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ベータフェロン薬害調査結果が公式に新聞発表された ― 今頃発表されても…[家内の症状報告]
(2008-04-20 23:30:41) by 芦田 宏直


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ついにベータフェロン薬害についての厚労省の「全国緊急調査」結果が4月18日読売新聞で報告されました(http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080418-OYT8T00510.htm)。

全国977医療機関に緊急調査を実施。ベータフェロン「治療を受けた患者計308人のデータを分析したところ、37%に当たる114人が治療を中止していた」とのこと。

「日本神経治療学会と日本神経免疫学会は2004年、一時的に症状が悪化しても進行を抑える可能性があるので薬の使用を中止すべきではない、とする治療指針を作成したが、両学会はこの指針の見直しを始めた」と続けて読売新聞は書いている。この薬に群がっていた研究者達もやっと“事実”を認めざるを得なくなった、ということか。

私の家内は「一時的に症状が悪化しても進行を抑える可能性があるので薬の使用を中止すべきではない、とする治療指針」の犠牲になった1人。ここまでくるのに、4年もかかったということだ。複雑な思いです。

この薬(ベータフェロン)についての私の現在の理解は以下の通りです(ほとんどが今年2月来のPさんとのやりとりを整理したものです)。

1) ベータフェロン効能論の起源は、おそらく1981年のScience誌の論文に遡る。

2) 当時CMSはウイルス感染が「引き金」になるという議論があり、抗ウイルス効果を持つインターフェロンが注目された。

3) 線維芽細胞から抽出されたベータインターフェロンを(当時は当該物質は血液脳関門をほぼ通過せず体循環投与は効果が乏しいと考えられ)脳脊髄液中へ髄注することが考えられた。

4) 実際にMS患者に対するいわば人体実験をニューヨークの研究者がやってみたところ、再発抑制効果が出た。この論文を契機として、アルファインターフェロンやガンマインターフェロンも同じように人体実験され、ガンマに至っては相当の増悪を来す結果となり、この3者の中で最もベータが良いということで残っていった。

5) しかし実際には抗ウイルス効果は直接の関係性がないと後日指摘され、何らかの免疫調節作用かといわれるに至っている。

6) ベータフェロンはT細胞に対して何らかの修飾をする「免疫修飾能」があると推察されており(後だしジャンケンのように、当初からこの期待があったような説明が付け加えられているが、前述のように、きっかけは1981年のScience誌にあるように「抗ウイルス効果」を期待したものだった)、FDAに認可されたNatalizumabはこういったリンパ球が脳血管関門を越えられないようにする目的で、脳血管関門を通過するために必要なアルファ4インテグリンを阻害する抗体医薬として登場した。

7) こうした情況の中で(ベータフェロン=T細胞免疫修飾機能論の中で)、1996年7月にMayoの医師らが、Brain Pathology誌にMS病巣におけるオリゴの生き死にパターンにはバラエティがあることを指摘。その後2000年6月のAnnals of Neurology誌に同じMayoの医師らが、MSにおいて脱髄進行中の病巣を多数解析し、その分類を下記のように示した。

Type1=T細胞とマクロファージのみからなる炎症(=細胞性免疫)
Type2=免疫グロブリンと補体からなる炎症(=液性免疫)
Type3=オリゴの自発的死(アポトーシス)による脱髄が主体で免疫グロブリン・補体・髄鞘再生を認めないもの

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