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105 2/24(月)
23:18:16
 その後の「戸建て住宅を建てる思想」(評価編)  メール転送 芦田宏直  12  4183 

 
 予告通り(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=96)、18日に一次プレゼンを行い、4社が21日金曜日の二次プレゼンへ進みました。残った4社は三井ホーム、ミサワホーム、旭化成、辻村工務店(順不同)。一次プレゼンは、私だけが一人でプレゼンを受けて自分だけで判断しました(18日後半の4社のプレゼンは、わが専門学校(http://www.tera-house.ac.jp/index.html)の「インテリア科」(http://www.tera-house.ac.jp/design/interior.htm)の学生たちが“プロのプレゼン”に同席しました。「教室では得られない知識が得られました。いい勉強になりました」と口々に言っていました)。

18日は8社でプレゼン総時間約6時間。21日の2次プレゼンはやはり4社で3時間。どの会社もプレゼンには力がこもっていました。参加された各社のみなさん、この場を借りて感謝します。

残した4社は、どれが選ばれても同じくらいの水準を保っており順位を付けることができません。現在、二次プレゼンの最後の勝者を検討中。間取り図などは、今日は貼り付けることができませんが(データが重いので、現在Photoshopを使って軽くしている最中)、とりあえず、業者の方への総評を行いたいと思います。この評価の原則は、無いものねだりをしないということです。あくまでも設計者が目指そうとした意図そのものの中での評価を行いたいと思います。そのためにもこちらからの条件は、最小限に留めました。諸条件は「芦田の毎日」100番(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=100)に提示してありますが、それとは別に口頭で「収納のためのスペース(クローゼット、書籍、骨董類、美術品などの)をゆったりと取ってほしい」と付け加えてあります。

※図面は今日のところ貼り付けることができないので、今日の記事は業者の方への選考理由(あるいは諸課題)としてUPしたいと思います。


●三井ホーム
  特徴は、南側全面の大きな吹き抜け。ダイニング、リビング全体に南面の光を取り込む間取りになっている。また西側の隣家(当該敷地の西側は、隣家が隣接しており、特に隣家2階のベランダからは、今回の“離れ”の玄関部分が出入りが丸見えになる)に対する玄関の囲い込みもの造形もよく配慮されている(玄関へのアプローチ側からの目隠しや母屋との一体感の演出にも、この囲い込みは役立っている)。

 難点は、3点ある。
 
 1)リビング南側の開口部。L字型のソファを置いた場合、南側デッキへの開口部を防ぐことになり、南側全面を吹き抜けによって開放した思想と整合性がない。玄関の出入り動線、和室へ出入り動線、ダイニングの出入り動線という三つの動線が(南動線を防がざるを得ない)L字型のソファの設置を余儀なくさせている。

 2)もう一つの難点は、2階の寝室が(南側全面の吹き抜けによって)北側へ奥まっている分、南側に直接位置する寝室よりは快適性が落ちるだろうということ。むろんこの「難点」は、リビング・ダイニングの開放性や南面の全面採光と引き替えの難点にすぎないが。

 3)これだけの全面的な吹き抜けに、三井ホームのツーバイフォー住宅はどこまで強度を保てるのだろうか。特に屋根裏収納として3000冊以上の書籍の重量に耐えうるBoxを用意すると言っているが、こんなに大きな吹き抜けのある建物の高い部分に重いものを保持する場合、構造上の強度はどこまで保てるのだろうか。

●ミサワホーム
 特徴はリビング・ダイニングを天井高の高い大屋根にし、開放感の高いものとしたこと。この大屋根は(単に室内空間を広く見せるためだけではなく)、母屋の庭からのアプローチや造形に際して下がり勾配の屋根を大胆に見せることによって全体の造形を低く見せることに貢献し、母屋との調和のある造形を演出してもいる。また(この敷地は)防火地域のため木造では100uしか床面積を確保できない不利を、中庭を作ることによって広がり感のある生活感を演出していること。特に1階玄関部分や2階寝室の出入りでの中庭が演出する空間の造形は開放感の豊かなすぐれたものだ。

 難点は、3つある。

 1)ミサワホームの難点はメリットと裏腹になる。一つは、大屋根構造にしたために南面の日差しを取り込む度合いが落ちてしまっている。その“欠陥”を設計者は充分心得ており、そのためのトップライトスペースを取っているが、これはおまけ程度。

 2)中庭を取ってしまったために二階スペースでは廊下部分が多くなり、100u制約の難点がそのまま露呈してしまっている。結局は1LDKになってしまった。いくら一人暮らしとはいえ、これでは狭すぎるかも知れない。

 3)LDKのスペースについては、ダイニングのテーブルに向かい合う向き(東西に向かい合うベクトル)とリビングの向き(南北)との整合性、そしてまたテレビスペースとの整合性が取れておらず、使いづらい動線になっている。この原因は、たぶん二階への階段をリビング開放型にしたことにある。そのことによって、空間上部的には開放型になったが、食卓と居間との動線設計には困難が生じてしまったと言える。

