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家内の症状報告(85) ― 多発性硬化症(MS)と視神経脊髄型MSと再発性視神経脊髄炎 ― NMO抗体検査を受けましょう[家内の症状報告]
(2007-02-19 21:33:36) by 芦田 宏直


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前回の私の記事(http://www.ashida.info/blog/2007/02/post_188.html#more)にはたくさんの反応がありました。ことがらの性格上、メール反応が多かったのですが、もっと詳しく聞きたい、というものがほとんどでした。そこで、私なりに前回の記事の不正確なところを含めて、再度まとめておきます。少し細かくなりますが、我慢してください(担当の先生とのやりとりも間接的に参照していますが、再度、不正確なところがあったり、間違いがあるとしたら、すべて私の責任です。あしからず)。

1)「再発性視神経・脊髄炎」には、ウイルス性やアレルギー性、膠原病に伴うものなど多くのものがあり、原因が明確でないものを「特発性(突発性再発性脊髄炎)」と言う。

2)「再発性視神経・脊髄炎」のうち、自己免疫的メカニズムによって起こると考えられるものは、日本では「MS(多発性硬化症)」に分類されている。

3)「再発性視神経脊髄炎」は、脳にはほとんど病巣がないため、厳密な意味での「MS」の診断基準は満たしていない。「再発性視神経・脊髄炎」は、典型的な(古典型)MSからはほど遠いものであって、視神経脊髄型MSの「亜型」といった位置づけと言える。

4)「視神経脊髄型MS」は古典型MSとはメカニズムが異なる可能性があることは以前から推察されていた。

5)2000年にベータフェロンが日本に導入された際には、そのこともあって、当然、「視神経脊髄型MS」に対する効果が問題となったが、臨床試験の結果、ベータフェロンは「視神経脊髄型MS」にも同様に「効果あり」と判断されたため、「MS」の全ての病型に対して使用されるようになった。

6)ところがその後使用経験を重ねるうちに、「視神経脊髄型MS」の中にはベータフェロンが効果がないか、逆に悪化させると考えられる症例が少なからず存在することが明らかになってきた。

7)このような症例はステロイドパルスも効果的であり、免疫吸着などの血液浄化療法が劇的に効くこともわかってきた。古典型MSにはあまり効果のない治療法が「視神経脊髄型MS」には効果があることがわかってきた。

8)そこで、数年前から、「脊髄に長大な病変を有する劇症型のMSは他のMSと区別するべきだ」と考えられるようになった。

9)同じ頃、欧米でも劇症型のMSは病理像が異なり、血液浄化療法が著効を示すことが報告され、日本の治療法が支持される形となった。

10)欧米ではこのような病変を有する患者は「MS」とは診断されず、NMO(Neuromyelitis optica)=「視神経脊髄炎」、「Devic病」と診断されている。

11)日本を始めとしたアジア地域ではNMOは単相性のものを指し、再発性の視神経脊髄炎は「MS」に分類されていた。そこでここ数年間は「視神経型MS」と「NMO」の異同についてアジアで頻回に議論が行われている。

12)そこで2004年に発見されたのが「NMO-IgG」(NMOの抗体IgG)。「NMO-IgG」が欧米でのNMOと日本の視神経脊髄型MSの両方で「陽性」になることがわかり、この2つ病態が同じものであることがようやく確認された。

13)そして2005年にこの「NMO-IgG」が「アクアポリン4抗体」であることが確認され、ようやく日本でも測定できるようになった。

14)視神経脊髄型MSだけではなく、「特発性再発性視神経炎」や「特発性再発性脊髄炎」でも陽性になる例があり、これらはNMOの亜型であることもわかった。しかし、まだ発見されたばかりの抗体であるため、病態にどのように関与しているのか、病期によって変動するのかどうかなど、まだまだわからないことが多い。

15)ただし「抗アクアポリン4抗体」は、長大な脊髄病変や巨大な脳病変を有するなど、非典型的な視神経脊髄型MSにしか認められない。

16)脳に多数の病巣を有する典型的なMS患者では「抗アクアポリン4抗体」が「陽性」になることは、まずあり得ない。

17)そんなことから、この1、2年で、長大な病変を有する視神経脊髄型MSに対する考え方が大きく変化してきた。

18)ベータフェロンを開始したらプレドニン(ステロイド)を中止するというのが一般的なここ数年来のMS治療だったが、この「抗アクアポリン4抗体」の測定が可能になって、「陽性」のNMO患者には、ベータフェロン治療が効かないこと、むしろ病状を悪化させる場合があることが分かってきた。むしろステロイド、免疫抑制剤、血液浄化法などが予防的にも効果的なことが分かってきた。

19)それゆえ、ベータフェロンを使っていても再発が続く人、脳内炎症が見られない人、視神経か脊髄に炎症が比較的集中する人、一回の炎症の規模が大きい人などは、「再発性視神経・脊髄炎」を疑った方がいい。少なくとも「視神経脊髄型MS」と言われている人、その人の中でもベータフェロンが効かない人は、すぐにでもNMO抗体検査を行った方がいい。

20)NMO抗体検査(=「抗アクアポリン4抗体」検査)は、血液検査ですから、簡単なものです。患者の手間はかかりません。

(Version 2.0)


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