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 家内の症状報告(128)― 免疫反応と関係なくオリゴが死ぬのはなぜか?(TIP30の新しい発見の意味は重要) 2008年12月28日

慶應大学グループのTIP30についての発見(http://www.ashida.info/blog/2008/12/opcnicdtip30.html#more)のフォロー記事をいくつかネットを駆け回って見つけました。特に7番目の権威あるJournal of Clinical Investigation誌の特集記事は重要。以下、まとめてみました。

1)読売新聞 12月23日(火)朝刊
『神経難病の原因たんぱく質発見』
手足のまひや失明を引き起こす難病「多発性硬化症」の原因となる、たんぱく質を慶応大医学部の研究チームが発見した。治療薬の開発につながる成果で、医学雑誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」電子版に23日、掲載される。

多発性硬化症は、脳や視神経にある神経線維を覆う膜がなくなり再生しない病気で、国内には1万人を超す患者がいる。この膜を作る細胞が壊れたままになっていることが病気の原因で、同大の中原仁・特別研究講師らは、この細胞が成長するきっかけとなるたんぱく質に着目。亡くなった患者10人の脳内にある未熟な細胞を調べた結果、この成長たんぱく質に、大量発生した「TIP30」と呼ばれる別のたんぱく質がくっついていることを突き止めた。

2)日経産業新聞 12月24日(水)
『神経再生に阻害分子 多発性硬化症治療に道 慶大が解明』
慶応大学の鈴木則宏教授らのグループは、神経の難病である多発性硬化症で、神経細胞が自ら再生しようとするのを妨げている仕組みを明らかにした。細胞で「TIP30」と呼ぶ分子が過剰に作られ、再生を促す信号が遺伝子に伝わるのを邪魔していることが分かった。この分子を除去すれば治療につながる可能性もあるという。

多発性硬化症は神経線維を包む鞘(さや)の部分が壊れていく病気で、二十‐三十歳代の女性に発症することが多い。神経機能が衰え、手足のまひや失明などが起きる。日本では約一万二千人の患者がいるとされる。

病気でない場合は、鞘を作る細胞が何かのきっかけに壊れても自らの修復力で復活していくことがわかっていた。修復の際には、刺激となる因子が鞘を作る前の細胞に働きかけて再生を促す。患者の細胞ではTIP30が過剰な状態で、刺激となる因子を核に入れないようにしていた。

TIP30を減らしたり、その機能を阻害する薬が作れれば、鞘の再生につながるとみており、今後は治療薬の開発に応用したい考え。

3)化学工業日報 12月24日(水)
『多発硬化症の原因分子TIP30特定 慶応大学』
慶応大医学部の研究グループが、神経の難病の多発硬化症の治療薬開発のカギとして期待されている髄鞘の自己再生が低下する原因として、病変部位で髄鞘再生を妨げるTIP30分子が過剰に発現しているためであることを世界で初めて特定した。原因分子とその分子機序が特定されたことによって、新たな髄鞘再生治療薬の開発に寄与する成果。

多発性硬化症は若年女性にみられるほか、世界で250万人、わが国でも1万2000人の患者が推定される神経難病。脳、脊髄、視神経などに病変が多発性に出現。四肢麻痺や失明などを含む多岐に渡る神経症状。神経機能を支える髄鞘が20歳代後半から30歳頃を起点に脳、脊髄、視神経などで多発的に崩壊し、神経機能に支障が出る。

4)CBニュース(オンライン) 12月26日(木)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081226-00000000-cbn-soci

5)Science Daily(オンライン・英語) 12月22日(月)
http://www.sciencedaily.com/releases/2008/12/081222221453.htm

6)Genetic Engineering and Biotechnology News(オンライン・英語) 12月23日
(火)
http://www.genengnews.com/news/bnitem.aspx?name=47541126

7)http://www.jci.org/articles/view/37786(Journal of ClinicalInvestigation)

最後に上げた、実験医学分野で世界二位の偏差値を誇るJournal of Clinical Investigation誌がこの発見の為に特集記事を組んだ意義は大きい。

権威ある雑誌がこのTIP30の特定をとりあげたということは、多発性硬化症=EAE・自己免疫疾患説を疑う傾向が学会の中で少しは出てきたと言える。

例えば、冒頭には
"MS is an inflammatory, demyelinating disease of the CNS that is thought to be mediated by an immune attack directed against oligodendrocytes andmyelin."
とあるが、敢えてautoimmune(自己免疫)等の単語を使わないところや、thought to beという言い方をするところが、何をかいわんやという感じ。

また、Potential role of TIP30 in MS pathogensisというセクションには

"Thus, these studies reported by Natkahara et al. (8) introduce a new player into the pathogenesis of MS, and it will be of considerable interest to determine whether TIP30 plays a role in the pathogenesis of animal models of demyelination/remyelination and, in particular, of EAE."

という部分がある。

彼ら(論文の評者)はdemyelinationにもTIP30が絡んでいるかも知れないとさりげなく指摘している。EAEでTIP30が絡んでいるかは興味があるとしているが、実は中原たちの論文のDiscussionの部分でEAEでは彼らが調べた範囲ではTIP30は発現してこないと記している。つまるところ、彼ら(論文の評者)もEAE(=自己免疫説)を否定している。MS=自己免疫疾患説に洗脳されていない研究者がまだ生き残っているということだ。

これを示すように、Future directionsというセクションには、
"Studies of appropriate animal models and more detailed analyses of MS lesions that do successfully remyelinate may help to address these issues."とあり、appropriate animal modelsとぼかしているが、EAEを否定している(と思われる)。

中原たちの研究は、脱髄の「原因」としてTIP30を特定しているわけではないが(論文は直接に自己免疫説を否定しているわけではない)、しかし中原たちの今回の論文の中にはこういった文言がある。

"Primary nonimmune-mediated apoptosis of oligodendrocytes is observed in newly formed MS lesions (49), and possible influences of TIP30 in this phenomenon should be further studied."

これは2004年にオーストラリアのグループが、超急性期のMS病巣では炎症は起きておらず、免疫反応不在のままオリゴが死んでいるという大変重要な報告がなされた(Annals of Neurology誌)ことと関係している。

つまり炎症は脱髄の「原因」ではなくて「結果」ではないのか。リンパ球とオリゴの因果関係、或いは 「加害者」「被害者」概念の逆転がありうるわけです。

そのオリゴが死ぬという現象がTIP30絡みであるかもしれないと中原たちの研究がさらに一歩も二歩も進めたわけです。「自己免疫」説でなくてもMSは成立することです。

NMOに於ける「抗AQP4抗体」によるアストロの炎症さえ、果たしてNMOの「原因」と言えるのか。それが極めて強い「マーカー」であるにせよ、「原因」とはまだ言えない。抗AQP4抗体価が上がればすべての患者が再発するというわけでもないからです。

そういったもろもろの疑念の出発点の研究が、この中原たちの研究だと私は思います。期待したいと思います。

(Version 1.0)

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投稿者 : ashida1670  /  この記事の訪問者数 :
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