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今日の授業で久しぶりにつまらない授業に出会った ― 毎日1時限目の全授業をすべて授業参観する例の私の仕事http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=71、http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=72、http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=75)。
初級シスアド試験(http://www.kimura-kouichi.com/sad.html)の市販の「教科書」を使った授業で、ハードウエアとは何か、ソフトウエアとは何か、WindowsXPなどのOSとは何か、という解説の授業だったが、パソコンが機械である、という通俗に訴えての解説であるため、身も蓋もない授業になっていた。もっとも初級シスアドの試験なんて、くだらないことの羅列のような試験だが。わが専門学校の学生なら、「初級シスアド」なんて乗り越えて卒業して欲しい。
たとえば、「CPU」はハードウエアか、ソフトウエアか。もちろん「教科書」には、「CPUはコンピューターにあたえられた命令を順次実行していくハードウェアの一部分で、メモリーの情報を読み書きする機能(I/Oユニットによる)と、実際に命令を実行する機能(論理演算装置による)、それにコンピューターのほかの各部分にそれらのふるまいをつたえてコントロールする機能(制御装置による)をもっている」(Microsoft(R) Encarta(R) Reference Library 2002. (C) 1993-2001 Microsoft Corporation.)と書いてある。
しかしこの“説明”は、ほとんど無益である。そもそも、CPUとは、Central Processing Unitの略。日本語では「中央演算処理装置」と訳されているが、この「装置」という言葉がいけない。Unitという英語を「装置」と訳したこと自体がすでに誤訳だと言ってもよい。物か機能かわかりづらい。単なる物でもなく、単なる機能でもないUnitという英語の意味を訳すのは難しい。
よく、見える物がハードウエア、見えない物がソフトウエアと言ったりもするが、これもおかしい。ソフトウエアも、紙に書かれたり、ハードディスクに書き込まれたりしている。プログラムが書き込まれたハードディスクをハードウエアと呼ぶことにどんな意味があるのだろうか。そもそもプログラムは、ハードウエアとしてのハードディスクに書き込まれるのではなくて、初期化された(メタプログラム化された)ハードディスクにのみ書き込まれるのである。CPUも、それ自体で機械語を“読みとる”ソフトウエアを有している。
これら(ハードディスクやCPU)が、「部品」(機械部品)や「装置」(機械装置)として意味を持つのは、ソフトウエア(プログラム)を介してのみなのである。
「部品」や「装置」と言うと、すぐに「機械部品」や「機械装置」のことを考えやすい。しかし、それは間違っている。
「機械部品」や「機械装置」は、その形状がその部品や装置の〈意味〉を担っている(「部品」と「装置」は厳密には意味が違うが、それは後で触れる)。たとえば、自転車のギヤの形状は、その速度の〈意味〉を担っている。しかしCPUの形状は、CPUの〈意味〉とは何の関係もない。つまりCPUは〈機械的〉な部品なのではない。またこの〈機械的〉という意味でCPUは「ハードウエア」なのではない。
〈形状〉が〈意味〉をただちに意味しないという意味では、電気的な関係もそうである。電気のスイッチという「部品」「装置」は、電灯の点灯・消灯という〈意味〉と形状的には何の関係もない。機械的な機械制御を進展させるためには、電気的(電子的)な制御は高次の制御だった。したがって自転車のギヤが自転車の「部品」だというのと、スイッチが電灯の「部品」だと言うのとでは、すでに「部品」の意味が違ってきている。むしろ、「スイッチ」は電灯というシステムの1「ユニット」なのである。自転車のギヤを「部品」というのはわかるが、スイッチを点灯の「部品」とは言わない。むしろスイッチは「装置」である。同じように自転車のギヤを「装置」というとそれは言い過ぎだろう。それはやはり「部品」なのである。それは〈形(物)〉が〈意味〉に関与している度合いに応じて区別される。ギヤよりもスイッチの方が知的なのである。丁度、象形文字の〈意味〉が文字の〈形〉に支配されている意味で、不自由な文字であるように、ギヤという機械は、不自由な機械なのである。
そうやって、現代の機械論の先端は、電気的な関係を超えて情報的な関係(情報的な制御)である。機械的→電気的→情報的(コンピュータ的)というふうに進化してきたのが、機械の歴史(機械が知的になる、自由になる歴史)と言ってもよい。
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