もちろん、われわれの授業評価(AG評価)は終着点なのではない(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=297)。不合格者をどうするのかという課題は依然として残ったまま。G評価だった、と結果を公表するだけでは何もしたことにならない。そのため〈AG評価〉とは別に〈課題発生評価〉を行っています。
これは、みずからの授業の“犠牲者”でもある不合格学生に対するフォローをどうすすめたかをはかる体制です。
学校の負の要素の最大のものは、退学。これは、もっとも強い形で在学生から学校体制全体を批判された形態です。次には、長期欠席→欠席と続きます。欠席は退学の日常的な形態です。欠席要因の最大のものは、「授業がわからない」ということ。学校関係者はこんな当たり前のことをこれまでなかなか認めませんでした。「退学」も「欠席」もほとんどが学生の個人的事情を前面化させて、校側の教育体制の反省にはほとんどつながりませんでした。たとえば「退学」の「理由」に挙げられるものはほとんどの場合、家族の「経済的事情」か本人の「進路変更」です。
しかし、こんなものは理由にはなりません。「経済的事情」について言えば、「それでは彼(彼女)よりも経済的事情の悪い者はひとりも校内にいないのか?」と担当科長に問い返せば、「そうでもない」という答えが返ってくるに違いないからです。「進路変更」の場合はもっと理由になりません。それは、勉強を積み重ねはしたが、結局のところ、学校側が学生本人に自信と将来展望を切り開かせることができなかったことの表れにすぎないからです。
結局、つまらない授業を改善もせず放置しているか、「わからない」と学生が授業に躓きかけたときに即座にフォローの体制が取れるかどうかが、これらの「退学」を防ぐ最大の課題になります。
出席しても授業が「わからない」(授業カルテを不合格なまま終えてしまう)。これが「欠席」を呼び、「欠席」を繰り返し、当然のように試験に落第し、最後は「退学」する。すべては90分の授業の中で起こっていることです。
われわれの授業シート・カルテ体制は、何を学ぶべきか(「今日の授業」シート)、何を学べたのか(「授業カルテ」)を90分単位にくり返すことによって、「わからない」授業の最初の発生に目を向けることができるようになっています。
どう目を向けるのか。
これについては、われわれは、課題ポイント制を取っています。「課題」ポイントというのは、教え損なった課題を学校側が背負ったという意味で、そういった名称を付けています。最初の頃は、履修「負債」、つまり学生に教え損ねた“借り”を作ってしまったという意味で「負債」ポイントと言ったりもしていましたが、それではあまりにも露骨すぎるということで、「課題」ポイントという名称に落ち着きました。
「課題」ポイントは、三つの指標で構成されています。
1)まず、欠席者対応について
欠席者が1人でもいたら、1課題ポイントが付きます。というのも「欠席者」というのは、聞くべき授業を全く聞いていないという意味で、カルテ「不合格者」の極限指標と考えるべきだからです。2人いれば、2課題ポイント付きます。これらは「AG評価」のように「率」でポイント化するのではなく、実数でポイント化します。個別学生への早期対応が求められているのですから、実数でなければ意味がありません。
2)カルテ不合格者について
これは小テストである「授業カルテ」で59点以下を取った場合。1人不合格であれば、1ポイント。2人不合格であれば、2ポイントというように、これもまた実数でポイントが加算されます。
3)カルテ未提出者について
出席しているにもかかわらず、カルテ(あるいはカルテ点数)が回収(記録)できない場合。こういった未回収学生は、ほとんどの場合、59点以下の不合格者であると見なしてよい。未回収学生=潜在的な不合格学生。したがって、これもまた未回収者(点数未記録者)1人に付き、1ポイント。同じように実数でポイントが加算されます。
以上、実数3指標によってフォロー課題数が一授業(90分)毎に算出されます。たとえば、私の先の授業の場合、
1)欠席者が2名で、2ポイント
2)カルテ不合格者が7名で、7ポイント
3)カルテ未提出者が2名で、2ポイント
計11ポイントの課題が発生したことになります。つまり11名のコマ未履修学生(潜在的な退学者)を発生させたことになります。
この総数(11ポイント)を「課題発生数」と呼び、各科目内での累積、各科内での累積、各学校内での累積を毎日集計して学内公表しています。一日で、どのくらいの未履修学生(のべ学生数)を発生させたのかが、学校単位、科単位、科目単位、教員単位ですぐにわかるようになっています。
さてこれらの「課題発生数」はそれをわかることが目的なのではなく、学生のフォローに回ることが本来の目的です。