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147 4/30(水)
01:50:46
 症状報告(11) ― 分別ゴミの思想と治療の言葉  メール転送 芦田宏直  No.124  4789 

 
「分別ゴミ」という思想はいったいどこから来た思想なのだろうか。ゴミは分別できないからこそ〈ゴミ〉というのであって、分別できればもはや〈ゴミ〉ではない。それもあって、市町村(区)によっては、分別の“定義”も違うらしい。さもありなん。分別できなものを〈ゴミ〉というのだから。

ゴミを分別するなんて、犬のウンチを片づけながら散歩するのと同じくらいにばかげた行為だ(ウンチをかたづけるくらいなら犬をつれて散歩をしないほうがいい ― 犬のウンチを携帯しながら散歩をするというのは一種の近代的な病(やまい)だ。散歩はそもそも手ぶらでするものだ。荷物を持った上にそれもウンチというのは、不快きわまりない散歩であるに違いない)。あるいは、禁煙席を作るレストラン(高級レストラン)もナンセンスだ。たばこを吸ってもクリーンな空間を作るのがサービスというものだろうに、顧客側に禁煙を強いているのも奇妙な思想だ(もっとも私自身はたばこを吸わないが)。環境思想(エコロジー)とは反動的な科学主義なのだ。

だから、自炊一ヶ月の我が家では(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=135.124.4)、「分別」というものが何が何だかわからないまま捨て続けている(管理人様失礼!)。不燃、可燃というが、そもそも燃えないゴミなどというものがあるのだろうか。

それに、空き缶と牛乳のパックとペットボトルを分けるというのも腹が立つ。〈飲み物類〉とでもいう分類を作ってくれないと、袋ばかりが散乱して、足の踏み場もないキッチンになってしまう。大邸宅(少なくとも8畳以上はあるキッチンが必要)にでも住んでいない限り、こんな分別はむしろゴミ袋の山になってしまう。

もし分別を認めるとすれば、〈機能・目的〉や〈大きさ〉や〈ゴミが出る時間サイクル〉によって分けるべきであって、〈素材〉で分けることには何の意味もない。家庭の台所ゴミという〈消費〉の極限の地点に、素材という〈生産〉の極点が入り込んでいるために、〈分別ゴミ〉という概念は、精神分裂症的な心理を強いる。まるでゴミの社会主義のようなものだ。家庭ゴミにおける〈リサイクル〉なんて、どこまで経済的なのか、何も科学的に検証されてはいない。あやしい思想だ。

「分類は悪」だというのは、野口悠紀雄の『「超」整理法』(http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3aefc10412c880103cc4?aid=&bibid=02005719&volno=0000)の基本思想だった。

これは彼の“全”著作の中で唯一優れた思想だった。パソコンの中でも、フォルダ(=分類)を作りすぎると何をどこに入れたのかわからなくなる。それにWindowsOSの「検索」は未だに全く役に立たないいい加減なものだから、ファイル管理は自衛するしかない。私は、最近はデスクトップの中に「ファイル」というフォルダを作って、半年に一度くらいで古くなった(半年前よりさらに古い)ファイルだけ、「マイドキュメント」の中の10項目くらいに分類されたフォルダにしまい込むよう(「移動」するよう)にしている。

よく「情報整理術」と称して、「捨てる技術」(http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3aefc10412c880103cc4?aid=&bibid=00014820&volno=0000)を説く論者がいるが、バカなことを説くものだ。捨てる、捨てないの“分類”を、捨てる〈現在〉から判断することなど誰にもできない。人が捨てきれないのは、将来にわたって、それが不要かどうかを判断できないでいるからだ。それはもっともなことだ。引っ越しの荷物や物を整理する場合には、「捨てる技術」は必要だが、〈情報〉は物のようにかさばりはしない。

こんな奴、二度と会わないだろう、と思って捨てた名刺を一度ならず、二度三度と捜した経験は誰にでもあるだろう。情報整理の根幹の思想は、〈入力〉では差別しないということだ。どんなに頻度(や関心)の薄い相手の名刺でももらったら必ず(受け取った日時と共に)入力しておく。差別は〈出力〉側で行えばいい。出力側の差別を〈検索〉というのである。

