」と言っても完全ではなく、少なくなったような(感じがする)という全くはっきりしない成果、MSと診断されて、予防にと、すぐ使用して再発が無いから効いていると言っても本来何もしなくても再発しないタイプだったのかも分からない。

何度も再発していた人が、極端に減ったのなら納得いくが、30%の効能も悪化した人が何%かいたら差し引くべきだ。差し引いただけではとても済むべきものでもない。当事者にとっては、取り返しのつかない多大なダメージを与えてしまったのだから…。既存の薬品で病気によっては適応になっていて、似たような疾患の薬品を試す議論は無かったのか? 

前述で、芦田さんの奥様が始めて治療された、免疫グロブリンが利用できるギランバレー症候群などはこのMSと似た症状が多い。素人の意見ですが、何でこのベタフェロンだけを、他に道はないような言い方で、患者に薦めてきたのでしょうか?

それにしても977機関から307件の解答とは…。ベタ使用者は3000人くらいと聞いているのに…。2005年の200人くらいの治験結果でOKの決定にも驚きましたが、ベタが効いていて再発防げたという方は続ければいいし、使うか使わないか考えている方はこの数字をよく考えてみるべきだと思います。

それより、既存の薬品で、ベタより自己注射という負担や害が少ない薬がない事もなさそうなので、早く探して認可してほしいものです。そのほうが国の負担も患者の苦痛も減ります。

日本にも沢山の薬を販売している会社があるのだから,治療薬はB社の製品しかないという思い込みは修正したほうが良いのではないでしょうか?

この病気の治療法の項目の欄に、再発予防薬としてベタを紹介する患者団体サンは、今回の結果や副作用を、もっと正直に記載するべきです。今まで読んだベタの注意書きは、「しばらくすれば(ベタに)慣れる」など、割と(ベタが)手軽なもののように記載されていました。そして「問題があれば主治医と相談しろ」という程度のものでした。

投稿者 匿名 : 2008年04月21日 12:45

※ミクシィ(MIXI)の同一記事のコメントの転載

>Dさん 2008年04月21日 13:50
いつも長くて難しいコメントご苦労様です。私は先週担当医に相談したところ、稀だがβフェロンが体に合ってるとの判断で、これからもしばらく続けることにしました。七年間再発も後遺症もないので。アボネックスに関しては危険と判断。FTYの治験は期待できるがプラセボに当たった場合のリスクを考え、実用化されるまで待つようにとのことでした。私も全く同感でしたので従います。主治医の意見を主体に考えようと思います。長い付き合いなので一番理解してもらってると思います。。βフェロンのトピ立てされてる方他にもいますよ

>Kさんカドリヤ  2008年04月21日 19:34

いつも大変勉強になっています。

ベタフェロンをはじめて約四ヶ月の母は、副作用が強く出ています。今月の頭にやめるつもりでしたが、ある程度時間が経過すれば副作用は減ることもあると聞き、もう少し続けてみようと考えています。

副作用が減らなければやめたいのですが、あと何ヶ月ぐらい様子を見て判断すべきなのかと悩みます。

今の時点でいい効果は見られず副作用が強いなら、彼女には合わないと判断していいのですかね?


●私の返信 2008年04月21日 21:46

>Dさんへ

現在のMS治療で重要なのは、ベータフェロンが効くか効かないか、それとも別の新薬か治験かなどはどうでもいいことであって、まずは「抗AQP4抗体」検査を受けることが先決。私はそう思います。

私の家内も昨年1月にこの抗体検査結果が出るまでは、まともな治療方針が全く立ちませんでした。私の家内の担当医は、誰でもが知っているMSの「専門医」です。そうであってもなかなか治療方針が確定しないのですから、後は推して知るべしです。

「抗AQP4抗体」検査なしには、ベータフェロン投与(=アボネックス投与)の是非はほとんど意味がない。私はそう思います(もちろん副作用もないし、投与をはじめてから再発が止まった、というのならそれでいいわけですが)。

