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【増補版】一生に一度の披露宴謝辞(親族を代表して)[日常]
(2023-06-12 14:49:24) by 芦田 宏直


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今日のこの披露宴、最初のつかみの演出がよかっただけで、あとは何というかありがちな演出で、なんだかなぁと(会場・笑)。

先ほどの新婦の、ご両親への言葉も長すぎてつまらないし(新婦から「ひどーい」の悲鳴、吉村崇さんから「言い過ぎだろー」会場・大笑)。

プロデューサーというものは(会場・笑)、表現者なのですから、個人的な出来事に騒いだりしてはいけないのです。普段は控えめで、公私共々いろいろな出来事を心に収めて(治めて、納めて)、それらすべての思いを〈作品〉に集中して爆発させる、それが〈表現〉というもの、「プロデューサー」というもの(「そのとおりだぁ」という吉村崇さんの大きな掛け声が。大笑)。

だから、こんなところで盛り上がっていてはいけないのです。その意味で今日の披露宴は、62点でした(「点数が高すぎるぞー」と大声の吉村崇さん。大笑。そこで私は「身内のえこひいきと許してください(笑)と)。

先ほどは新婦のナツコさんからご両親への御挨拶の中にもありましたが、もしナツコさんのお父様が「優しい」お父様だとすれば、芦田の家系は皮肉やいじわるや批判の遺伝子の固まりで、この両家が一緒になることは、それはそれで人類にとっては(会場・笑)、いいことではないかと思っております。

その批判的精神で、『巨人の星』の星一徹のようになって鍛えたきっかけがフジテレビの『めちゃイケ』でした(「他局かよー」の声、笑)。土曜日20:00にはテレビの前に座って、「太郎、この演出の意味がわかるか、このテレビカメラの、この画角の意味がわかるか、ここでディレクターが指示出しているぞ」(会場・大笑)などと毎週私は解説し続けたのです。太郎は黙って聞いていましたが、結果的にはそのことが積もり積もって、テレビ局にお世話になることになったのかなと思っています。

学生時代、ろくに勉強もしていなかった太郎ですが、なぜか就職には強くて、三井物産、電通、博報堂、テレビ朝日と次次に内定をもらいまして、毎回面接を終える度に?家族会議?を開いていました。「人生で一度くらいはまともな勉強をしないと」と言って、私は三井物産を押していました。太郎もその気になっていましたが、テレ朝の人事担当が、「物産に行くのは仕方ないけど、最後にわれわれのお願いだけは聞いて欲しい」と、生放送のミュージックステーションの現場を太郎に見せてくれたわけです。これがいけなかった(会場・笑)。

秒単位で一挙手一投足乱れず動く、大道具さん、小道具さん、タレントさん達の動きをみて、「自分の仕事場はここにしかない」と太郎は思ったようです。「NHK紅白のスタッフもこの生放送演出の現場を勉強のために見に来るらしいよ」と家に帰ってきて興奮して彼は喋っていました。電通のゴルフ焼けした役員には、「テレビなんて俺たちが作ってんだよ」(会場・笑い)と驚かされても、太郎の決断は変わることはありませんでした。これも親のテレビ好きの自業自得かな、と私は諦めざるを得ませんでした。

そんな太郎にとって、この一年は大変な年でした。昨年(2022年)1月にアマゾンスタディオ(Amazon Studios)から引き抜きの話があって、テレ朝を辞めるという話を私が知ったのは昨年の7月。引き抜きとは言っても、一ヶ月に一回程度アメリカ本社の面接を英語で受けて、決まったのが7月。引き抜きという外面的なきっかけとは言え、彼の動機は、高齢者寄りにますます試聴層が限られつつあるテレビとはまた別のプラットフォームで仕事をしたいというものでした。

私は?昭和の人間?ですので、太郎がテレ朝に就職したときから、絶対辞めるな、やるなら役員を目指せ、と言っていましたから、まさに「寝耳に水」でしたが、条件はただ一つ「?円満退社?であること」でした。

テレ朝があなたを育ててくれたのだから、これまで一緒に仕事をさせて頂いた、今日この会場にもたくさん来て頂いている演者さんのみなさん、またテレ朝の先輩・同期・後輩のみなさんとも、今後一緒に仕事ができるような辞め方をしないと、意味がない。その関係が築けていないのなら辞める資格も権利もないと私は言いました。

辞める過程の中で、印象に残ったことがありました。テレ朝の名プロデューサー、加地さんが太郎に語った言葉です。「私もあなたの立場だったら、同じ行動を取ったかもしれない。でも私は演者たち(芸人さんたち)を捨てることが出来なかった」と。さきほどサーヤさんも御挨拶の中で「裏切り者め…(笑)」と言われていましたが、よりよい作品を作りたいといつも奮闘されている演者さんからすれば当然のことではないかと(「そうだー」と会場の声、笑)。

この演者さんたちの気持ちを断ち切らないためにも?円満退社?は必須だったわけです。なによりも演者さん自身がそれを望んでいたのだと思います。今日はすべてがテレ朝演出のような披露宴になっていますが、これこそが演者さんへの恩返しだったのではないかと思います(会場・「そうだぁー」の声、笑)。

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