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 家内の症状報告(93)― 日本の「NMO/MS専門家」の数 2008年02月15日

先の91番の記事(http://www.ashida.info/blog/2008/02/_msnmo.html#more)の第一番目の質問(NMO/MSの専門家は日本にどれくらいいるのか)に以下のような返答が早速返ってきました。ありがたいことです。

●2008年02月15日 00:37

…一日経過して頭がリセットされてしまいました。取り敢えず(1)のみ考察した結果を記しました…

(1)「NMO/MSの専門家」の数に関するご質問について、私なりの見解です。

芦田さんのご質問に対する回答は、小生が以前の議論で登場させた「NMO/MSの専門家」、即ち、日本国内の臨床医で

①CMS・OSMS・NMOの相互関係について理解があり、
②NMO-IgG(抗AQP4抗体)の意義を理解しており、
③実際に抗AQP4抗体の検査依頼をスムーズに行える、

というコンテクストでの「NMO/MSの専門家」の数、になると思います。正確な数を出すのは困難ですが、下記の通り試算します。ちなみに試算せずでの直観では数百人といったところです。

前提1)抗体検査を行っている3大学の医局員はさすがに知っているだろう
→東北大12名、新潟大19名、九州大19名で計60名
※実際には博士課程大学院生(医師)や出張中の医師や関連病院の医師も何かと勉強する機会があるであろうから、実数はこれ以上か?

前提2)抗体検査を行っていなくても免疫神経班の班員であれば、さすがに班会議で聞いているだろう
→追加34名

前提3)いずれにも該当しなくても、MS患者を外来で受け持っている、MSに興味がある、などの理由で勉強してUp-to-dateにしている人もいるだろう
→追加50名?

※日本ではMS研究者が一堂に会する(ヨーロッパでのECTRIMSのような)学会はありません。夏にあるMSワークショップが最大規模と思われます。上記前提1)2)のいずれにも該当しないが出席している医師が何人いるか…。10人じゃ少ないでしょうし、100人は居ないでしょう。50人くらいでしょうか。

単純合計すると144名。前提2)において、該当する班員が教授であると、その医局員も一部は聞いて知っているかもしれませんし、ルーチンに Brain誌を読んでいて独学自力で勉強した医師もいるかもしれませんので、結局、150人以上としても、さすがに500人はいないか、と考えます。

日本神経学会登録医師(神経内科医)は総数で9000人(全員が臨床医として活躍している訳ではないと思いますが)ですから、あながち的外れではない数値だと思います。

ちなみに、前述の3項目ではなく、「今まさにNMO/MS研究の先端に居て新しい知見を生み出している専門家」、ということになると全く様相は変わってきます。

例えば、国費を使うことが許されたNMO/MSの研究者として考えると、2006年度の神経内科領域の科研費において、多発性硬化症をキーワードとして検索し、弾き出されてくるのは、7件です(教授名義も多いので、実際にはその医局員が複数で実験しているとしても、せいぜい数十人でしょうか)。

自身の研究成果を世界に広げ、世界の最新知見を自身に還元するという視点で考えますと、2007年秋に開催されたECTRIMS(ヨーロッパで開催される世界最大のMSの国際会議)の発表演題約1000題において、日本からは19演題(会場での発表者は即ち19人)です。

現状はこういうところで、こと抗AQP4抗体については東北大等の本邦の専門家が世界に先駆けて動いている印象がありますが、それ以外の領域(新しい治療等も含む)については数値が示すところです。

取り急ぎここまでです。

ご感想は如何でしょうか。


●以下が、この返答に関する私の再質問(2008年02月15日 08:26)

私が聞きたかったのは、純粋な数ではなかったのですが、それでもとても勉強になります。ありがとうございます。

「感想」という点では、いくつかありますが、一番気になったのは、「NMO/MSの専門家」の“定義”に関するところで

①CMS・OSMS・NMOの相互関係について理解があり、
②NMO-IgG(抗AQP4抗体)の意義を理解しており、
③実際に抗AQP4抗体の検査依頼をスムーズに行える、

