番号 | 日付 | 題名 | 投稿者 | 返信数 | 読出数 |
1074 | 9/2(金) 00:03:23 |
何だって、鼻が曲がっているだって? 性格も曲がっているからねえ。 | 芦田宏直 | 0 | 5433 |
今日は、面白い一日だった。 ここ数年、鼻がよく詰まる。別に花粉症的な季節病ではなく、一年中、鼻が詰まる。しかも風邪でもない。咳も滅多に出ない。 講演の前(緊張したとき)とか、くだらない会議の時にも鼻が詰まる。きっと精神的な病が、たまたま鼻の粘膜に表れるだけだろう、と思って放っておいた。 しかし、50才も越えた今、最近は夜が辛い。別に糖尿病でもないが、夜に鼻が詰まると、口呼吸しかできないため、口腔が乾く。目が覚める。水を飲むとトイレが近くなる(特に冷たい麦茶を飲むとトイレで1時間以内に目が覚めるが、なぜかへルシア緑茶だと目が覚めない)。口が渇いて目が覚めるのが一番辛い。睡眠も充分取れないからだ。 それにもう一つ、10年前くらいからの症状がある。鼻がつまるから、歯を磨いて数分間口呼吸ができないと無酸素状態が続くことになり、唾液と交わり液状になった歯磨き粉をはき出すとき、オエー、と大きな嗚咽(おえつ)が出る。家中に毎日朝7:00前後にそれがとどろき渡る。まるで二日酔いで肝臓に負担がかかっているよっぱらいの朝のようだ。酒をまったく飲まない私は、毎日毎日朝7:00に、オエーと歯磨き粉を吐いている。これが我が家の朝の鳩時計だ。 年を取ると、こんな毎日に(特に夜の口腔の乾きに)耐えられなくなってきた。 そこで、意を決して、今日のお昼休みに耳鼻咽喉科を訪ねた。2001年6月以来ほぼ5年ぶりの病院(http://www.ashida.info/trees/trees.cgi?log=&v=379&e=msg&lp=379&st=60)。 テラハウスの6階の売店のカマキリのような顔をした親切なおばさんに紹介されて、東中野駅の近くにある「池田耳鼻咽喉科」に飛び込みで入った。ここは予約制ではないが、夏休みが終わって今日はすいていた。 池田先生は院長の女医さん。アルバイトの先生ではないところがまず安心。先に来ている人の診断を耳を澄まして聞いているとなかなかのもの。 順番が来た。 「どうしましたか」 「季節にかかわらず、鼻が詰まります。一日の中でも不定期に鼻が詰まります。精神的なもののようにも思えますが、もう10年、20年同じ状態が続いています」。 「咳は出ますか」 「特には出ません」 「頭痛は?」 「しません」 「耳はどうですか」 「特に何もありません」 「では少し診てみましょう」 (例の鏡面パラボラアンテナのようなめがねで私の鼻の中をのぞき込む) 「あら、やっぱり詰まっているわね」 「これは、レントゲンを撮るしかないわね。2階で取ってきてください」 (20分で2枚のレントゲン撮影が終わり、フィルムをもって先生の元に戻る) (もうお昼の部は私が最後で看護婦たちが私と先生の話に集中している) 「あらー、あなたの鼻孔、どこにも穴があいていないわ」 「まず、はなの真ん中の骨が左に大きく曲がっている。見てよ、わかるでしょ」 「本当ですね」 「普通、こんなふうに曲がっても、その分、反対側が広がっているから呼吸はできるけれど、今度はその反対側にポリープが出来ていて、広がった分を埋めてしまっている。眼底から鼻孔にかけて、黒い部分(穴が空いている部分)がほとんどなくて全体がもやのようになっているでしょ。これじゃ、鼻が詰まるに決まっている」 「ポリープって?」 「結構、出来る人には出来るのよ」 「たしかに20年以上前から、右の鼻の穴の中がふくらんで詰まっているのは知っていましたが、あれはポリープですか」 「そうよ。あなた、そんなに昔からよくも放っておいたわね。こんな鼻は珍しいわよ。外から見ても何も変わったように見えないのにね」 「それに別に生きていけないわけじゃないですからね」 (先生、看護婦、一同笑い)。 