< ページ移動: 1 2 >
「芦田の毎日」読者の方から、185番の記事「『学校見学会』を信じてはいけない」(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=185)の最後の文章:「私の学校は、学校見学会はすごく下手ですが、授業はどこにも負けません」について、どこがどう負けない授業なのか、教えて欲しいとメールが極秘に来ました。どこまでうまく説明できるかわかりませんが、箇条書きで整理しましょう。私が毎朝見て回っている授業風景を整理するとわが学園には(とりあえず)11のポイントがあると言えます。
1.すべての授業で、開始チャイムが鳴る5分から10分前に教員が教室に入室していること
2.すべての授業で、開始チャイムが鳴る前に学生への資料配付(教材配布)が完了していること(まだ来ていない学生にはその学生の机上に教材・資料が配布されていること)。
3.すべての授業で、開始チャイムが鳴る前に入室している学生の出欠チェックが完了していること。
4.すべての授業で、開始チャイムが鳴ってほぼ1分以内に「今日の授業は … 」と実質的な授業開始が始まること。
5.〈シラバス〉(講義概要)のみならず、一コマ毎(90分単位)のシラバス=〈コマシラバス〉が存在していること。つまり毎日の授業毎(90分単位)に授業目標が学生に対して公開されていること。
6.その〈コマシラバス〉に基づいて、その授業でどんなことを学ぶのかを10の項目から解説するA4版の〈今日の授業シート〉(詳しくいうと、このシートには〈シラバス(全体目標)〉、そのコマで何を学ぶべきかを示した〈10の項目〉、10の項目を理解するための〈キーポイント〉、10の項目を理解するための〈参照資料の指示〉、教員のそのコマについての〈一言コメント〉といった5つの内容が記載されているA4用紙一枚)を毎回授業開始時に配布すること。
7.その「今日の授業シート」に基づいて、授業開始時5分から10分使って、教員が今からどんな順番に何を学ぶのかを概観する「授業概観」を行うこと。90分の授業を一つの書物になぞらえれば、「今日の授業シート」は一種の目次。その目次の解説を行うのが「授業概観」。学生と教員とがそのコマのストーリー(=概観)をあらかじめ共有して授業を始める。教員が何を話し出すかわからない授業は不安定そのものだ。少しでも最初の印象が悪いと後は誰も聞かないことになる。あらかじめ何がそのコマのポイントなのかを予告することは、学生の授業理解を強力にサポートする。
8.「授業概観」は、ただ紙を使って行うのではなく、プロジェクタでスクリーンに投射して(差し棒を使いながら)行うこと。テラハウス東京工科専門学校では、すべての「授業概観」は、パソコン=プロジェクタ投射しながら行われる(テラハウスすべての教室にその設備を用意している)。その方がはるかに学生の授業集中度が増すからである。われわれは、「それを〈参照指示性〉が高い授業」と呼んでいる。教科書の「どこどこを参照しなさい」という場合、どこを先生が指示したいのか、教科書のどこを指示しようとしているのか、それがわからなくて(くだらないことに)時間を取られることが多い。それだけでも集中度が落ちる。紙に目を落とし、先生の話を〈聞く〉だけでは、集中度は落ちる。シートが投射されたスクリーンを見ながら聞けば、はるかに学生の集中度は高まる。「参照指示性が高い」。授業シートのみならず、すべての授業で教員はパソコンにデータを集約し、それをプロジェクタ投射しながら授業進行している(その資料も学生の手元に配付しながら)。
これは、特にはやりのマルチメディア授業を意識しているというわけでもない。毎年毎年板書に同じことを書きながら、消えるトークと消える板書を繰り返している授業では進歩がない。毎年毎年同じ箇所で「わからない」学生を作っているだけだ。そもそも板書そのものが時間のかかる行為だ。書道の授業じゃあるまいし、基本内容を板書するというのはふざけた授業だ。板書はリアルタイムなメディア(その場で、その時に思いついたことだけを示すメディア)。教えるべきことは、集約性の高い、ポイントを示すのに適した投射(とその配付資料)で行う。これがテラハウス流。
9.90分の授業の最後に、先の「今日の授業シート」の10ポイントに対応した10問の〈授業カルテ〉(A4版シート1枚)、一種の小テストのようなものを行い、そのコマで学ぶべきことを学べたかどうかを教員、学生との間で確認し合うこと。このカルテで理解の欠落した部分は学校全体のサーバーにその日の内に記録され、学生の補習対策などの資料となる(学校側からすれば、なぜ、学生にわからない授業をしてしまったのかの反省材料になる)。全学すべての授業のコマ単位の履修欠損(授業カルテの何番の問題が学生の誰にわからなかったのかということの特定を、われわれは「履修欠損」と呼んでいる)がその日の内にわかるようになっている。
< ページ移動: 1 2 >