という3条件がありましたが、これに患者家族の私は少し不服です。それは私の2番目、3番目の質問に関わっていますが…。

私なら、この条件に、以下の二つを足したい。

一つには、この新しい抗体検査以前に、青山胤通の「急性脊髄炎に黒内障を併発したるものの一験」(1891年)という論文くらいは読まないまでも知っているかどうか。それと関連して(言い換えれば)、この2004年12月以前の段階(メイヨー+東北大学の発見以前の段階)で、「MS」患者と向かい合うときに「MS」とは異なる視神経脊髄炎の疑いを持てるかどうか。①の「相互関係」というのは、CMS・OSMS・NMOのカテゴリー上の関係のように思えます(カテゴリー上の関係にすぎない)。あなたが言われる中味を広く解釈すればいいのでしょうが、もう一歩進んだ条件が必要な気がします。

言い換えれば、あなたが、「一応、NMOの改訂診断基準(2006年)を書いておきます」と言ってあげられた、

1) 視神経炎があること

2)急性脊髄炎があること

3)次の3つの支持項目のうち最低2つを満たすもの
   ①MRI上、3椎体長以上に及ぶ脊髄の連続病変がある
   ②MRI上、MSの診断基準に合致しない脳病変がある
   ③血清中NMO-IgGが陽性

という条件の内、3)の③がわからない場合(まだ抗体検査が展開していない段階で)、「NMOの疑い」を患者に告げることが出来る医師はどれだけいるのか。この医師はあなたの言う「NMO/MSの専門家」の中に入るのか、入らないのか? そもそも「NMO/MSの専門家」とあなたの言う「専門家」は、いったい何年から誕生した専門家なのか?(2004年12月以後、それともそれ以前?)

もう一つの追加条件は、それと関わって、「検査以来をスムーズに行える」というあなたの言葉を借りるなら、「ベータフェロン投与の適否、あるいはステロイドの継続的服用の適否をスムーズに判断できる」という条件ではないのか。

というのも2007年9月7日に開催された「第6回東京MS研究会」(講演者は国立精神・神経センター山村隆、新潟大学・田中恵子、東北大学・藤原一男)の質疑応答でも以下のようなやりとりが未だに報告されているからです。

「質疑応答では、裏話も披露されました。MSにsteroidが聞くかどうかという話です。MSガイドラインでは、steroidは再発予防に無効であるとされています。このことについて、藤原先生(東北大学)は、ガイドラインでステロイドの項を担当したのは藤原先生達で、「一部の症例で有効である」という一文を入れていたらしいのですが、関西の○○大学の先生達がその一文を削除したというのです。当日は○○大学の伏せ字の部分を述べていましたが、ここでは伏せておきます。今になって考えると、NMOには効くのだから、その一文は残しておくべきでしたね。現在のところ、NMOには効くが、いわゆるMSには evidenceがないということになっています」(出典は伏せます:芦田)。

よく東大系(=東)はベータフェロンをあまり使わない、関西系(西)は使いたがる、と聞いたりもしますが、この傾向に抗えるかどうかも「NMO/MSの専門家」の条件ではないでしょうか。

もう少しお聞きしたいことがあるのですが、取りあえず、朝の段階ではここまで。いつもお忙しいでしょうに、大変感謝しております。症状報告91番から93番までのやりとりだけでも、多くの多発性硬化症、NMO患者にとって有益で質の高い情報が得られている、と確信します。(2008-02-15 08:27:25)


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●この問いかけに対する「P」さんの回答(2008年02月16日 04:32)


家内の症状報告(93)、拝読しました。

患者本人やその家族にとっての「NMO/MSの専門家」に求められる追記条件 ― 「2004年12月以前の段階(メイヨー+東北大学の発見以前の段階)で、「MS」患者と向かい合うときに「MS」とは異なる視神経脊髄炎の疑いを持てるかどうか」「ベータフェロン投与の適否、あるいはステロイドの継続的服用の適否をスムーズに判断できる」 ― については、よく理解できます。

「抗AQP4抗体検査の意義を理解している」とは、即ち、同抗体陽性例はCMS(古典的MS)と病態が違う可能性が高いということ(いわゆるMSではない可能性が高いということ)と、同抗体陽性例の治療方針はCMSと変わってくる(ベタフェロンを使用するべきでなく、ステロイドを主体とする免疫抑制を主眼にする必要が高くなるということ)ということをも理解しているものと同義と考え、使っておりました。

自明ながら、小生の記述する「NMO/MSの専門家」はその条件に入っているNMO-IgGが公表され、NMOの診断基準が改定されるに至った時期以降の、最近における専門家ということになります。

