私は、民主主義を信じていません。したがって、大統領制か、議院内閣制かの議論を真剣にやる気がおこりません。そもそも多数決で決めるということ自体を何で決めるのでしょうか。それ自体多数決で決めるというのは背理でしょう。したがって、多数決で決めるというのは、それ自体民主的ではないのです。
　もう一つの問題があります。たとえば、自衛隊は、どんな世論調査でもだいたい７割以上の国民によって支持されている存在です。にもかかわらず、旧社会党の連中や共産党は、自衛隊を認めません。両党とも“国民政党”“民主主義を守る政党”と言っているにもかかわらず、です。それを指摘すると、彼らはかならず、民意というものを二重化します。「在るべき民意」と「在る民意」とに分けるわけです。つまり「在る民意」としては７割の支持があることを認めるが、それは時の政治権力によって国民がだまされているのであって、本来の「在るべき民意」としては、自衛隊支持は少数派なのだというように。
　もし民意をこのように二重化するのなら、何でも言えます。自らの思想を、「べき」思想で通せば、どんなに少数派でも、自意識を保つことができます。現にそうやって、あらゆる新左翼を含めた左翼闘争は、孤立をおそれずに幻想の多数派を信じることができたのです。結局のところ、左翼も、凡庸な民主主義者たちだったということです。

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