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続・経済産業省の仕事 ― コミュニケーション論を撃墜した[教育]
(2003-12-21 22:28:53) by 芦田 宏直


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 今週(15日〜19日)は(もまた)、忙しい一週間だった。家内の転院(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=245.124.42)などは逆に一息付ける瞬間のように。会議の時間が、この1週間(5日間)だけで30時間近くもあった。特に18日木曜日は、一日で12時間近くも会議をやっていた。朝、来年度カリキュラムを決めるための臨時校長会(この日は、自動車系とバイオテクノロジー科、2科のカリキュラム検討)。これが、朝9:00〜12:30まで。

 その後、大江戸線を利用して「東中野」から「青山一丁目」まで。赤坂8丁目にある野田一夫先生(http://www.nodakazuo.com/profile.html)の事務所(「アドホック野田一夫事務所」)に直行。例の経済産業省の仕事(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=212)の2回目の会議。今回の会議から、大臣官房室の「調査官」(小滝さん)も加わった。この会議が13:00〜16:00。ふたたび学校に戻り、全学4校の教務会議(私はこの会議の議長)。この会議では、来春に発行する「学校案内」パンフレットにいよいよ「自己点検・評価」の全データを外部公表するための準備案件が目白押し。会議は、18:00〜23:30まで。ビルのロックアウトが10:00だが、管理会社のおじさんも怒っていた。計12時間。

 さて、経済産業省の、このプロジェクト(「産業界から見た大学の人材育成評価に関する調査研究」)。一回目は、コミュニケーション能力必要論が大勢を占めていて、私は大変窮屈な思いがしていた(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=215.212.1)。だから、2回目の会議への参加は、半分気持ちが暗かった。

 この日の会議は最初、事務局の日本総合研究所http://www.jri.or.jp/index.htm(理事長寺島実郎http://www.jri.or.jp/rijicyou/cyosyo.htm)、主任研究員・富永さんから、(株)リクルート(http://www.recruit.co.jp/)の人材像(リクルートの人事部の採用指標)の調査報告があった(ヒアリング対応者は、人材マネジメント室マネジャー)。

 リクルート社の定期採用者応募者数は約21000名。その内毎年60名の採用。最終的な採用権限は、人事課課長及び人事担当役員とのこと。

 「新卒者の採用に当たっては、即戦力タイプの人材を求めるのではなく、あくまで将来性(人材のポテンシャル)を重視した選考を行っている。特に人材のポテンシャルを判断する評価指標として、コミュニケーション能力を第一に挙げている」(富永報告書より)

 「近年、採用方針に特に変化はないが、学者や評論家タイプの人材ではなく、顧客の業界を理解し、効果的な関係を構築することのできる行動力のある実践向きの人材を求めている」「人物本位の選考を行っているため、他社と比較して面接回数を増やし、個人面接を主体とした選考方法を採用している。選考の終盤では一人に1回2時間程度を費やすなど長時間に渡った面接が行われる」

 「近年の学生のレベルの低下によって、採用担当チームでは本当に欲しい人材に出会えていない。定期採用の新卒者の退職率はおよそ6%。10年後は、入社時の半数が退職している」

 「採用に当たっては学校名及び学部名は一切不問。採用時点での専門知識の修得は問わない。結果的には有名大学出身者(早稲田大学、慶応大学)が採用者の多数を占めている」

 「経営環境の変化が加速化していることから大学時代に学んだ知識がすでに陳腐化して役に立たないケースも多い。専門知識の習得は配属後に修得すればよいと考えている。求めているのは知識ではなく、自らの知識の獲得の先にある知見である」

 「人材のポテンシャルを判断する指標として、コミュニケーション能力をもっとも重視している。採用面接時にコミュニケーション能力を見ることで、課題発見能力・課題設定能力、課題解決能力も同時に判断できる」(以上、富永報告書より)

 やっぱり、リクルートも、「コミュニケーション能力」「問題発見能力」といった人材指標が前面化していた。「私は、こんな調査は何千社、調査してもそうなる」と、富永さんの報告の終了後即座に発言した。

 私は次のように発言を続けた。「こういった企業の人事部の発言は、大学教育への“あきらめ”から来ている。どっちみち、大学の専門教育なんてあてにならない、というように。だからせめて“コミュニケーション能力”くらいは付けておいて欲しい、ということにすぎない」。

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