特にOSMS(視神経脊髄型=日本型MS)と言われている患者の場合は、「抗AQP4抗体」抗体検査も受けないでベータフェロン投与が正しいかどうかなど誰も判断できません。

今回の厚労省の調査でも抗AQP4抗体「陽性」患者17人中14人、なんと80%を超えるMS患者がベータフェロン投与を中止していたのですから、ベータフェロン投与の可否は、「抗AQP4抗体」検査(陽性かどうか)が最低の基準(目安)になるはずです。

たぶん視神経脊髄型と言われているMS患者の半分くらいは、ベータフェロン投与に慎重であった方がいい。

この話を私は昨年2月から盛んにやっているのに、いまだにその話に触れないで、ベータフェロンは効きますか、副作用はどうですか、アボネックスはどうですか、などの2年前、4年前のトークが続いている。私には全く理解できない。

脳内を中心にあちこちにところかまわず炎症が起こるCMS(従来型MS=ヨーロッパ型)ならいざしらず、視神経、脊髄に集中して炎症が起こる人はまずは「抗AQP4抗体」検査を受けないと治療方針など立つわけがない。未だにこの検査を薦めない医者はすべて「MS専門医」ではない、と思った方がいい。

医師との「長い付き合い」が重要なのではなくて、治療と研究の歴史的段階が「抗AQP4抗体」検査だということです。

もう少し言えば、ベータフェロン(アボネックス)投与は、ステロイドを減らしていくことと並行して進める場合が多い。「ベータフェロンの効き目を期待するには、ステロイドを全面的に止めないとダメ」などと医師に言われて。しかも「ステロイドは副作用が怖いし、予防効果はないから」などと言われて。

そうしてステロイドが1日20ミリを切り始めると症状が不安定になって、再発する。こんなことを繰り返している「MS患者」が数年前からたくさんいたわけです。

しかし現場の医師には、「ステロイドは予防効果はない」と周囲に言われながらも、実際には再発抑止効果があるのではないか、と感覚的には認識していた医師もいた。特に従来「視神経脊髄型」と言われてきたMS患者の一部(あるいはかなりの部分)にはステロイドの予防効果が認められる事例がたくさんあった。

その事例と現場の医師の実感を裏付けたのが「抗AQP4抗体」陽性事例です。厚労省自体が昨年からそのことを言い出しはじめているわけです。

だから現代に於ける(ここ2年くらいの)すべてのMS治療の前提は、「抗AQP4抗体」検査です。「抗AQP4抗体」陽性患者に今さらベータフェロンを薦める医者はいません。

「βフェロンのトピ立てられてる方、他にもいますよ」とあなたは言いますが、そんなことはわかっています。私が言いたいのは大新聞の中でも「讀賣新聞」医療班だけが勇気を持ってベータフェロン薬害報道を行っているのに、その経緯の中で「βフェロンのトピ立てられてる方」がいないのはなぜ? と私は言っているのです。


>Kさんへの芦田の返信

ぜひ、「抗AQP4抗体」検査を受けてみて下さい。「ある程度時間が経過すれば副作用は減ることもある」というのは従来のベータフェロン薬災の典型的な事例です。現に私の家内もそう言われ続けて再発を繰り返し、寝たきり寸前になりました。

「日本神経治療学会と日本神経免疫学会は2004年、一時的に症状が悪化しても進行を抑える可能性があるので薬の使用を中止すべきではない、とする治療指針を作成したが、両学会はこの指針の見直しを始めた」と今回の讀賣の記事は伝えています。無理をしないということです。無理をする価値もないということです。それでもベータフェロンにかけてみたいと思うのなら、「抗AQP4抗体」陰性をまず確認すべきです。


