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163 12月15日発売、新ザウルス(MI-E1)を買ってはいけない
2000/12/16(土)23:19 - 芦田 - 11215 hit(s)


 また、ザウルスを買ってしまった。昨日出たMI−E1。昨日買った。私の方が、吉野先生(テラハウスCG・WEB系の先生)より5時間ほど早かった。私の勝ち。値段も私の買値で税込み49800円(世田谷ヤマギワ店)。吉野先生は新宿ヨドバシ店で52290円(税込み)。「どっちが先に手に入れるか、12月15日は勝負だな」とお互い言っていたが、15日夜講座のために、吉野先生が6:00頃、ヨドバシの手提げ袋に新ザウルスを入れて来たときには、私は旧ザウルスから新ザウルスへのデータ転送をすべて終えて、旧ザウルスを宮川先生に売る“契約”を既に済ませているのであった(エッヘン!)。

 ザウルスユーザーは、新製品がでると買い換えてしまう病気にかかっている。たとえ、WindowsCEの新製品を4度も買っても、瀬川先生のパームを見ても、高橋先生のクリエ(ソニー)を見ても、ザウルスから見れば、すべて子供だまし。あんなものをPIMと思ってはいけない。PIMとしての性能(ハード的にも)はザウルスの右に出るものは絶対ないと言ってよい。

 PI-3000(1993・9)以来、買い続けている私だが、それまでは、私は電子手帳についてはカシオ派だった(90年代初頭の電子手帳マーケットはカシオとシャープとがほぼ拮抗していた)。シャープの電子手帳はそれまで液晶のカバーがビニールだったこととキー配列に癖があったので避けていた。その何年もまえからカシオ電子手帳を使っていて、データも累積していたが、それでも全部打ち直して、シャープ「ザウルス」に変えようと思ったのは、「ザウルス」ではじめてキーで変換することなくペン入力文字がアナログ的に“書ける”ようになったからである。

 当時、反電子手帳派の最大の動機が二つあった。一つは通覧性(が電子手帳にはない)、もう一つはメモが取りづらい(文字変換など面倒くさくてやってられない)というものだあった。そのうちのひとつを「ザウルス」がはじめて撃破した。通覧性は、まだ弱いが、電子手帳は基本的にはデータベース。私は通覧性よりはデータベース機能を重視する。

 さて、今回の新ザウルス、MI−E1。ほとんど期待はずれだ。旧ザウルス、MI-C1を持っているユーザー諸君、焦って買う必要はありません。

 「スタパ齋藤」(ネット上で“有名な”ザウルス評論家)なんかにだまされてはいけません。「絶対買う。予約して買う。新ザウルスMI−E1」(http://ezaurus.com/mie1/review/stapa/01.html)なんて記事につられて新ザウルスを買ってはいけません。それ以上に「スタパ齋藤」がいけない。

 まず、今回のザウルスの特徴は本体にキーボードがついたということだが、この評価が大変難しい。ペン操作とキー操作との関係が上手に融合していない。ペンだけではできない操作が増えている。

 これまでは、ペンですべてできていたものが新ザウルスでは、キー操作一本に限られているものがある。特にたとえば「スケジュール」から「アドレス帳」へ移るには、これまでは一回のペン操作でできたものが、新ザウルスでは「ホームインデックス」ボタンを指で「押す」という作業がかならず介在する。これは大きな退歩だ。かと言ってキー操作ですべてができるわけでもない。両者(でできる機能)をそのつど意識しながら使い分けなければいけない。これは、たいへん苦痛。ペンタッチ操作とキー操作というのは感覚的に融合しづらい。

 キーボードがついたということは、キーボードでもすべてができるということでなければ意味がない。ところがキーボード(+7ボタン)がついたために、肝心のペン入力ですべてできていた操作(しかも肝心の操作)ができなくなっている。

 旧ザウルス(MI-C1)にもボタンは3個ついていたが、これはまったく使わなくても(ペン入力だけで)、操作のすべてがペンでできたことから考えると、今回のキーボード+7個のボタン操作は、むしろ操作性を阻害しているのである。「(キーボードのおかげで)もうペン入力で肩こりになったりする心配はない!!」(スタパ齋藤)なんて全くのウソである。ザウルスユーザーが、iモード携帯電話のキー操作を自在にこなす女子高生なら、この「キー」は優れたものかもしれないが、30才40才のザウルスユーザーが、どれ一つ自立的ではない、このキーボード+7ボタン+ペン操作を自在にこなすとはとても思えない。

