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108 労働省「IT化職業能力開発研究会」最終回
2000/11/25(土)16:52 - 芦田 - 3515 hit(s)


 昨日は、労働省の研究会(「IT化に対応した職業能力開発研究会」)の最終回の日で、久しぶりの新橋(その事務局の三和総研での会合だった)に行って来た。
 この研究会についての報告はすでに「デジタルデバイドについて」としてこの「芦田の毎日」NO.7でおこなったが、やっと最終回にまでこぎつけた。
 われわれの議論したことは「IT化職業能力開発研究会の検討成果として整理すべき主な事項(案)」としてA4版11枚の資料としてまとめられた。
 この研究会の趣旨は、第一項に以下のようにまとめられている。

1.研究会の趣旨「@IT化が急速に進展する中で、IT分野の新たな事業展開、起業等を通じた雇用創出を図るとともに、IT化に係わる職業能力に起因するミスマッチを解消し、ひいては雇用不安の解消を図ることが必要」 A「このため、IT化に係わる職業能力の構造、IT化に伴う企業組織や求められる職業能力の変化、これらを踏まえた職業能力開発施策の課題と今後の方向性を明らかにするもの」
以後、全体で6項目の柱にまとめられた。
2.IT化の進展等が職業能力に与える影響と職業能力開発施策の課題
3.IT化に係わる職業能力の構造
4.今後の職業能力開発施策の課題と当面の方向性
5.IT化を活用した教育訓練手法の開発等、IT教育訓練の基盤整理
6.本格的なIT化社会の到来に向けた職業教育の開発を図る上で更なる検討課題

 私には、こういった総花的なまとめは性に合わない。「何が書いてあるのかわからないくらいにすべてのことが書いてあるため、意見を求められても何を言っていいのかわからない」と最初に発言したら笑われてしまった。座長の東大の佐藤博樹教授が、(すべてのことを書く)「プロですからね」とさりげなく言われ、なるほどこれが官僚の文章というものかと合点した次第。
さてしかし、それでも触れられていない肝心なことがあるなと思ったのも事実。私は、もともとIT化は情報技術分野の問題ではなく、社会的な問題だと思っている。したがって、「雇用のミスマッチ」や「雇用不安の解消」の問題は、情報技術者の不足の問題や労働者に「情報リテラシ」を習得させるということではないと思っている。それは通産省や文部省の問題であって、むしろ労働省にとって重要なことは、IT化によって、雇用需要が拡大する分野をどう見定めていくかということだ。これはIT教育の問題ではない。つまり、この「整理」レポートの混乱は、IT化をIT教育の普及と同一視しているところにある。
 たとえば、このレポートは二つの「中抜き」現象を指摘している。一つは、会社組織のフラット化という「中抜き」と、流通段階の簡素化という「中抜き」。こういった「効率化」は、省力化という意味での雇用不安を呼んでいるが、しかし、一方でインターネット書店やインターネット西友(スーパーマーケット)などのように物流を活発にさせる契機も増大している。多品種少量生産の次は、一個単位で家庭と物流が融合するという事態だ。何と呼べばいいのだろうか。“消費の郵便化”とも言える事態である。たとえば、すでに一冊単位で書物が家庭に届けられる。一個単位でコショウ瓶が家庭に届けられる。消費物流が極限にまで個人化する。ここは雇用需要が増大する場面だ。E-ビジネスやE-コマースといった「新たな事業形態」を指摘する前に従来の産業の個々のボリュームに急激な変化が起こりつつある、という事態をもっと明らかにしていく必要があるのではないか。人(労働者)がいらなくなるという局面に注目すると、IT化はIT教育に矮小化されるが、人が必要になるという局面に注目するとIT化は、IT教育の問題ではないことがはっきりする。私は、その局面を“消費の郵便化”にあると思っている。
 IT化(非IT教育、非IT分野における)は、どんな労働市場を開拓するのか。これを明らかにすることこそ、労働省の課題なのではないか。
 一般的にIT化は効率化、省力化の局面ばかりが強調されて、これが人減らし(リストラ・リエンジ)のイメージに結びついている。しかしこれはほとんど根拠がない。こうなるのは、IT産業にかかわる営業のセールストークに社会全体がだまされているからだ。
 電話が登場したとき、これで人と人がいちいち会うことはなくなるだろうと言われていた(電話セールスマンの虚偽)。しかし電話の利用のかなりの部分が人と会うためのアポイントのために使われている。周知のように「メール」機能で一番便利なのはアポ取りである。
ワープロが登場したとき、オフィスはペーパーレスになると言われた。それもウソだった(ワープロ営業マンの虚偽)。いまでは手帳に書き込めばいいものまでプリンタに、ときにはカラープリンタにまで打ち出している。むしろワープロが消費喚起したものは紙化(ペーパー化)、つまりプリンタの需要だった。コピー機が家庭に普及するまでには時間がかかったが(あるいは普及しなかったが)、プリンタが普及するのはあっというまで、今では各家庭にまで「A4用紙」があふれている。
さて、IT化は、(IT教育やIT技術者以外の)何を増大させるのか、そこを労働省はどう考えているのか、と私は尋ねた。そういった社会変化の洞察なしにはIT労働行政の力点は見いだせないだろうという意味で。
「そこは、大変重要なところだと思っている」と能力開発課長。続けて「ただし、われわれもそこが読めないでいる。先行するアメリカでの変化など資料を集めたりしているが、まだどうなるかわからない。もし何かあれば教えて欲しい」ということだった。
さて、IT社会の労働者は何処に?


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