>Lさん 2008年04月21日 22:04

芦田さんの書かれているブログ・記事は私にとって非常に有益であり、いつも主治医と議論する際にも参考にさせていただいています。

おっしゃるとおり、「抗AQP4抗体」の検査は必須と私も思います。「MSだから」「疑いが強いから」といった曖昧な結果だけで、ベタフェロン (アボネックス)は危険と思います。うちも、「抗AQP4抗体」の結果が出るまではがんとして受け入れませんでした。担当していただいている主治医ととことんまで話して踏み切りました。今でもそれがよかったかの確信は持てません。

>Lさんへの芦田の返信 2008年04月21日 22:30

そうですね。私はベータフェロンを止めろと言っているのではありません。ベータフェロンは効くかどうかという意味では(どんな難病の薬でもそうであるように)、「やってみないとわからない」。

そうではなくて、せっかくここ数年「抗AQP4抗体」検査という貴重な「マーカー」検査が出てきたのだから、それを利用しない手はないと言っているのです。

陽性なら要注意、ということです。

結局、ステロイド投与をどう考えるのかと密接に関係しています。ベータフェロン投与を信じて疑わない医師はステロイドを嫌う人が多いからです。NMO(あるいは視神経脊髄型のある部分)の場合には、このステロイドの低減のさせ方で再発頻度がかなり変わってきます。相性の合う免疫抑制剤が見つかればいいのですが、そう簡単に見つからない場合は、1日20ミリ以上のステロイドに頼らざるを得ません。

これが視神経脊髄型(のある部分)、あるいはNMO患者のつらいところではないでしょうか。ベータフェロンから逃れられたとしても、この病気には乗り越えなければならない関門がいくつもあります。らいにゃんさんもぜひ納得のいく治療を受けて下さい。自分の身体の反応に忠実であれ! そう思います。


>Lさん 2008年04月22日 11:02
ありがとうございます。
私も家内の治療はきちんと納得がいくようにしてもらうことが重要と考えています。また情報交換させてください。ブログも楽しみにしていますので。


>Sさん 2008年04月30日 16:10

はじめまして。
私は昨年9月に急に歩きにくい・字を書くのに筆圧がかからない等の症状で神経内科を受診し、MSの疑いが強いとの診断されて10日間の入院・ステロイドの点滴を受けました。

そして今年の2月に再発し、今度は座った状態から1人ではろくに立ち上がれないような状態でした。
地元の病院からセカンドオピニオンで隣県の病院を紹介され、そちらに移って入院し、アボネックスをしきりに薦められました。
視覚に障害が出ていない貴方は欧米型の可能性が高いです。きっとアボネックスが効きますよ、と言われて今現在も週に1度の注射を続けています。

抗AQP4抗体に関する検査についてはこのコミュで初めて知りました…私が通っている病院は神経内科について新薬の開発などに積極的で、MSに関してもHPがあるほどだったので、ここの先生の言うことを聞いていれば間違いないと思っていました。その病院のHPや、多発性硬化症でヒットするサイトなどはいくつも読んできましたが・・・

やはりその抗AQP4抗体の検査というのを受けるべきのようですね;今度主治医に相談してみようと思います…。


>Mさん 2008年04月30日 17:17
私は昨年十月に発症その時からアクアポリンだったかなこれが陽性で陽性の人はアボを使うと悪化すると言う事が知られてきたから使えないと言われたので治療はステロイドのみです。未だにこの検査を受けずに使っておられる方がいらっしゃるなんて知りませんでしたexclamationこれを少しでも知っている人が増えたらいいですね。


>芦田の返信 2008年04月30日 18:54
そうですね。このコミュニティの別のトピやコメントを読んでいても、抗AQP4抗体検査を受けないままに、ベータフェロンは効きますか、ステロイドは効きますか、などと聞いている人がいる。回答者の方も、私は効いた、効かない、人それぞれ、なんて答え方になっている。その中で、抗体検査を受けましたか、と聞く人はほとんどいない(私の知る限り1人もいない)。

