モバイル『芦田の毎日』

mobile ver1.0

症状報告(11) ― 分別ゴミの思想と治療の言葉[家内の症状報告]
(2003-04-30 01:50:46) by 芦田 宏直


< ページ移動: 1 2 >

「分別ゴミ」という思想はいったいどこから来た思想なのだろうか。ゴミは分別できないからこそ〈ゴミ〉というのであって、分別できればもはや〈ゴミ〉ではない。それもあって、市町村(区)によっては、分別の“定義”も違うらしい。さもありなん。分別できなものを〈ゴミ〉というのだから。

ゴミを分別するなんて、犬のウンチを片づけながら散歩するのと同じくらいにばかげた行為だ(ウンチをかたづけるくらいなら犬をつれて散歩をしないほうがいい ― 犬のウンチを携帯しながら散歩をするというのは一種の近代的な病(やまい)だ。散歩はそもそも手ぶらでするものだ。荷物を持った上にそれもウンチというのは、不快きわまりない散歩であるに違いない)。あるいは、禁煙席を作るレストラン(高級レストラン)もナンセンスだ。たばこを吸ってもクリーンな空間を作るのがサービスというものだろうに、顧客側に禁煙を強いているのも奇妙な思想だ(もっとも私自身はたばこを吸わないが)。環境思想(エコロジー)とは反動的な科学主義なのだ。

だから、自炊一ヶ月の我が家では(http://www.ashida.info/jboard/read.cgi?num=135.124.4)、「分別」というものが何が何だかわからないまま捨て続けている(管理人様失礼!)。不燃、可燃というが、そもそも燃えないゴミなどというものがあるのだろうか。

それに、空き缶と牛乳のパックとペットボトルを分けるというのも腹が立つ。〈飲み物類〉とでもいう分類を作ってくれないと、袋ばかりが散乱して、足の踏み場もないキッチンになってしまう。大邸宅(少なくとも8畳以上はあるキッチンが必要)にでも住んでいない限り、こんな分別はむしろゴミ袋の山になってしまう。

もし分別を認めるとすれば、〈機能・目的〉や〈大きさ〉や〈ゴミが出る時間サイクル〉によって分けるべきであって、〈素材〉で分けることには何の意味もない。家庭の台所ゴミという〈消費〉の極限の地点に、素材という〈生産〉の極点が入り込んでいるために、〈分別ゴミ〉という概念は、精神分裂症的な心理を強いる。まるでゴミの社会主義のようなものだ。家庭ゴミにおける〈リサイクル〉なんて、どこまで経済的なのか、何も科学的に検証されてはいない。あやしい思想だ。

「分類は悪」だというのは、野口悠紀雄の『「超」整理法』(http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3aefc10412c880103cc4?aid=&bibid=02005719&volno=0000)の基本思想だった。

これは彼の“全”著作の中で唯一優れた思想だった。パソコンの中でも、フォルダ(=分類)を作りすぎると何をどこに入れたのかわからなくなる。それにWindowsOSの「検索」は未だに全く役に立たないいい加減なものだから、ファイル管理は自衛するしかない。私は、最近はデスクトップの中に「ファイル」というフォルダを作って、半年に一度くらいで古くなった(半年前よりさらに古い)ファイルだけ、「マイドキュメント」の中の10項目くらいに分類されたフォルダにしまい込むよう(「移動」するよう)にしている。

よく「情報整理術」と称して、「捨てる技術」(http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3aefc10412c880103cc4?aid=&bibid=00014820&volno=0000)を説く論者がいるが、バカなことを説くものだ。捨てる、捨てないの“分類”を、捨てる〈現在〉から判断することなど誰にもできない。人が捨てきれないのは、将来にわたって、それが不要かどうかを判断できないでいるからだ。それはもっともなことだ。引っ越しの荷物や物を整理する場合には、「捨てる技術」は必要だが、〈情報〉は物のようにかさばりはしない。

こんな奴、二度と会わないだろう、と思って捨てた名刺を一度ならず、二度三度と捜した経験は誰にでもあるだろう。情報整理の根幹の思想は、〈入力〉では差別しないということだ。どんなに頻度(や関心)の薄い相手の名刺でももらったら必ず(受け取った日時と共に)入力しておく。差別は〈出力〉側で行えばいい。出力側の差別を〈検索〉というのである。

〈現在〉の意味を決めるのは、〈未来〉なのであって、過去(からの累積)なのではない。捨てる、という思想は、〈過去〉の自分を捨てているように見えて、その逆、自分の〈未来〉を捨てているのである。

< ページ移動: 1 2 >


コメント投稿
次の記事へ >
< 前の記事へ
TOPへ戻る