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396 re(1):嗚呼、水原弘。嗚呼、森山良子。
2001/8/15(水)05:58 - 芦田宏直 - 2481 hit(s)


 水原弘は、6年ぶりの第18回紅白歌合戦(昭和42年)に「君こそわが命」で復帰する。念願のステージに立ったとき、マイクのあるところにたどり着くまでにあと半歩足りないくらいに深々と頭を下げている。歌を歌うのを一瞬忘れるほどまでに頭を下げたときに何を思っていたのだろう。

 「あなたを本当は探していた」という画期的なフレーズで始まる、この歌の「あなた」は、“紅白歌合戦”のことだったくらいに彼の紅白復帰への気持ちは並々ならぬものがあった。でもその紅白で水原は、驚くくらいに冷静に、そして忠実に、まるで歌を習い始めの歌手が習った通りに歌うように歌う。私は歌が始まったとたんに泣いていたがその期待を外すかのように水原は冷静に歌っていた。本当は泣いてもいいこういうところで泣けないところに、水原のデカダンの本質がある。ステージで(人前で)泣ける人は実は強い人なのだ。水原の“冷静”は、琴線を踏むようにきわどいもののように見えた。作詞の川内康範も作曲の若き猪俣公章も決して手放しで水原を讃えない。水原は極限にまで“弱い”人だったのだろう。

 同じように、横山やすしも西川きよしが国会議員になってからは特に荒れていた。久米宏が現在の「ニュースステーション」の芸の基本を作ることになる日テレの「テレビスクランブル」(生放送)で、酒を飲んでめちゃくちゃになっていた横山やすしを思い出す(酒に酔った横山やすしとコンビを組んだおかげで、久米宏は生放送の意味を初めて学んだのである)。酒に酔ったまま生放送に出る横山やすしは、もうすでに芸人としては死んでいた。そのときの横山は、念願の紅白で冷静に歌う水原の陰影だ。たぶん、男の本質は、デカダンなのだ。冷静さや酒に酔ってしか弱さを見せることのできない男の悲しさに、合掌。


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【395】 嗚呼、水原弘。嗚呼、森山良子。 2001/8/14(火)22:27 芦田宏直 (1407)
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