とにもかくにも抗体検査をまず受けることが先決、と私は思います。「MSの疑いあり」と言われたら、炎症が脳にあろうがどこにあろうが、まずは抗AQP4抗体検査。

そもそもMSは病名ではない。症状を名付けただけのいい加減なもの。「症状」とは「時間的・空間的多発性」「中枢神経系の脱髄」。この二つです。

これは古典的なPoserの診断基準(1983年)でも、MRIを用いるようになってからのMcDonald基準(2001年)と言われるものでも本質的に変わりはありません(http://www.med.kyushu-u.ac.jp/neuro/ippan-kyouzai/ms-siryou.html)。

最近騒がれているNMOの改訂診断基準(2006年)も、

1)視神経炎があること
2)急性脊髄炎があること
3)次の3つの支持項目のうち最低2つを満たすもの
   ①MRI上、3椎体長以上に及ぶ脊髄の連続病変がある
   ②MRI上、MSの診断基準に合致しない脳病変がある
   ③血清中NMO-IgGが陽性

この3つ【全て】を満たすものがNMOと見なされるわけですから、特にMcDonald基準と異なるわけではないでしょう。「時間的・空間的多発性」「中枢神経系の脱髄」という点では同じ「病気」(=症状)なのです。

この基準で言うのなら、「MS」も「NMO」もましてやCMS(従来型MS)もOSMS(視神経脊髄型MS)もすべて「MS」です。

それでも「分類」をしたがるのは、病名と治療薬とを対応させないと難病適応、保険適用ができないという“現実的な”問題があるからです。

しかしそれは症状を分類しているのであって、病気を分類しているわけではない。簡単に言うと「38度以上の高熱を〈風邪〉とする」といったような分類な訳です。では37.8度は〈風邪〉ではないのか、ということになると何の根拠もない。そもそも風邪自体が症状の総称であるために、熱を分類基準などにすることはできない。MSの“定義”もそんな程度のものにすぎない。

NMOの抗体検査を受けたがらない人の中には、もし自分が「陽性」と判断されて、NMOと診断されたら、MSの難病指定から外され有料診療になるのではないかと心配する人がいるそうですが、それほどにこの分野の病名が科学的であるわけではない。現在のところMSもNMOもMSなのです。安心して抗体検査を受けるべきです。

あなたは「MS」です、あなたは「NMO」です、「CMS」です、「OSMS」です、と診断されたとしても、そのことによって何かがわかったわけではない。中枢神経の炎症箇所がいくつかあり、炎症が進行したり、再発も何回か起こっていれば、すべてMS。症状からしか判断ができないから、MS (CMS、OSMS)とNMOとを原理的に区別などできない。NMO-IgGが陽性というのは、NMO診断にとって必要条件ですらありません(上記の診断基準参照のこと)。陽性でもNMOでない人がいるということです。何が何だかわからないのがこのMSという病気。

再発寛解型、進行型という分類も実体的には何の根拠もない。病気が進行しない再発はMSには存在しない。すべては進行型と言っても良い。そもそも進行がないなら「難病」とは言えないのだから、両者は進行の亜型にすぎない。両者は患者の症状(進行)の変化を結果論的に分類したものにすぎない。したがって、この分類も病名や治療法の特定に何の関係もない。

だから、ベータフェロンかステロイドか免疫抑制剤か、寛解型か進行型かと気にかける前に、とにもかくにも抗体検査を受けることが必要だと思います。

陽性の場合には、ベータフェロンは(残念ながら)慎重になるしかない。「陰性」と判断された場合でも、視神経脊髄型(OSMS)と診断されている人は2回以上は検査を受けた方がいい(なかなか頼みづらいでしょうが)。検査の標準化ができていないため陽性でも陰性と判断される場合がある。

もう一つは、陽性の場合は、ステロイドが再発予防効果がある可能性がある。1日20㎜以下になってくると再発を繰り返している場合には、陽性の可能性が高い。

ここ数年の陽性患者の「科学的な」判定は、少なくともベータフェロン投与の是非については決着が付いたような気がします。何と言っても今回のように厚労省自身が(学会や製薬会社を敵に回してさえも)「注意」を促している。