 さらに、キーボード操作とは別におかれた7ボタン操作で、2,3言っておかなければいけない。

 まず中央におかれた丸い大きめの縦横上下カーソルキーだが、肝心の選択「決定」キーが、この丸い円の中央にあればいいものを、少しはずれた右側にあるため、操作が不便。これは、最初から両手を使うことを前提に作られている。というより、ザウルス全体を持つ行儀のよい持ち方を強制させている。持ち方を操作方法に直結させるというのは、よいインターフェイスデザインの仕方ではない。こういう前提はやめてもらいたい。

 次に、電源キーが、このカーソルキーの左側におかれているが、以前のザウルスと比べて、すこし意識的に強く押さないと立ち上がらない(立ち上がりスピードは格段に速くなっている!)。特に消すときには、強くしかも長く押す必要があるので結構神経質になる。たぶん、従来のザウルスような蓋がつかなくなったための処置だろうが、これも退歩である。こういう携帯情報ツールは、立ち上げと終了に気を使わなくてもいいことが最大のメリットであるのに、今回の「ザウルス」は、ここでも駄目。

 そうこうしているうちに、もっとショックなことがあった。新ザウルス(MI-E1)は、なんと単語登録ができない。ユーザー辞書がない! そんなばかな、と思って、20分ちかく解説書を前に後ろに読み直したが、どこにもその記述がない。ショック! ユーザー辞書がなくて、「連文節変換を実現」「日本語を軽快に入力」(スタパ齋藤)とはどういうことか。おかげで、私は自分の名前(「宏直」)さえ、歴代ザウルスのように「軽快」に入力できなくなった。携帯電話でさえ、ユーザー辞書があるこのご時世にいったいこれはどういうことか。WindowsCEも長い間ユーザー辞書がなかったが、この新ザウルスは、キーボードを付けて文字入力機能を強化しつつも、ユーザー辞書がない、という奇妙な商品になっている。ユーザー辞書がないということは、単語の羅列の多い「スケジュール」入力などでは、むしろ、使いづらいということだ。もし「スタパ齋藤」「木地本昌弥」「渡辺健一」「法林岳之」といったザウルス評論家(ほとんどちんぴら同然の評論家たちだが)のひとりでも、「今回のザウルスにはユーザー辞書機能がない」と書いていてくれれば、私は、このザウルスは絶対に買わなかったと思う。

 あとは、フロントライト設定。旧ザウルス(MI-C1)と異なって、今回のザウルスには、フロントライトがついた。付けると快適このうえない。そうなると、使うときはずっと付けていたいと思ったりもする。ところが初期設定にその設定(フロントライト常時ON)がない。なぜ、そんなわがままを言うかというと、このライトボタンも長押しボタンだからだ。面倒くさい。電源を入れたり切ったりの繰り返しになる携帯情報ツールにとって、そのたびに長押しボタンを繰り返しながら画面操作にはいるというのは苦痛以外のなにものでもない。しかも、その電源ボタンも長押し。いったい、こんなインターフェイスのどこが、「最強」(スタパ齋藤)のザウルスなのか? 歴代ザウルスをバカにしてはいけない。 

 ついでに言っておくと(結構大切なことだが)、新ザウルスの反射液晶は旧ザウルス(MI-C1)に比べて、反射率が悪い。旧ザウルス(MI-C1)の方が画面が2割くらいは明るい。だから余計にフロントライト常時ON設定が必要になるのである。ちなみに「スタパ齋藤」は、この液晶について次のように書いていた。「液晶ディスプレイもかなり見やすかった。MI-E1にはMI-C1などでおなじみの、非常に鮮明な反射型液晶ディスプレイが搭載されている」。よくこんなことが書けるものだ。フロントライトを付けないのなら、旧ザウルス(MI-C1)の方が絶対に見やすい(反射率が高い)。たぶん、フロントライトを付けた分、液晶平面が深くなり(見たところ2ミリくらい奥に沈んでいる)、その分反射率が下がったのだろう。

 さて、その他の新ザウルス(MI-E1)の特徴は、カードスロットをはじめて二つ持ったということ。旧ザウルス(MI-C1)では、CFカード(私は42メガを入れていた)一つだった。今回は、CFカードとSDカードが使える。私は昨日68メガのSDカードを買って装着した。CFの方は、カメラカードやPHSカードなど付加機能の拡張スロットとして考えている(まだ何に使うか決めていない)。

 私は、「フォトメモリー」などデータ容量の多いものは、本体メモリーにはいれず、必ずカードメモリに入れるようにしている。というより「本体メモリ」は7メガ程度しかなく、「フォトメモリ」は、カード拡張なしには使い物にならないからだ。顔写真付きの「アドレス帳」も、ほとんど友達がいない人しか使えない。ほとんど友達がいない人は、「電子手帳」など使わないだろうから、「フォト」データは拡張メモリなしには意味がないのである。

