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SONYはやっぱりおかしい ― iPodはもはや音楽再生機ではない。[商品批評]
(2006-11-19 22:23:54) by 芦田 宏直


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SONYは、やっぱりおかしい。最近のウォークマンSシリーズ(SONY ウォークマン Sシリーズ FMラジオ内蔵 メモリータイプ 4GB ブラック NW-S706F BM<画像:>)の戦略には特にそう思う。

この機種は4GBのスティックタイプ。

すでに4GBのプレイヤーを主力商品として売り出すこと自体が間違い。どんな商品でもブランディングの基本は、フラッグシップ機。

iPodのフラッグシップが80GB(Apple iPod 80GB ホワイト MA448J/A<画像:>)に移行しているのに、それに対応するSONYのウォークマン「Aシリーズ」(http://www.ecat.sony.co.jp/walkman/product.cfm?PD=22622&KM=NW-A3000)は未だに20GB。そもそも「Aシリーズ」とネーミングが貧弱この上ない。

携帯プレイヤーで最大の性能ポイントはHDD(ハードディスク)の容量。また容量増大に“逆行”してどれだけ小さい、軽い、薄いプレイヤー(それでいてモニターは大きい)を作れるかにある。

HDD(ハードディスク)の容量について言えば、iPodで、音楽を聴くのはもう古いということだ。ポッドキャスト(Podcast)http://www.apple.com/jp/itunes/podcasts/ がiPod利用を加速させている。

私は前世代60GBのiPodを使っているが、ポッドキャスト(Podcast)データはもはや30GBの容量をくっている。25GBの音楽データをすでに凌駕しており、最近は音楽を聞くことはほとんどない。

ポッドキャストには映像・動画データ、既存のラジオ局の放送データ、専用の番組などが無料でほぼ無限に(かつ毎日更新されて)存在しており、一度気に入った番組をiTunesで登録しておくと自動的にiPodに更新蓄積されていく。

従来のように、音楽を買ったり、選んだり、TSUTAYAで借りてきてエンコードしなくても、iPodには“自然に”必要とするファイルが蓄積されていく。

このポッドキャストによって、iPodは、若者のミュージック愛好派を超えた利用者を獲得した。

たとえばTOEICテストのための練習機になる、ビジネス講座を受講できる、ラジオ番組で経済ニュースの解説を聞ける(もちろんテレビニュースも存在している)、その上最近は本も“聴ける”ようになってきた(=「オーディブック」)、もはやiPodは音楽プレイヤーではない。

そうなると20GBでは話にならない。これまで、こういった容量評価は、「そんなにCD持ってないから」とか「そんなにたくさんの曲、聴いたりしないから」なんて言っていたが、それはもはやiPod利用ではない。

iPod(アップル社)の最後の課題は、You Tube(http://www.youtube.com/browse?s=mp)を買収することだっただろうが、それはGOOGLEに先を越された。

しかしどちらにしても、携帯プレイヤーは、もはや「ウォークマン」、つまり携帯音楽再生機ではないのだ。

そのことに理解を示していないのが、SONY。フラッグシップ機「Aシリーズ」の最大容量が20GBでしかないことがそれを証明している。20GBと言えば、2年前のiPodと同じだ。

「Sシリーズ」を販売強化しようとしているが、それもiPod Shuffle(Apple iPod shuffle 1GB MA564J/A<画像:>)の衝撃に比べればはるかに貧弱。

そもそも立て直しをはからねばならないのは、フラッグシップモデル。100GBくらいの容量をもった(それでいてiPodよりも小さい、軽い)新世代ウォークマンを作らない限り、下位モデルの販売戦略は立たないだろう。最高位のモデルが神話性(&技術的な優位性)を持つからこそ、下位モデルが活きるのであって、その逆ではない。最後にはあんなモデルを買いたいと思わせるからこそ下位の安いものを買う気が起こるのであって、その逆ではない。

30年前「いつかはクラウン」というトヨタの名キャッチコピーがあったが、クラウンがあったからこそ、カローラやコロナが売れたのである。

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