何度も言いますが、この検査のもう一つの成果はステロイド投与の是非です。

ベータフェロンは、ステロイドと併用すると効き目がないと言われていますから、NMOが何だかわかっていない“普通の”医師はベータフェロンを投与しようとするとステロイドを止めようとする(あるいは徐々に減らそうとする)。そうなると症状が不安定になり、再発の可能性が高まる。

ベータフェロンが嫌いな医師でも、「ステロイドは悪」と思っている医師はたくさんいますから(それは間違いではない)、徐々に減らそうとする。そうしてやはり20㎜(日)を切り始めると、(陽性患者は特に)再発を繰り返すことになる。

しかし、NMO、あるいは陽性患者には、ステロイドは「予防」効果があると言われはじめている。たとえ、顔がまるまるとしたムーンフェイスになってもやり続ける価値はある。その間に自分に適した免疫抑制剤(イムラン、プログラフ、ネオーラル、リツキサン、免疫グロブリン、Campath-1Hなど)を見つけるしかない。

それくらいの治療方針は立つようになったというのが、抗AQP4抗体検査の意義だと思います。


>Aさん 2008年05月01日 03:31
私はベタフェロンを勧められたとき、MSキャビンの講習会で「ベタフェロンが効きにくいか効きやすいかわかる検査がある」と聞いていたので血液検査を受けて主治医からOKが出てから打ち始めました。先生からは検査の名前がでなかったのですが、今思えば抗AQP4抗体検査だったのですね!

前置きが長くなりましたが、「ステロイド治療をしたあとは3ヶ月ほど間をあけないと検査ができない」といわれたので一応報告してみます。前出だったらごめんなさい。


>Yさん
芦田さんの今回の書き込みで、ようやく色々な事が理解できてきました。
ありがとうございます。

皆さんが時々書いてらっしゃるように医師は専門用語を使わないで説明します。それは患者側が理解出来ないと思っているのか、私の主人の場合はMSの診断を遠ざける為かわかりませんが。

パルス治療でさえ、パルスという言葉もありませんでした。
最近、眼科の先生と話し『それはパルス以外のなにものでもないですね』と言われ、笑いました。入院時の病名が(病名とは言えませんけど)『多発性脳神経障害』で退院時は『両側外転神経麻痺』となって、顔の痺れとかは気のせいもあるように言われました。自分の症状なら私なら、そんな事言われたら一歩も譲りませんが、主人は医者任せに育ってきた(この地域の方は大方がそうです)のと知識もあまりなく(・_・;)私任せの病院のかかり方です。男性として情けないばかりですが、これも私の運命ですから仕方ありません(苦笑)。

先にも言いましたように、この地方の方は医師に意見を言いません。けど私は『多発性硬化症ではないですか』と言いました。その時に医師はむきになり否定されて、喧嘩になる所を堪えました。抗アクアポリン検査の事は週刊ポストに掲載された時に記事を送信していただいた方があり知っていましたが、医師にその言葉を出せば、治療中の主人に影響が出ては困りますので、ぐっと我慢しました。主治医との関係を私の発言で悪くは出来なかったです。私の感覚では当然の事を質問しているつもりですが、そういう患者さんは皆無な土地柄です。こうしてネットで調べてる方も少数と思われます。他の病気についても、医師の対応は時代から遅れすぎています。不便な地域に生息してしまったけれど、それなりに私の家族の病気には訪問看護師さんの能力が優れていたりというラッキーも重なって私がネット上からも支援いただいて、ほんとに理想の治療ができる事が多く、今回もこの地でそれなりに戦っていこうとしています。しかし、他の隣県の病院情報にも目を向けています。