〈現在〉の意味を決めるのは、〈未来〉なのであって、過去(からの累積)なのではない。捨てる、という思想は、〈過去〉の自分を捨てているように見えて、その逆、自分の〈未来〉を捨てているのである。

〈データベース〉や〈サーバー〉という概念は、無駄なもの、一生必要でないかもしれないものの集積を意味している。それは、どんな〈将来〉をも、〈現在〉の中に集約してしまおうという形而上学的な欲望に端を発している(だから、〈情報社会〉というのは新しい社会の登場でも何でもない。古くはプラトン、新しくはヘーゲルの欲望の世俗版だ)。「開いててよかった」というのは、コンビニ「セブンイレブン」の最初のキャッチコピーだったが、「在ってよかった」という検索の欲望は、将来と現在が“24時間”合致している願望の充足状態なのだ。人類のすべての欲望がデジャブー(既視状態)であるかのように機能するもの、それが〈データベース〉や〈サーバー〉という概念である。

〈データベース〉や〈サーバー〉は、〈分類〉というアナログ的な思想をとっくに越えている。〈分類〉は空間的だが、「空間の真理は時間」(ヘーゲル)であって、〈情報〉という概念は人が普通考えているよりははるかに時間的な概念なのである。

追伸:家内は元気ですが、退院(再退院)の期日決定が長引いています。再々入院にならないように慎重を期しているようですが(ステロイドがよく効いているのですが、家庭療養の時の治療(治療薬)をどの程度にするのか、なしですませることができるのかどうかがキーポイントだそうです)、退院はゴールデンウィークの中盤以降になる予定です。ちなみに、直接の担当医だった先生が、家内と同じ病気っぽい症状で(自分の勤務する病院に)入院してしまいました。研究好きの先生でしたから、ついに自分でも体験してしまったということでしょうか。心強いというか、なんというか … 。

彼と家内との関係は、なかなかのもので、彼は、家内にいつも厳密な言葉を要求してきました。(足が)「突っ張る」とか「しびれる」とか、そんな言葉ではなかなか納得しない先生で、「芦田さん、私はこの病気の専門家ですけれど、私自身は一度もこの病気になったことがない。だからあなたは、私に症状をきちんと言葉で話さなければならない」と言い続けた先生でした。なるほど立派な先生です。ついにしびれを切らして、自分自身で病気になってしまったのでしょうか。

私の家内の入院生活の観察では、「入院患者」というものは、なかなか本当のことを言わないらしい。不快になる薬などを大量に投薬されるのがいやで、症状をわざと軽く言って薬の適量を間違わせる場合も多い、とのこと。あるいは薬(不快な薬)を飲んだ振りをして、捨てている患者も多いらしい。そうなるといつまでたっても退院できない。

よく考えれば、どんな観察データ(MRI断層撮影などの)よりも、最も重要なのは、薬の効き具合や患部の痛み具合を患者が正確に医師に伝えることだろう。これこそが最も重要なデータ、治療上の指針なのだ。

F1レーサーの中嶋悟が、なぜ勝てなかったのかと言えば、彼が英語ができなかったことが大きな原因の一つらしい。それに比べれば、アイルトンセナの英語は抜群だったらしい。マシンセッティングの要は、機械的なデータ分析よりもレーサーが背中やお尻で感じるマシンの“症状”を、どうメカニックに伝えるかなのだ。言葉の足りないレーサーのチームは、コンマ何秒の世界での微妙なセッティングができない。片山右京、高木虎之助なんて見るからに英語が下手そうだ。これではいつまでたっても勝てない。F1は、サッカーよりは、はるかに言葉の世界なのである。

病院を早期に退院する最大の秘訣は、そのように〈言葉〉が鍵を握っている。生化学上の薬の前に、〈言葉〉が最大の薬なのである。

しかし病気になって急に言葉が大切だと言われても、急にはボキャブラリーは増えない。みなさん、健康なくせに日経やアエラごときを読んだくらいで満足していてはいけませんよ。初刷りで3000部以上も発行されているものは、すべてウソが書いてあるくらいに思っていてちょうどでしょう。


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