 4)階段をオープン型にしたため(また中庭を作ってスペース設計の自由度が下がった分)、2階の寝室からはもっとも遠い位置に階段を作ってしまった。せっかくのエレベータからも遠い。これは62歳の婦人の一人暮らしには向かないかもしれない。

 5)最後の難は、ミサワは金額が高い。二次プレゼンに進んで1割くらい見積もりもさげてきたが、それでも鉄骨造の旭化成と同じくらい高い。

●旭化成
 旭化成の特徴は、何と言っても鉄骨造(耐火構造)による100uを超える居住面積の確保。他の木造住宅設計が広くても2LDK(+収納)のところ、ほぼ4LDK(+収納)の広さの設計ができる。設計の特徴は、吹き抜けが二階の廊下を挟んで二重構造になっているところ。南面の採光にも優れているし、吹き抜けの反響も最小限に抑えられる設計だ。二階の主寝室も南側の西端にとってあり、これであれば母屋の建物からの南面採光も妨げられることはない。一階デッキの開放感や2階のベランダ提案なども魅力的なものだ。あえて間取り上の難を言えば、一階の和室の南側が、母屋の庭からのアプローチに際して丸見えになることくらいだ。これも致命的というほどでもない。

 1)旭化成の最大の難点は、やはり外壁。外壁が要塞のような無骨なものになってしまう。今回は単独で建てるわけではないので、特に(純和風の)母屋との調和を考えるとやはり考え込んでしまう。

 2)もう一つは、工期の問題。どこの会社も8月末くらいまでには何とかなるだろうという工期が、旭化成だけは10月20日。現地が公道に面していないこと、奥まった狭いところにあることなど、鉄骨造では融通の利かないところが多いらしい。

 3)最後に金額。やはり鉄骨造の分、こういった狭い敷地ではスケールメリットが出ず高くなる。結局ミサワホームと旭化成が一番高くなってしまった。両者の金額と他社の見積もりとでは、1000万円くらいの差が出ている。30坪を超える程度の敷地の住宅で1000万円の差はやはり大きい。旭化成の1000万円高は(ミサワホームと違って)、居住スペースが50%程度木造住宅に比べて増えるということだ。この40%造と引き替えの価格として1000万円が“高い”かどうか。

●辻村工務店
 辻村工務店の特徴は、屋根のひさしを長くして住宅全体の背丈を(平屋のように)低く見せ、そのことによって、母屋との一体感を出そうとしたこと。京風の感じか。居間の天井も吹き抜けにし、南面の採光も充分。また吹き抜けの居間に面した2階部分をすべて障子窓にして全体の質感を和風で上手にまとめている。

 難点は、ただ一つ。
 辻村工務店は防火地域指定を勘違いして、150u近くのスペースで設計してしまった。だから提案された設計は個性的で大変優れたものだったが、実際には建てられない住宅になってしまった。これでは評価が難しいが、このデザイナーにはもう一度100u制限の中で設計させたい。

●パナホーム
 パナホームは、旭化成と同じく鉄骨造。特徴は西側に玄関を持ってきたこと。そうすることによって、リビング・ダイニングの動線の設計の自由度が高まった。1階北側に置かれた主寝室も一部吹き抜けを利用して採光の工夫がなされている。ただし母屋との一体性を考慮した設計にはなっていない。

 難点は、
 1)母屋との一体性に対する考慮がほとんどなされていない。せいぜいキッチンからの出入りのドアが付いているだけ。建物全体に対しての配慮が少ない。特に外側から見た窓の造形や位置などは決して美的とは言えない。
 2)主寝室の位置がやはりおかしい。この位置だと、玄関アプローチの際、寝室南側が丸見えになる。
 3)主寝室の採光に関しても、北側に奥まった南窓という点、不自然な吹き抜け構造による採光の実際など疑問が残る。
 4)西側玄関のアプローチを多く取ったため、採光性の高い南面スペースを多く取られてしまっている。そのためか、採光の取り方が人工的なトップライトや不自然な吹き抜けの設計になってしまった。

●住友不動産
 住友不動産は、母屋との一体性のあるデザインになっていない。また南面採光の工夫なども弱い。何一つ課題がクリアされていない。ふつうの家になってしまった。

●三井ハウス
 三井ハウスも辻村工務店と同じく、防火地域の100u以下という規制を見落としてしまった。140uの床面積のある、実際には建てられない設計になっている。設計の内容に関しては、住友不動産と同じく母屋との一体性のあるデザインに配慮がなく、南面採光の工夫も足りない。何一つ課題がクリアされていない。これもふつうの家になってしまった。

●住友林業
 住友林業はリビングの上の吹き抜けなどを作り採光上の考慮はあるが、母屋との一体性が考慮されていない。2階の寝室も南面の一番東側になっており、採光面で心配が残る。ただし、見積もり金額はここが一番安かった。一番高い旭化成、ミサワホームに比べて2000万円の差がある。


105 その後の「戸建て住宅を建てる思想」(評価編) by 芦田宏直
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