芦田さんの資料提供で勉強させていただいている事が多々あり、これからも宜しくお願いします。


●芦田の返信 2008年05月01日 11:14

みなさん、お医者さんとの関係でご苦労されていますね。

「神経内科」の医者、研究者は「アルツハイマー、パーキンソン、頭痛、脳血管障害」などがほとんどで、「MSの専門家」なんてほとんどいない。専門の論文と最新の論文を読んでいる研究者は全くいないと言っても良い。そもそも医療の現場でそんな論文を読んでいる暇はない。厚労省の指示でやっと動くくらいのものです。

MS患者が一番多いであろう東京の大学病院でもいいかげんなものです。少し質問するとわけのわからないことを言い始める(病棟医は特にそうです)。わからないなら、「わからない」と言ってくれればいいのに。最後は「人それぞれだから」なんて言われて(苦笑)。

でも、医者には苦情はなかなか言えないものです。私は息子の保護者懇談会(あるいはPTA活動)には一切参加しませんでした。そもそも小学校、中学校、高校、大学時代、彼の学校へ行ったのは、入学式と卒業式くらい。先生達と会うと必ず喧嘩するだろうと予想が付いていたからです。同業者だからアラがよく見える。

でも子どもは親からすれば、人質みたいなものだから文句を言えない。悪く言われて、それでも子どもに向き合える「先生」なんてそんなにいないでしょう。PTAなんてほとんどの場合、教員の保護組織でしかない。病気の患者組織がそうであるように(『ロレンツォのオイル』を見るとそれがよくわかります)。

病気の場合も全く同じです。「先生」と言われる人との付き合いは難しい。「難病」の場合はなおさらです。

子どもの場合と同じように、家族か周辺の者が(最後は患者自身が)、自衛する以外に手はない。特にこの病気の場合はそうです。

私がこの病気に関心をもったのは、すべての先生がバラバラなことを言うからです。ベータフェロンについても最初の病院と今の病院とでは対応が全く違った。ステロイドに対する対応も違った。病気の診断さえも同じではなかった。こりゃおかしい、と思いました。

そこで出会った“事件”が2007年2月の「抗アクアポリン4抗体」検査結果陽性(私の家内は2006年12月に検査を受けました)。

「MSではなく、NMOです。デヴィック病とも言います。昔からある病気です。この病気の場合、ベータフェロンはかえって病気を悪くする」と言われたときにはショックでした(http://www.ashida.info/blog/2007/02/msnmo.html)。

この病名を私が聞いたのは、(恥ずかしながら)その時がはじめて。担当医からもはじめて。「昔からある」と言うのなら、なぜ「疑い」の一言さえも聞けなかったのか。それが私のその時の最大の疑問でした。

なぜ私の家内は、「NMO」と診断され、「ベータフェロンが病気をむしろ悪くする」と言われるために(本来の治療を受けるために)、2006年12月から2007年2月のこの時期になってしまったのか、それが私のその時の疑問。発病は2003年3月でしたから、ほぼ4年かかったわけです。

そこから始まったのが、私の“勉強”です。素人のために色々と紆余曲折がありますが、このコミュでの「パパ」さんとのやりとりは、その間の経緯の記録です。彼とのやりとりは私の疑問のほとんどを氷解させました。よろしければご参照下さい( http://www.ashida.info/blog/2008/03/post_277.html )。

最後になりましたが、ご家族の闘病が良い結果を出しますよう祈念します。

投稿者 ashida : 2008年05月02日 02:29

はじめまして。私はMS歴3年、46歳です。

奥様の体調はいかがでしょうか?

私は春先は必ず再発して、調子が悪くなるようです。

私は発症した時にベーターフェロン治療をしない選択をしました。わずか2年で治療方法も変わってしまった事に驚きを感じ、また今のステロイド治療(パルス治療を含む)も本当に正しいのか、最近疑問を感じ始めています。

子供を持つ親として、情けなくなる時もありますが、家族に支えられて生きていることを実感します。

これからも、この素晴らしいブログを参考にさせて頂きますので、よろしくお願いします。

投稿者 はる : 2008年05月21日 14:28
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