 そして今回の2カードスロット。これは進歩、といいたいところだが、これがまた問題。このスロットは“同時に”機能しない。つまり、CFスロットでたとえばカメラを使いながら、そのデータをSDカードに落としていくという使い方ができない。一度カメラデータを本体メモリに落としこんで、それからSDメモリにということになる。もし、本体メモリに余裕がない人は(私のことだが)…、この2カードスロットのメリットを享受できないことになる。こういう大切なことが「スタパ齋藤」の記事には何も書かれていない。何が「実用性の高いふたつのカードスロット」(スタパ齋藤)だ。

 この問題の本質は、新ザウルス(MI-E1)の本体ユーザーメモリが依然として10メガを切っているということにある。コストダウンの問題はあるにしても、本体メモリが7メガしかないMP3、MPEG4ツールとはいったい何なのか。私のデータは「アドレス帳」と「スケジュール」だけでもすでに本体メモリの8割を占拠している(ザウルスユーザーにはこういったユーザーがいくらでもいる)。これでどうやって音楽や動画を楽しめというのか。「マルチメディア系ファンツールとしてのおもしろみを考えても…ホントにコレは最強だと思える」(スタパ齋藤)なんて、シャープからただで新ザウルス(MI-E1)をもらっても私には書けない。

 さらに致命的な問題がある。蓋のことである。新ザウルス(MI-E1)には、液晶保護のための蓋がついているが、これがいけない。この蓋はこれまでのように本体にくっついておらず、物理的に取れてしまう。取った蓋をどこかにおかなければならない(逆さまにして本体につけられるようにはなっているが、きちんとセットするためにはかなり神経質にならざるを得ない)。そして利用が終わればまた付けなければならない(付け替えねばならない)。何度も言うが、こういった情報ツールは、一日の内に、また短時間の内に何度も使ったりしまったりする。弁当箱の蓋なら、お昼時の一回で済む蓋の開け閉めとは違って、そのたびに蓋を取り外したり付けたりしなければならない、この蓋の操作性の悪さは一体何だ? どういうつもりでこんな不便な蓋にしたんだろう。この蓋は許せない。もちろん「スタパ齋藤」は、この蓋についても一切触れずじまい。

 他にも細かいことは色々あるが、このザウルスは、「スカパ齋藤」が言うほどの「最強のザウルス」ではない。たしかに処理速度は格段にあがり、爽快にサクサクと動くが、この爽快さが不純な機能や入力系の不整合な組立によって前面に出ない。

 パームトップやクリエ、あるいは携帯電話に押されて、わざとらしくマルチメディア機能を付加した駄作のザウルスが、今回の新ザウルス(MI-E1)なのである。ザウルスの本質は、圧倒的な便利さを有したPIM機能(スケジュール管理、アドレス管理機能など)にある。パームトップやクリエは、この点で足元にも及ばない。インターネット機能やマルチメディア機能は、まだ現在の技術では、中途半端なものにとどまらざるを得ない。一番大きな技術障害は、電池の持ち。フル充電で、MP3ファイル再生、2時間30分(カタログ表示)。MPEG4ムービープレイヤーとして1時間40分(カタログ表示)。フロントライトを付けたまま「スケジュール」「アドレス帳」をあれこれ操作していると1時間程度で駄目になる(しかも電池体力が前より駄目になっているのに、ACアダプターが旧ザウルス(MI-C1)より四倍大きく重くなっている!)。要するに使い物にならない。クルーソー搭載のモバイルパソコンの方がよほど優れているのである。これはザウルスが駄目というよりは、こんな機能をザウルスに持たせる方が間違っているのである。変な差別化路線がザウルスを駄目にしている。もう一度、初心に戻って作り直してもらいたい。

 それにしても、「スタパ齋藤」さん、いい加減なことを書いて、読者をだまさないように。この新ザウルス(MI-E1)は「絶対に買う」ほどのザウルスではありません。ユーザーインターフェイスは、3年前に出たPI-8000の方が遙かに優れています(私はPI-8000が「最強のザウルス」だと今でも思っています)。この間、新橋のキムラヤで15000円くらいで売っていました。嗚呼、また無駄使いをしてしまった。

 P.S.
 なお、私の他のザウルス論については http://www.terahouse-ica.ac.jp/staff/ashida05.htm#zaurus にもその記載がありますので、よろしければ参照して下さい。


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