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 家内の症状報告(115) ― このブログでのやりとりの内容を認識している神経内科医はほとんどいない!?(MS患者のための、どの医師・医療選択基準10項目) 2008年03月08日

症状報告114番(http://www.ashida.info/blog/2008/03/_ms_1.html#more)では、これまでのPさんとの病理学的な研究史についてのやりとりを少し転回して、それらの治療現場での認識を尋ねてみました。結論は、私には絶望的なものでした(苦笑)。Pさんとのやりとりの出発点ともなった私の認識、「MSの専門家」なんていないんじゃないの?という認識はますます深まるばかりです。以下がその回答です。Pさん、ご苦労様です。

●芦田さん、おはようございます。(2008年03月06日 08:39)

>ますますNMO/MSは闇の中ですね。結局、免疫抑制そのものが意味がない、「抗体」そのものが髄鞘再生の鍵を握っているということなら、T細胞免疫論も液性免疫論もふっとんで、つまり自己免疫疾患という分類自体が意味をなさなくなって、通常の病気のように免疫力を高めることの方がはるかに有効、ということですね(芦田さんの発言)。

そうですね、良く読むとたいがいの心ある教科書には「原因不明だが、自己免疫機序が『推定』されている」と書いてあるのですが、「原因不明」と「推定」がすっ飛ばされている感じはあります。ただ、真の原因が分からないので、自己免疫疾患であることを完全に否定する根拠もありません。病態の中で免疫が動くことはどうも確からしいのですが、それが原因か結果か、善か悪かはまだ分からないというところです。

今のところ、病態で目立つ部分(炎症)にすべての責任を負わせている(それからかのEAEによる支持があるわけですが)。Mayoの、抗体による髄鞘再生は今でも「ありえない」と取り合わない人が居るくらいです。慶応大の発見も論文審査では2年以上に及ぶ想像を絶する嫌がらせがあったようですし(その割にトップジャーナルに載ってますが)。

「免疫力を高める」とはよく健康食品に登場する謳い文句ですが、具体性に欠けることが多いですね。MSにおいて有効な「免疫力」というのがどういうものか、今のところ(害になる部分を除いて、髄鞘再生に有効な)液性免疫なんだろうと思いますが、これも含めて、未だ結論は闇の中です。

もう一点、MSが「症候群」として診断されていることは忘れてはいけないと思います。単一疾患で単一原因であるとする論拠はないどころか、現状の診断基準の甘さからはその可能性はむしろ低いと思います。

>“放置症例”のようなものはないのでしょうか(芦田さんの発言)。

普通はないですね。「何もしない」ことほど医師にとって選択が難しいことはありません。これは進行癌での無意味な化学療法でも良く言われることですが。ただ、特にNMO/ADEM等では脊髄長軸方向に炎症が波及します。高位頚髄から脳幹に到達すると呼吸麻痺で死ぬことがあります(そういう事例は知っています)。ですから急性期に治療介入しないことは大きなリスクを抱えています。

また、NMOかしら?と診断に苦慮して治療介入しないで放置することで再発、後遺症がどんどん蓄積する事例もあります(これも知っています)。経験論的に、やはり「何もしない」というのはとてもリスクが高く、「倫理的に許されない」という判断には同意できます。

ただ、現在の医療の中で、本当の意味での「自然経過」を見ることは限られており、何がどう修飾されているか分からないというのは確かです。治療介入すればするほど真の病態が見えなくなってくる。病理報告で使われている剖検の脳だって、何らかの治療介入があった後ですし。

芦田さんの以下の10項目の知識の普及率についてはアンケートでも取らないと難しいですね(苦笑)。数字を出すと独り歩きしそうなので、勝手な印象を述べます(特に根拠はありません)。

※芦田・註 念のために言っておきますが、以下の質問の1)~7)までは、この間のPさんのやりとりであきらかになったように、疑わしい(ひょっとしたら間違っている)知見です。少なくとも治療のあてにはならない知見です(もっとも難病ですからあてになる治療などないのですが…)。しかし、1)から7)までの知見をもっともそうに語る医師、研究者はまゆつばものだと思った方がいい。

8)~10)の認識がある先生は勉強熱心な先生です。この10問は、この病気にかかった患者達が、医師を選ぶときのリトマス試験紙です。是非ご活用下さい。こういった10項目を私のような全くの素人でも書けるようになった(しかもたった一ヶ月足らずで)というのが、Pさんとのやりとりの最大の成果です。この病気で病院、医師選びに苦労している患者を(勝手に)代表してほんとうに感謝しています。

ただし、10項目の、Pさんの回答は、絶望的な感じがします。やはり医師選びは難しい…。Pさんも、なんと正直な方か…(苦笑)。


1)MS=T細胞免疫疾患と考えている先生の割合

A(神経内科医全体)…T細胞かどうかを気にしている医師は少ない。
B(MS専門医)…大多数。


2)MS=自己免疫疾患と考えている先生の割合

A…大多数。B…大多数。


3)MS=ベータフェロンが有効と考えている先生の割合

A…使ったことがなく特に印象もない医師が多い。B…比較的多い。


4)ステロイドは再発予防効果がないと考えている先生の割合

A…多いと思います。B…(NMOについては)少ないと思います。


5)抗AQP4抗体検査は一度検査すれば十分(陰性はどこまでも陰性)と考えている先生の割合

A…抗体検査そのものを知らない人のほうが多い。B…大多数(自分で同様の検査をやったことない医師は大半そう思っている)。


6)MS/NMOの区別は細胞性免疫と液性免疫との区別だと考えている先生の割合

A…NMO/OSMS/CMSの区別すら分からない人の方が多い。B…比較的多い(東北大の講演を聞いた人は特に)


7)NMOでは脳には炎症は出ないと考えている先生の割合

A…NMOってなに?という方が多いのでは。NMOを「聞いたことある」程度であれば、改訂診断基準(脳に出てもいい)は知らない人が多いと思います。B…少ないと思います。


8)2004年4月のオーストラリアの医師の発見(免疫反応不在でのオリゴの死の報告)を知っている先生の割合

A…まず知らない。B…少ない(MSの病理論文を読みこんでいる医師は少ない)


9)2008年1月の「MSはすべて液性免疫が主体」、CMSとも区別が付かないというMSバリエーション論の否定論文(Annals of Neurology誌)を知っている先生の割合

A…まず知らない。B…まだ読んでいない人が大半では?(病理論文はあまり読まれない)


10)慶應大学の最新の取組(FcRgをめぐる)を知っている先生の割合

A…まず知らない(慶応大の先生は基礎医学からのアプローチですから、臨床医は知らないでしょうね)。B…いくつか講演がありましたので、結構知っている人は増えてきたでしょうが、MS病態生理との連関にまで理解が進んでいるひとは、さて…?。

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投稿者 : ashida1670  /  この記事の訪問者数 :
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