以降、小生の文脈上の定義はさておき、前のご質問への回答を内包する形でお答えします。

最初の追加条件に関して、ご指摘の1891年という古典的論文を取り寄せ呼んでいる医師は極めて少ないと思いますが、本質としては芦田さんが換言されているように、NMO-IgGという便利な物差しが発見される2004年12月以前に、日本でOS「MS」(=視神経型MS)と呼んでいるものは実は CMSと違う病態の疾患ではないか、免疫抑制が望ましいとされるNMOに類似の病態ではないか(診断としてNMOを考えるかどうかは、診断基準の変遷もあるので議論を避けます)と考える専門家がいたかというご質問かと思います。

実数はさておき、当時複数人のOS「MS」患者を診ていた医師で自身の治療経験を通じてそのように確信は無くとも感じていた医師は比較的多数いたと思います。

それが故に、かの日本でのベタフェロン治験結果(OS「MS」とCMSは治療反応性に明らかな差異を認めないという結果)が国内外に驚きを与えたわけだと思います。

推測するに、この治験結果にも拘わらず「そうは言っても、やはり違うのではないか」と感じたMayoのLennonや東北大の医師が、OS「MS」の患者の血清からNMOと共通のNMO-IgGを見つけるという研究に到達したのではないかと思います。

つまり、OS「MS」におけるNMO-IgGの検出という2004年12月の論文は、偶然の産物ではなく、OS「MS」がMSとは異なるのではないかと問い続けた医師が(少なくともMayoと東北大には)いたということの表れではなかろうかと感じます。

次の追加条件(=「ベータフェロン投与の適否、あるいはステロイドの継続的服用の適否をスムーズに判断できる」という「NMO/MSの専門家」についての芦田の追加条件:芦田註)と関連しますが、ではそのような「確信は無くとも感じていた」医師が2004年12月以前における上述の疑念を持った時に、実際の治療行為としてその「信念」に従ったか(ベタフェロンを使用せず、ステロイド等の免疫抑制剤を選択したか)と言えば、それは例外的で極めて少数派であったと思われます。

90年代後半以降は既に「Evidence-based medicine」という単語が重要視され、医師の経験や勘による治療は「Experience-based medicine」として忌み嫌われる状態にありました。現実問題として、ベタフェロン投与開始や経口ステロイド維持療法開始のきっかけは多くの場合、初発や再発時に入院した際に為されていると思います。

入院患者の治療方針を策定するのは、やはり白い巨塔での総意に沿った見解に基づき、経験豊富な特定個人の医師の信念で「大勢の常識」に反する治療方針を策定することは、その医師が教授や診療部長などの決定権をもつ位置の人間でなければ、困難だと考えます。

2004年12月以前とて、「MSにおけるステロイドは再発予防効果がなく、長期的神経予後も改善しない」というのは、国家試験の参考書に書いてある「常識的な」知識であり、OS「MS」と呼んでいた本邦においては、再発予防を目的とする経口ステロイドの維持療法は「常識的には」認められない選択肢であったのだろうと思います。

ただ、少数ながらその時期も含めて経口ステロイドなどの免疫抑制剤を今に至るまで飲んでいた、今考えれば幸いな患者もいると思います。それは多くの場合、パルスをして少しは効いたが未だ限定的な効果しか無くもう一度パルスをするまでではないから、今しばらく効果が十分にでるまでステロイドの後療法にて経過観察しましょう、と以降の治療を「信念を持つ」外来主治医に委ねられたケースや、ステロイドを漸減するとどうしても再増悪し、「信念」とは別に、やめたくてもやめられないという消極的な選択であったような例だと思います。

「信念を持つ」外来主治医であったとしても、今現在は安定しており再発はないような症例に対して、あなたの病気はOS「MS」(視神経型MS)と言われているが、 CMS(古典的MS)とは病態が違うものと思われるので、今から再発予防の為にベタフェロンではなくステロイドを飲んでください、と勧められる医者は殆どあるいは全くいなかったと思います。

更に、2005年2月においては、日本のベタフェロン治験結果により、「統計学的な確証はサンプル数が少ないためにない」という前置きはありながらも、事実上OS「MS」はCMSに治療反応性が類似するとのお墨付きを与えたわけで、より一層「信念」に従うのは困難になったと思います。(詳論はさけますが、視神経炎への経口ステロイドは再発を増加させるから推奨されない等の眼科領域での周辺話題もありました)。

