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【増補改訂版】今日の大学教育の衰退について ― あるいは、学力論、動機論、試験論、そして教育の組織性についてver15.0[これからの大学]
(2022-10-18 22:51:24) by 芦田 宏直


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カリキュラムの全体(1年次から4年次へと進む時間的な進行の全体)は、それを作った教員しか分析・評価できない。学生は入学した時点から順次的に(前から)学んでいく。前からしか学べない者を学生と言う。前から受講を進めていく中で学習ペースを掴んでいく。最後に完結する全体(カリキュラム)、つまり後(うしろ)(end)を知っている教員からすれば、前の部分での(たとえば一年次の前期での)躓きは「後からどうにでもなる」ものかもしれないが ― この元凶が動機主義、ゼミ・演習主義 ― 、その後(うしろ)(end)が見えない学生には決定的で絶望的な躓きでしかない。この後先の断絶と対立が退学要因を形成している。それは、結局のところ、この「後からどうにでもなる」という試験調整(●●)による単位認定権の私物化に発している。それは、学生の学習ペースの調律に失敗している反カリキュラム主義なのである。大学教員は、試験の私物化をどう自己返上するのだろうか。そういう自己返上を大学が組織として支援する方法はないのだろうか。(了)

?参照・参考文献(言及順)

『条件なき大学』ジャック・デリダ(2008年)
大学審議会答申「平成五年度以降の高等教育の計画的整備について」(1991年)
『ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか?』栄陽子(2014年)
『アメリカの反知性主義』R・ホーフスタッター(2003年)
『社会学(改訂第三版)』ギデンズ(1998年)
『アメリカの大学・ニッポンの大学』苅谷剛彦(1992年)
中教審答申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」(1971年)
『大学改革を問い直す』天野郁夫(2013年)
『シラバス論 ― 大学の時代と時間、あるいは〈知識〉の死と再生について』芦田宏直(2019年)
中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」(2008年)
「『専門学校教育と卒業生のキャリアに関する調査』から見えてきた課題」小方直幸(2009年)
『諸学部の争い』カント(岩波版カント全集18巻)
『理性の不安』坂部恵(1976年)
『学歴無用論』盛田昭夫(1987年)
『学ぶ意欲の心理学』市川伸一(2010年)
『論争・中流崩壊』「中央公論」編集部(2001年)
『なぜ教育論争は不毛なのか』苅谷剛彦(2003年)
『教育再生の迷走』苅谷剛彦(2008年)
『高学歴社会の大学』マーチン・トロウ(1976年)
中教審答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」(2012年)
文科省「高等学校学習指導要領解説 総則編」1978年
文科省「高等学校学習指導要領解説 総則編」1989年
「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」(2018年)
中曽根臨時教育審議会「第一次答申」(1985年)〜「第四次答申」(1987年)
『臨教審の軌跡』内田健三(1987年)
『多元化する「能力」と日本社会』本田由紀(2005年)
「中流崩壊に手を貸す教育改革」in『論争・中流崩壊』苅谷剛彦(2003年)
『階層化日本と教育危機 ― 不平等再生産から意欲格差社会へ』苅谷剛彦(2001年)
『人を伸ばす力』エドワード・L・デシ+リチャード・フラスト(1999年)
『科学と人間行動』B.F.スキナー(2003年)
『やる気はどこから来るのか』奈須正裕(2002年)
『過去と未来の間 ― 政治思想への8試論』ハンナ・アーレント(1994年)
『イェルサレムのアイヒマン』ハンナ・アーレント(2017年)
『名指しと必然性』ソール A.クリプキ(1985年)
『反グローバリズム』金子勝(1999年)
『オレ様化する子どもたち』諏訪哲二(2005年)
『努力する人間になってはいけない ― 学校と仕事と社会の新人論』芦田宏直(2013年)
「歴史のなかの教育」寺崎弘昭in天野郁夫編『教育への問い』、1997年)
『大学の実力2019』讀賣新聞(2018年)
『高学歴社会の大学』マーチン・トロウ(1976年)
『大学再生への具体像(第二版)』潮木守一(2013年)
『街場の大学論』内田樹(2008年)
『戦後日本の高等教育改革政策』土持ゲーリー法一(2006年)
『アメリカの大学』潮木守一(1993年)
『若者はなぜ「就職」できなくなったのか?』児美川孝一郎(2011年)
『アマゾンのすごい会議』佐藤将之(2020年)
『判例時報』平成29年8月21号

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