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4月7日(月)に東京工科専門学校グループ(東京工科専門学校、東京工科専門学校世田谷校、東京工科専門学校品川校、東京テクニカルカレッジ)合同の入学式が中野サンプラザ・大ホールで挙行されました。今年の入学生数は昨年の約20%アップ。わが学園の教育改革(http://www.tera-house.ac.jp/profile/ashida01.htm)が認められつつあるようです。
入学式式辞を4校を代表して話しましたが、式辞ばかりは、なんどやっても思い通りには話せません。3月の卒業式式辞に続いて、やはり話したいことの7割も話せませんでした。原稿を用意してそれを読めばもう少し様になるでしょうが、それは性に合わない。今回も原稿なしでしゃべり続けましたが、やはりうまくいかない。パワーポイントあたりを使って式辞を行うのも一つの手かもしれません。毎年、式辞の集中する3月4月は(めでたいことながらも)憂鬱なときです。今年は、昨年の式辞(http://www.ashida.info/trees/trees.cgi?log=&v=612&e=msg&lp=612&st=)が「長すぎた」という不評を買っていましたので、意識して半分くらいに短くしました。以下は、補正を施した式辞の再録です。
●2003年度 東京工科専門学校グループ入学式式辞(於:中野サンプラザ・大ホール)
入学おめでとうございます。
校長がみなさんの前で話すとしたら、入学式と卒業式の時ぐらいですから、今日はみんさんに対する、わが学園の最初の授業だと思って、すこし私のお話を聞いてください。
実際ここ数年、私が講義をすることなどほとんどないのですが、最近、建築系の授業に飛び込み参加して、1時間授業を行いました。
私は、東京へ出てきてから4回マンションを引っ越ししていますから、ちょっとした、マンション「ユーザー」です。その立場から話をしてほしいと科長に頼まれまして、1時間授業を行いました。
そこでショックだったことがあります。私が、どんな間取りが生活しやすいのか、という話をしているときは、みんな学生たちは、関心をもって聞いていたのですが、どんなマンションが将来値上がりをするのか(最近は値上がりするマンションなどありませんが)、どんなマンションが値下がりが激しいのか、つまり資産価値があるのはどんなマンションなのか、という話をしているときは関心が薄そうに見えました。あとで科長に聞いてみたら、まだ自分でマンションを買うには年齢が若すぎて、実感がわかないというのです。何千万もするマンションの売り買いには二十歳にもならない若い皆さんには実感がないというのです。
もう一つの経験で、今度はエンジンメンテナンス科の学生の前で30分くらい話す機会があって、せっかくエンジンメンテの学生で、エンジンに関心のある学生なのでしょうから、BMWのチューニングメーカーで有名なアルピナのエンジンの話をしてみました。ところが、この話に誰も乗ってこない。後で、学生に聞いたら、「俺たちは外車は嫌いだ」と言う。「だって高くて買えないもん」とのこと。「BMWさえ買えないのに、アルピナの話なんかしやがって」。それでもう誰も私の話を聞いてくれない。
二つの話の共通点は自分の買えないものには関心を持たないということです。若い学生らしい素直な話です。高校生までは、そういった生活感の共同体のようなものが確かにありました。自分の家が金持ちの生徒は、携帯電話が出るたびに買い換えたり、モバイルパソコンを見せびらかしたりと、大概そういう「奴」は嫌われ者でした。その意味で、ある種の共同性の(違和感のある「奴」を追い出す)連帯があったわけです。それが学校の“共同性”というものでした。先生たちも、大学を出てすぐの新米の時から、「先生」なんて言われて、この人たちも、いわば学生の延長のような社会人として、そういった学生的・生徒的な“共同体”に馴染んでいる人たちでした。
しかし、大学や専門学校というところは、出口は(ふたたび)〈学校〉ではなく、〈社会〉です。〈社会〉だということは、子供から老人まで100年間の年齢の幅のある人たち、思想も、生き様も、性差も、経験も、生まれも、学歴も、職種も違う人たちを一気に相手にしなければならないということです。
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