リコーテクノシステムズ川村社長との会食の席(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=1019)で私が話したことは、以下のような話だった。帰りに、リコーの浜田広会長(現最高顧問)の著作(『浜田広が語る「随所に主となる」人間経営学』講談社)や前東京リコーの相澤将之社長の著作(『営業の理』ダイヤモンド社)を頂いたが、いくつか私も共鳴するところがあったので、それを補って私が当日話したことを整理してみた。
私もまた、仕事上多くの営業と出会う。我が学園は、残念ながらコピー機はZEROX、輪転機はリソグラフだが、その営業やサービスマンのみならず、広報・募集の営業など一々付き合っていたら自分の仕事ができないくらいだ。
営業はいつも街を歩き回っている(顧客をつかまえられずにさまよっている)。この“行動”を把握するのは難しい。売り上げ数字で把握するだけ。数字で伸びないなら、「もっと頑張れ」と言うだけ(言われるだけ)。とりあえず売り上げを達成した場合は(来月の売り上げのために、後の有望顧客分の成績は残しておいて)、今月の残った後半は喫茶店で休んでいるか、自分の買い物をしている。そんな感じか。数字だけで管理するなら、私が営業をやってもそうなるかもしれない。
私なら、たぶん、日報(営業日報)を重視する。毎日A4一枚(1000字〜1200文字)以上の日報を書かせる。
営業は会社の中で顧客(マーケット)に一番近いところにいる存在。どんなマーケット調査にも届かない情報がそこに眠っている。
たとえば、コピー機のサービスマンは、コピー機のガラス面をクリーニングしながら、その会社のフロアーで流れる“顧客情報”を無意識のうちに聞き取っている。コピー機のサービスマンと営業の違いは、営業はその会社のチャンピオン(社内でコピー機購入についての決定権を持った人間)を間違う場合があるが、サービスマンは、その訪問頻度からしてチャンピオンを把握している。
私の学校でも、科長や教務担当の者や事務長と、“業者”とが応接フロアーで長々と話しているのをよく見かけるが、ここでの話が校長の私にまで上がってきたことなどここ3年間一度もない。私の職員と長々と話し続けた営業は全くの無駄話をし続けたことになる。
また“業者”との、こういった話に長々と付き合っている職員ほど、“残業”が多く、私の前では(組合に対しても)「忙しい、忙しい」「時間がない、時間がない」と訴える。最近、私はこの件に関して、業者との面会全面禁止という“御触れ”を出した。「業者が何か提案してきたら、私が最初に会うから(最初にあって、重要だと判断した場合には関連部署に振るから)、あなた達が、業者と面会するのは禁止します」というものだ。そもそも現場も中間管理者もルーティン業務が存在している(ルーティン業務のある者を“現場”、“中間職”と言うのだがら)。そんな業務の中で任意の業者の提案にいちいち関わっていたら、「仕事ができない」のは当たり前。一般に業者と付き合うのが好きな職員というのは、自分が(顧客として扱われて)持ち上げられるのが好きな覇権主義者。会社や組織のことなど何も考えていない。
そういった騙されやすい営業と違って、コピーのサービスマンたちは、作業中の背中で会社の何かを感じている。勢いのある会社かどうかは、営業よりもコピーのサービスマンの方がはるかに正確に早期に社内情報をつかんでいる。誰が会社のキーマン(チャンピオン)かも社内の会話を聞いていればすぐにわかる。キーマンは担当部署や役職者の“外”にいる場合も多くあるが、これは形式的なアポを取りながらの訪問営業ではなかなか見えてこないし、社内フロアーには簡単に入れない営業マン営業の限界だ。その点、簡単にフロアー内に入り込めるサービスマンははるかに有利。コピー機や事務機の場合などは、営業よりも訪問回数が圧倒的に多いためサービスマンの感度や情報の方がはるかに重要だ。
営業マンに日報を書かせるだけではなく、サービスマンにも機械故障の報告や記録にとどまらない営業日報的な情報を上げさせるべきだ。
営業日報管理の基本は、以下の通り。
A4・1枚くらい(1000字〜1200字)以上の文字情報を上げさせる。「以下」ではなく「以上」が大切。雑誌原稿ではないのだから、「以上」規定が必要。
有りもしないことをでっち上げで書く場合もあるが、ありもしないことを1000字以上も書ければ、それはそれで貴重な能力。通常は書くのが苦手な者が営業マンやサービスマンになっている場合が多いが、そのせいで、逆に書くためには、顧客情報を真剣に聞き取るようになる。書くことが苦手であればあるほど、“ネタ”がなければ書けないからだ。