記念すべき、症状報告(100)回目の記事となりました。現代のMS/NMO治療のかなり先端の部分を通覧できる貴重な報告となりました。継続的に、毎日のように書いてくださっている「ぱぱ」さん(=ミクシィ(MIXI)ネーム)に、患者、および患者家族を代表して謝意を捧げたいと思います。昨日の私のドタバタNHKニュース出演を見て頂きながらも、こんなまじめなレポートを書いて頂きました。
●2008年02月19日 20:13
久々にまともな時間の書き込みです(苦笑)。
芦田さんの(2)の御質問 ― 液性免疫と細胞性免疫との関係、およびそれに基づく治療法如何?― への回答です。
MSの病理分類の変遷は紆余曲折の歴史がありますが、芦田さんの「CMS/OSMS=細胞性免疫=ベータフェロン有効、NMO=液性免疫=免疫抑制剤=血液浄化法有効という対照関係」という観点の背景には以下の流れがあると思います。
確実な証明があるわけではないものの、一般論としてMSの病因病態は、何らかの感染等により炎症が励起されやすい状態が生じた際に、本来ならば中枢神経系に入れないリンパ球が脳血管関門を通過して脳内に入り、髄鞘を攻撃し脱髄を来たす、そしてその中心的な役割を担うのはリンパ球のうち、CD4陽性 T細胞を中心とした細胞性免疫、と考えられていました。
ベタフェロンはそのT細胞に対して何らかの修飾をする「免疫修飾能」があると推察されており(後だしジャンケンのように、当初からこの期待があったような説明が付け加えられていますが、前述のように、きっかけは1981年のScience誌にあるように「抗ウイルス効果」を期待したものでした)、FDAに認可されたNatalizumabはこういったリンパ球が脳血管関門を越えられないようにする目的で、脳血管関門を通過するために必要なアルファ4インテグリンを阻害する抗体医薬として登場しました。
MSは、(T細胞性の)自己免疫疾患である、という「仮説」は証明されたかのような勢いを持って広がっていました。つまり、T細胞性リンパ球が「加害者」であり、脳内の髄鞘形成細胞(オリゴデンドロサイト、以下オリゴ)はその「被害者」、と考えられていました。
この流れに対し、1996年7月にMayoの医師らが、Brain Pathology誌にMS病巣におけるオリゴの生き死にパターンにはバラエティがあることを指摘。その後2000年6月のAnnals of Neurology誌に同じMayoの医師らが、MSにおいて脱髄進行中の病巣を多数解析し、その分類を下記のように示しました。
Type1=T細胞とマクロファージのみからなる炎症(=細胞性免疫)
Type2=免疫グロブリンと補体からなる炎症(=液性免疫)
Type3=オリゴの自発的死(アポトーシス)による脱髄が主体で免疫グロブリン・補体・髄鞘再生を認めないもの