昨日の卒業式、うかつにも証書授与のときに、泣いてしまった。インテリア科の学生が一人、入学してまもなく夏休みを迎える前に急性白血病で亡くなり、その学年の卒業式だったのを緊張で忘れていた。科長がその学生の名前を「今はいないけれども読み上げます」と言ったときに急に思い出して、代表学生が壇上に上がり私の前に近づいてきたときにはもうダメ。すでに大粒の涙がこぼれ落ちていた。
だから、卒業証書の文面が息詰まって読めない。500人近くいる大ホールの中、来賓、保護者、学生、教職員の前で泣いてしまった。まさに「鬼の目にも涙」か。この卒業式で我が学園は4校(中野校、世田谷校、国立校、品川校)すべての卒業式が終わるが、私は、そのすべてに参加した。
そのとき、いちばん気になっていたのは、学生たちのスーツだった。自分の息子の卒業式に、スーツを買ってやったことが(一緒に買いに行って私が選んだ)、頭の中に残っていて、私の息子もスーツを着る年頃になったのか、と一人感慨にふけっていたものだ。だから我が卒業生たちが新しいスーツを身にまとって壇上に立つとき、そのお父さんやお母さんの気持ちはどんなものだろう、と思っていた。それだけでも、心の中で泣いていた。
それが今度は、亡くなってしまった学生の卒業式。泣かないはずがない。大ホールのマイクの前で、私の泣き声と息詰まって読み上げるたどたどしい言葉が拡声され響く。突然、事務長が異常を察して、緊張が走る演台に、小走りにハンカチを持ってきたが(ハンカチくらい持ってますよ)、拭いたら様にならない(それにそのハンカチ、汚そうだった)。涙も拭かずにそのまま証書授与。「卒業証書 本校インテリア科所定の課程を修め卒業したことを証し、専門士(工業専門課程)と称することを認めます。平成16年3月23日 学校法人 小山学園 東京工科専門学校 校長 芦田宏直」。こんな短い文面を読み上げるのにどれだけかかったことか。総代のA君には、「(亡くなった)K君の分も」と小声で泣きながら言って証書を渡した。思い出深い卒業式になった。
以下は、当日原稿なしで話した式辞のすべてです。
謹んでK君、K君のお父様、お母様に捧げます。私は、彼のスーツ姿こそが見たかった。
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