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久米宏が『ニュースステーション』を降板するらしい(今日26日、ニュースステーションでその会見を流していた)。1985年に始まった、この番組だが、彼のトークを支えていたのは、78年に始まった『ベストテン』(TBS)の生放送のトークだった。
そう普通思われているが、私には彼に影響を与えたのは、横山やすしだったと思う。『久米宏のテレビスクランブル』(日テレ)という番組(同じく生番組)が83年から2年間続いたが、この番組でたまたま特別ゲストに登場した横山やすしが決定的だった。とにかくすでにこの当時から横山やすしはハチャメチャで、「まだ横山やすしさんはスタジオに来ていません」なんていうのは当たり前。登場しても完全に酔っぱらっていた。それが話題になり、横山やすしは「特別ゲスト」ではなく、いつのまにかレギュラーになっていた(いつくるかわからない「レギュラー」というのもおかしなものだが)。生放送で横山やすし(それも酔っぱらった横山やすし)は何をしゃべり出すかわからない。それは黒柳徹子を相手にするよりははるかに自らのトークに芸や技を要求されることだった。それを乗り切ったすえの『ニュースステーション』だったのである。久米宏は生放送の久米宏だった。横山やすしなしには、『ニュースステーション』は存在し得なかったのである。
こういった変化というのは、みのもんた(http://www.sponichi.co.jp/entertainment/meikan/ma/minomonta.htm)も同じである。彼に影響を与えたのは、佐々木信也(http://www.ask.ne.jp/~raffina/)だ。佐々木信也が『プロ野球ニュース』(http://www.fujitv.co.jp/jp/cs/program/7393_005.html)で切り開いたトークは絶品だった。軽い笑みを浮かべながらのソフトな野球解説(ソフトでありながらも元プロ野球選手としての実績に基づいた専門的な解説)でもって、野球解説を完全なエンターテイメントに変化させた。今の野球解説のスタイル(=パラダイム)は、すべて佐々木信也に負っている。
この後任の司会者になったのが、みのもんた。ラジオでしか記憶のなかったみのもんただったが、彼が『プロ野球ニュース』の佐々木信也の後任でテレビマイクの前に立ったとき、軽い笑みのソフトな語りをべたべたに真似たトークでそれを引き継いでしまった。私は、そのとき、アナウンサー(司会)として素人の佐々木信也をなぜ長年プロでやってきたみのもんた(「セイヤング」でDJとしてのしゃべりを確立していた彼)が猿真似のように真似なきゃいけないんだ、とみのもんた(のアナウンサーとしての職歴)を軽蔑したことを今でもよく覚えている。最初は気持ち悪くて聞いていられなかった。その後「珍プレー・好プレー」のナレーションで、徐々にみのもんた風にトークが洗練され(それでも佐々木信也がきりひらいたトークの体裁を前提にしている)、いまのみのもんたのトークが確立する。しかしみのもんたがどんなに成長しても金持ちになって銀座を豪遊しようが、佐々木信也なしには今のみのもんたは存在していない。
私には、久米宏のような修練の仕方は好きだが(渡辺真理http://www.oto.co.jp/otowatamari.htmlを入れた時から『ニュースステーション』はすでに終わっていたが)、みのもんたの変化はやはり許せない。みのもんたの変化はトーク芸の進化とは言えないからだ。そういった自分を捨てる変化の仕方は、それ以後どんなふうに自分のトークを確立しようと信じる気になれない。その意味では人間は変化すべきではない。そういったものを「成長」を呼ぶべきではない。
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