番号 | 日付 | 題名 | 投稿者 | 返信元 | 読出数 |
148 | 5/1(木) 18:38:10 |
症状報告(12) ― 料理、受付、再退院 | 芦田宏直 | No.124 | 3686 |
料理の腕前の本質は素材と味付けだと思っていたが、最近はそうではないような気がしてきた。いかに温かいものを温かいままに食卓に出すかどうかがすべてだ。 たとえば、“ステーキ”と“それに添えるもやし炒め”と“バター明太子ほくほくポテト”と“サラダ”を食卓に出すとき、どういった順番で作れば、食卓上一番暖かい状態(サラダはいいとしても)でそれらを食べることができるのか。 今回の自炊(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=135.124.4)で、この組み合わせを3回体験しているが、毎回、この組み合わせは気が狂いそうな状態になる。もやし炒めが(取りかかりの)最後だが、この最後は、ステーキの最後とほとんど同時でなければならない。それを気にしていると今度はジャガイモの柔らかさが気になる。ほくほくポテトにするには、まるごとのジャガイモを入れるので、カレーのジャガイモのようには簡単には柔らかくならない。まるごとのジャガイモをゆでるには思ったより時間がかかる。かといって柔らかくしすぎてもダメ。それに最後のバターと明太子をジャガイモの上に上手に置くのもむずかしい。切れ目の入れ方を失敗するとジャガイモがバラバラになる。そうこうするうちに、ステーキの肉ともやし炒めが冷め始める。これらすべては温かくないと話にならない。私自身が(ただ単に作り手ではなく)食べようとしているわけだから、余計に緊張する。 とはいえ、息子と私の二人分を作るだけでもこれだけ緊張するのだから、4人家族、5人家族ということになると、よほど大きなガスレンジがないと不可能なことだ。一家の主婦は、どうやって、暖かい食べ物を食卓に並べているのだろう。私にはアクロバットとしか思えない。 こういった〈並列処理〉というものに男は慣れていない。受付仕事や事務仕事というものが大概のところ女性であるのは、それらの仕事がたいていは〈並列処理〉を強いられるからだ。電話は鳴る。面前の顧客応対はしなければならない。ルーティンワークもある。突然の仕事を勝手な男性社員から依頼される。これらを“論理的に”完結することは不可能で、まるでキッチンの〈並列処理〉を行うかのように、すべてを同時進行しなければならない。それが受付業務というものだ。私は、受付仕事の人材を採用するときには、「あなたは料理を作るのが好きですか」と必ず聞くことにしている。 料理を上手に食卓に出すことができる人は、〈並列処理〉ができるからだ。論理的(リニア)に考える人は、受付をやらせると一週間も経たないうちに頭がパニクッて音(ね)をあげる。「私だって、自分の仕事があるんだから」などと言い出す。この女性は、たぶん料理も下手なのだ。食卓にはさめたもやし炒めしか出てこない、と思った方がいい。 追伸:ところで、家内の再退院が決まりました。5月3日だそうです。 |
[一覧へ戻る] |
148番まで読んだとして記録しました。[新着]モードで未読を表示します。