結局のところ、「ステロイドを辞めると再発してしまう」という症例に当たり、それなりに「信念」を持つに至った医師が比較的居たものの、それを OS「MS」に広く展開する状況には無く、ステロイドを辞めても再発しなかったOS「MS」には、そんな医師もまたベタフェロンを選択したのではないでしょうか。

では、仮にベタフェロン投与開始したとしても、患者をよく見ていれば、ベタフェロンによって再発が増えたことに気づいて辞めても良かったのではないか、ベタフェロンが害になっている可能性をなぜ考えずに投与し続けたのかと指摘があるかも知れません。

多くの医師はベタフェロンには30%程度の再発抑制効果があり、或いは再発してもある程度症状を緩和する作用があると説明して投与開始していると思います。しかし、そもそも再発が予測できず年間再発回数にも大きなばらつきがあり、再発時の症状もまた不定であるMSにおいて、この効果は体感困難なところも多く、一種「信じる者は救われる」的な要素すらあるのかも知れません。ちょっとやそっと増悪しているとしても、投与していなかったらどうかという比較対照がないですし、たとえ何かおかしいと思っていても、極めつけにはやはり、2005年2月の治験結果を見て、思いすごしかな、ということになってしまう。

ここから先はやや脱線しますが、お許しください。

根本に戻りますが、ベタフェロンがなぜCMSにおいて再発抑制という効果を出すか、その機序は「不明」です。まずこのことをNMO/MS専門家は認識しておく必要があると思います。私の記憶が確かならば、きっかけは1981年の世界トップクラスの科学誌Science誌に掲載された論文ではなかったかと思います。

当時、CMSはウイルス感染によって発病という「引き金」が引かれるという論があり、機序不明ながらも抗ウイルス効果を持つインターフェロンが注目され、線維芽細胞から抽出されたベータインターフェロンを(当時は当該物質は血液脳関門をほぼ通過せず体循環投与は効果が乏しいと考えられ)脳脊髄液中へ髄注することが考えられました。

実際にMS患者に対するいわば人体実験をニューヨークの研究者がやってみたところ、再発抑制効果が出た。この論文を契機として、アルファインターフェロンやガンマインターフェロンも同じように人体実験され、ガンマに至っては相当の増悪を来す結果となり、この3者の中で最もベータが良いということで残っていった。

しかし実際には抗ウイルス効果は直接の関係性がないと後日指摘され、何らかの免疫調節作用かといわれるに至っています。博打のような人体実験にて得られた偶然に近い産物と言える。どのように効いているかを理論立てて説明できない薬剤を今日もまだ使っている、このこと自体はそれで恩恵を得ている人がいる以上悪いことだとは言いませんが、予測していない事態の出現には警戒する必要があるとは思うのです。

もっと根本では、再発予防の為の投薬というが、MSにおける再発というのが具体的にどういうことなのか、その病理は未解明です。つまり再発を予防しましょうと言ったときに、なにをどうやって予防するのかというアプローチがない。多くの患者や医師は盲目的に、炎症が脱髄のきっかけ、と感じていると思います。が、これは証明されていません。

2004年4月に衝撃的な論文がAnnals of Neurologyに出ました。不幸にも脳幹に脱髄が生じて数時間で亡くなった患者の脳を調べたところ、髄鞘を形成する細胞が死んでいる像とそれによる脱髄はあるが、T細胞浸潤等の炎症はなかったことを報告しています。

彼らは、ひょっとして髄鞘を作っている細胞が炎症とは別の原因で死んでしまい、炎症とは、あくまで二次的な反応なのではないか(炎症は原因ではなくて結果なのではないか?)と疑義を呈しました。

この後、ケンブリッジ大学の研究チームが立て続けにこの報告に支持的な実験データを提出しました。一連の動物実験の中で指摘されたのは、長い間脱髄している慢性的な病変に無理やり炎症を励起すると、髄鞘再生が開始されること(炎症は髄鞘再生の引き金を引く大事なファクター?)、逆に脱髄によって生じた髄鞘のゴミを投与すると髄鞘は再生できない(脱髄したまま炎症という「ゴミ処理班」を呼ばないで放置すると、その後再生できないのではないか?)、極めつけは、脱髄のピークでステロイド投与を行うと髄鞘を形成する細胞が死んでしまい、再生がむしろ遅延する(急性期の行うステロイドパルスは髄鞘の再生にマイナス?)ということでした。

