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12 re(2):「なぜ人を殺してはいけないのか」
2000/10/16(月)01:13 - 芦田 - 9542 hit(s)


「その存在の最初から」というのは、岸田秀が何とかの一つ覚えのように人間は「本能の壊れた存在」と言い続けている事態に対応していることだと思います。
 ライオンが自分より“弱い”動物を殺すことは、本能的な必然ですが、子供や女性が、自分より“強い”大人や男性を殺すことは、人間には十分あり得ることです。
 そしてそういった自由が子供が大人を尊敬する根拠であったり、女性が男性を愛する理由であったりしているわけです。

 青少年の諸問題は、地域コミュニティーが完全に解体し、さらには、その元になる家族が解体しつつあるということのあらわれです。
 子どもたちは、今、家庭でも、学校でも、地域でもひとりぼっちになっています。
 団地や高層マンションの出現、コンピュータネットワークによる情報化社会への加速化、こういった諸現象は、自然的な時間や場所を均質化し、人間の家族や地域への帰属性をどんどん希薄なものにしてきました。子どもであっても、個として原子化されておりたえず帰属感のない不安な状況に置かれていると言えます。
 端的な例は、携帯電話です。家庭の中でも、いまでは小学生までもが携帯電話を使っており、各部屋が直接に外部に開放された状態になっています。同じ一つ屋根の下に居ながら、別々の居住状態が生じているのです。これは、家族の解体現象の究極の状態と言えます。
 家庭のメンバーがそれぞれ携帯電話をもつことによって、交友関係・知人関係が家庭の中の一台の、共通の電話を通さずに、つまり〈居間〉を通さずにパーソナル化し、家庭のすべての成員が、独立して居住しているような環境が生じています。
 つまり、家庭内であっても誰が誰とつきあっているのかわからないような環境が生じている。
 これまで、お父さんやお母さんが電話を“取り次ぐ”ため、電話をかけるのに、或る種の敷居のようなものがあり、それが電話をかけるのに常識的な時間帯、かける相手の選別性、かける話題の選別性を形成していましたが、携帯電話で、取り次ぎの必要性がなくなりはじめた途端、そのような“規制”と“連携”がゆるんでしまっているわけです。
 学校や帰り道の時間や空間もそれに伴って変質しはじめています。
 もはや学校やその帰り道という概念は彼ら・彼女らにはありません。携帯電話によっていつでもどこでも(たとえ授業時間中であっても)連絡が取れるからです。
 深夜に家庭で連絡が取れるということと授業時間中に連絡が取れるということとは彼らにとってほとんど同じことなのです。
 学校内で連絡が自由にとれることによって、彼ら・彼女らの帰り道にはすでに・毎日多くのスケジュールが多層に入り込んでおり、学校内の時間割と匹敵する、あるいはそれ以上の時間割ができあがっています。
 一日(“放課後”)に会う友達も1種類とは限らない。買い物をする友達、ゲーム仲間、カラオケの友達、買い物友達、食事をする友達など何種類もの友達の“引き出し”ができあがっています。
 つまり彼ら・彼女たち(特に彼女たち)が分厚い手帳を持ち始めた時期とポケベルや携帯電話が普及しはじめた時期とは重なっていおり、もはや学校・帰り道・家庭という空間・時間は解体しているのです。
 彼ら・彼女たちは、機能的な関係においてしか関係をもたなくなっているのです。
 一見、華やかに見える彼ら・彼女らの生活も、“用”がなければいつでも他人の関係に転化してしまう、きわめて不安定な絆の中でしか存在していないのです。
 従来の意味での家庭や学校、それを取り巻く地域(コミュニティ)への帰属性がなくなっているため、子どもが“育つ”環境が、情報という一元的な(平板な)メディアでしかなくなっているため、少しでも不安定な要素が入り込むと一気に精神状態が悪化するわけです。
 むろん、情報化社会を否定することが問題であるのではありません。新しい時代に即応した家庭と学校を線で結ぶ(点や機能で結ぶのではなく)コミュニティの形成が必要なのです。
 学校の地域開放(単なる校庭開放だけではなく、生涯学習の地域拠点にするとか、保育園、幼稚園と地域の高齢者との交流を地域育児システムとして組み込むなどなど)を真っ先に進めるべきです。


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