「これは私のところでは治せないわ。手術しかない」 「まず、鼻の骨をまっすぐにして、それからポリープを取る。それですっきりしますよ」 「入院はどれくらいですか」 「一週間くらいかな」 「退院後、包帯やマスクをしたり、特に完全復帰まで時間がかかることはありませんか」 「1週間で退院すれば、あとは、激しい運動を避ける以外、何も外からは変化はありません。手術跡もまったく残らないし」 「私は慶応だから、慶応病院を紹介しますが、どうします」 「この手術は技術の高低に影響を受けますか」 「耳鼻科の手術としては、初級ですけれども、うまい下手はやはりありますよね」 「先生の母校の現在の水準はどうですか」 「慶応病院の耳鼻科ね、そうねえ」(と先生は考え込んでしまった)。 「その様子だと、母校にいい印象はない?」(看護婦・笑い) 「そんなことないけれども、私の紹介した教授が必ずしも執刀するわけじゃないから。大学病院は何よりも教育機関だから」 「それは止めた方がいいと言うことですね」 「そんなことはないけれども」 「先生のご存じの方で、直接の執刀医の名医の方はおられませんか」 (うーんと少し考えて) 「いないわね」 「わかりました。それじゃ、少しこちらでも探してみます」 「そうね、いろいろとご存じのようだし。もしどうしてもと言うことなら、再度お越しください。私の方でもあたってみます」 これで、5年ぶりの病院を後にした。私は健康診断もまったく受けていないから、本当に病院は珍しい。家内の病院通い(http://www.ashida.info/trees/trees.cgi?log=&v=379&e=msg&lp=379&st=60)で病院自体には慣れているが、自分の病気には無頓着だ。 レントゲンを撮ったから2030円かかったが、それ以外には、池田先生は薬も何もくれなかった。「早く手術した方がいいわよ」。これが最後の言葉。 そうは言っても、仕事もあるし、10月にはビッグな講演が二つ控えている。鼻声では盛り上がらないかもしれないが、手術に失敗して、鼻がマイケル・ジャクソンのようになっても困る。 それに名医を捜す時間もかかるし、そのうえ、1週間くらいなら快適な個室のある病院がいい。できることなら、Don't Disturbの札が下げられる病院がいい。看護婦のノックは形式的すぎてよくない、なんて家に帰って、“病院作戦”を独り言のように言っていたら、“難病”の家内が「ホテルじゃないんだから」と騒いでいる。 「『特別室』(別名「特室」)なら、Don't Disturbは可能だけれども、それは超VIPか、死ぬ人が入る部屋よ」と病院に詳しい家内が解説してくれる。私はムキになって、どこかホテルに行ってDon't Disturbの札をもらって、私の個室病室のノブにかけてやる、と叫んでいた。家内は12歳の時以来長年付き合っていて、私の鼻が曲がっていることがわからなかった自分を情けない、と悔やんでいた。なんのこっちゃ(ここは関西弁で、理解してください)。 でも鼻の手術をすると頭もすっきりし、今よりも100倍も知能パワーが上がり、仕事のパワーも1000倍上がるかもしれない。鼻が曲がるように曲がっていた性格ももう少し人に好かれるようになるかもしれない。人生51才からの再出発か。それで食べ物や人間の好みも変わって、家族も捨てて、本当に再出発か。そこまで革命的に変われるものでもないか。「私、嫌われたらどうしよう?」と家内がそばでつぶやく。なんのこっちゃ(ふたたび関西弁)。 しかし、この秋から年末にかけて、私に入院する空き時間はできるのだろうか。10年、20年一緒に暮らしてきた、私の鼻と急におさらばするのも惜しい。とりあえず、今日の病院の診察はなかったことにして忘れることにしよう。誰か、気が向いたら、個室の快適な、執刀名医のいる耳鼻科を教えてください。 |
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