ケンブリッジ大学の研究報告はいずれも動物実験ですが、これらの結果から、MSでの脱髄がもっと別の要因で生じていて、派手な症状を引き起こす炎症は、実は二次的に、或いは髄鞘を再生しようとする人体反応の必要悪として生じている、とも考えられなくはないのです。

この論に基づけば、真の再発抑制薬とは髄鞘を形成する細胞が死ぬのを止める薬、ということになります。

しかし、2008年1月には同じAnnals of Neurologyに、この衝撃的報告(髄鞘形成細胞の死滅現象)は確認できない、とする論文も出されています。

この2008年1月の論文では、それ以上に衝撃的な指摘があります。兼ねてから再発時のMS病理像には4パターンあるとされ(パターンによって治療法の選択が可能かもしれないと考えられていた)、他方で東北大もMayoもNMOの病理所見は免疫グロブリンと補体とマクロファージを中心とする液性免疫であると報告していました。

ところが 2008年1月この論文においては、MS再発時病理像はたった1パターンに集約され、その唯一のパターンとは、髄鞘に対して免疫グロブリン(抗体)と補体が結合し、マクロファージが集積している脱髄、つまり、液性免疫が主体であると。

即ち、ここに来て「NMOは液性免疫であるという観点でCMSから区別される」という発想すら危うくなっています。本当にNMOは「MSとは明確に区別されるべき」疾患なのでしょうか? 抗AQP4抗体は原因と証明されたわけではなく、現時点では単なるマーカー、と以前に書きましたが、例えばこの抗体が単に病変の場所(視神経・脊髄)を規定しているだけで、脱髄の本態についてはMSと変わらない可能性も否定はできません。またEvidence- based medicineの観点からは、NMOとCMSでベタフェロンの「治療反応性が明らかに違う」ということについても、確証が得られたわけではありません。

芦田さんご指摘の通り1891年からNMOと思われる症例報告は本邦にあり、それ以前からMSは欧米で報告されており、いずれも100年以上経過していますが、未だに原因も、病理病態も、治療薬の機序も、明確にはなっていない。

それでも尚、患者に向き合い、病気を診断し、治療を選択し、患者の幸福に貢献するのが、現場の医師の責務です。

現時点ではNMO/MSの診断・治療においてのゴールデンルールはありえず、100%確実な診断と治療を絶対的に提供できる専門家はいないはずです。

名目だけの専門家ならば、ガイドラインやEvidence-based medicineに迎合し「みんなで渡れば怖くない」と、失敗したら仕方なかったと言い訳するでしょうが、小生がMS患者であれば、分からないことだらけであることを十分に承知し、あらゆる情報を集約し、あらゆる可能性を考え悩みぬいた上での決断として、その患者に最も適切と思われる治療を選択し、途中で異なる方向性であることに気づいた場合には謝罪してでも方針を修正し、それでも結果として悪化する方向に働いた場合には自責の念に苛まされる医師を以て、「NMO/MSの専門家」として信用したいと思います。無論、関西ではベタフェロンといった風潮に迎合する、或いはそれに抗することを以て評価される職務ではないと思います。

100年以上の謎が早く解明されることを待ち望みつつも、再発した時にきちんとリカバリーできるような治療法(再生)が、再発抑制薬の開発競争に比して実のところほとんど研究されていないことに危惧を感じています。

NMOであれMSであれ共通して病初期には自然にリカバリーすることが多いのは患者がよく知っていることだと思います。リカバリーする力がもともと備わっているならば、それをいつでも引き出せるようにする治療法の開発は、意外と近道ではないかと感じています。

私見が多いと思いますが、ご参考になれば幸いです。(2008年02月16日 04:32)

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感想欄

私もそう思います。

私の場合、2005年8月、酷い再発の為パルス後経口プレドニンと一緒にベタフェロン始めました。副作用も無く、精神的にもこれで再発しないんだと心強かった。しかし、2007年3月、再発。

主治医の先生はアクアポリン抗体、新潟大学で調べて下さいました。結果が出るまで時間がありました。私はそれを待つより自分でベタフェロンやめます、と主治医の先生に伝えました。

先生はそれ以上何にも言わず、今も看て頂いています。因みにアクアポリン抗体陰性、ベタフェロンが効くタイプmsかも?でも自分で決めた事だから。今はストレスの無い生活を心掛けています。

投稿者 mayumiluku : 2008年10月29日 09:55
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